ティーンエイジ・ファンクラブ @ 渋谷O-EAST

ティーンエイジ・ファンクラブ @ 渋谷O-EAST
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ティーンエイジ・ファンクラブ @ 渋谷O-EAST
ティーンエイジ・ファンクラブ @ 渋谷O-EAST - pics by Izumi Kumazawapics by Izumi Kumazawa
「懐メロ」と「エバーグリーン」の差について考えさせられる、そんなライブだった。つまりはいつもどおりの、「エバーグリーン」の最たる例としてのティーンネイジ・ファンクラブのライブだった。

新作『シャドウズ』からの新曲が新たに追加された以外は、特に変わったパフォーマンスもなければ奇をてらった楽器も登場しなければ、意外な選曲もない(あ、“The Cabbage”をやってくれた! これはサプライズだった!)。昨年のサマーソニック以来1年ぶり、単独公演となると実に7年ぶりとなるTFCのステージは、1年前とも7年前とも変わらずそこに現前するものであって、ぶり返す過去を愛でる類の「懐メロ」ショウとはかなり意味合いが違う。それこそ5年ぶりの新作『シャドウズ』の楽曲が既にクラシックの風合いを感じさせているように、逆に『バンドワゴネスク』の楽曲が未だにノイズ・ギター・ポップの風合いを瑞々しく保っているように、TFCの音楽は常に時間を軸とする計算式からかけ離れた場所で鳴っている。

O-EASTでの2日間公演の初日にあたるこの日、会場は隅までみっちり埋まっていて改めて彼らの日本での根強い人気を実感せずにはいられない。如何にもアノラックを原体験しました風の30代後半から、伝説のギター・ポップ・マイスターを目撃すべくはせ参じた20代前半まで、チェックやボーダーの着用率がいやに高いあたりにさりげなく共通項を見出しつつも、いたってヘルシーな客層だ。会場内をうろうろしている最中には、JAPAN誌に登場するようなミュージシャンにもちらほら出会った。

この日のショウは文字通り“Start Again”でスタートした。常ににこにこの笑顔でMCも担当するメンバーいちフレンドリーなノーマン(学生に人気がある大学助教授みたいな風体に拍車がかかっている)がセミアコやアコギを担当し、その向かって左隣りではレイモンド(遠目に見るとますますピーター・バラカン氏に似てきた)が寡黙にプレイをし、そして右隣り、少し、いや、かなり離れた場所でぽつんとジェラード(終始うつむきがちで表情が読み取りづらい)がベースを弾くという、フロント3人の佇まいもこれまた不変だ。バンドはキーボード・プレイヤーを含む5人編成で、曲によってはノーマンがキーボードの前に座ったり、特に古いナンバーになるとギターが3人体制になったりする。

新曲“Sometimes I Don’t Need To Believe In Anything”ではステージ上の5人全員でマイクに向かうコーラスが大迫力。続く“The Past”もぎゃんぎゃんしたギターのヘヴィなアレンジがめちゃくちゃ格好いい。そんな新曲の例をあげるまでも無く、TFCの魅力のひとつには「音がラウド」だっていう、いたってシンプルな理由がある。ギタポのクラフトマンシップに則った精緻な音づくりと思い切りがよくアンセミックなプレイ・スタイルのギャップ、美しいメロディに混じるノイズ、ギタポの内向きなスモールサークルノリをあっさり越えて溢れだすエネルギー、それらがTFCのエバーグリーンの根幹を成すケミストリーだと思う。

これまた新曲の“Baby Lee”しかり、そして鉄板の“Star Sign”しかり、レイモンドの超ロック然としたエレクトリック・ギターの響きが彼らの音楽を前へ前へと疾走させる。特にギターが3人になった際のド迫力は、グランジ黎明期にグラスゴーで共振したTFCのバックボーンを強く印象付けるものだったと思う。TFCの「変わらなさ」の凄さは、歳を重ね、技術を磨き、経験値を上げてなお、原点の青臭いスピリットだったりノイズだったりどこかダルいノリだったりという、不完全な揺らぎみたいなものを今なお内包していることなんじゃないだろうか。職人気質とアマチュアイズムのアンバランスをここまで両立させたインディーズ・ベテランも滅多にいないだろう。

「ここでライブをやるのは7年ぶりなんだけど、7年前にも来てくれた子の顔がここからちらほら見えるよ」とノーマン。そして“The Cabbage”へ。これは往年のファンへのプレゼントみたいなものだろう。“Ain’t That Enogh”以降の後半戦はさらに骨太な展開、特に“Sparky’s Dreams”~“The Concept”ではオーディエンスの合唱(合いの手?)も重なっての完璧なフィナーレだ。アンコール・ラストは“Everythings Flow”。万物は流転する。しかし、いつでもそこに変わらずあるTFCの音楽は、私たちファンひとりひとりの中にあるぶっとい軸、幹みたいなものなんじゃないかと思えた90分だった。(粉川しの)
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