そして――東京:オーチャードホール4日間/名古屋/大阪の計6公演にわたって行われる、イエスの2年ぶりとなるジャパン・ツアーの柱は、「『危機』の直後=1973年に発表された『海洋地形学の物語』から“神の啓示”、“儀式”の完全再現」と「同じく1973年リリースのライブ盤『イエスソングス』からのベスト・セレクション」、そして「1980年のジェフ・ダウンズ在籍時の作品『ドラマ』からの楽曲も披露」という3点。
1曲18分という大曲“危機(Close To The Edge)”の絶賛を受けてその翌年に制作された、「LP2枚組に約20分の楽曲を4曲収録、トータル80分」の超大作『海洋地形学の物語』。発売当時ですら賛否両論を生んだというあまりの曲の長さから、なかなかライブで再現されることの少なかった同作の楽曲を軸に据えたツアーということで、これまでの来日公演とはまったく異なる佇まいのライブになるだろうとは思っていたが、そんなこちらの期待感を爽快に上回る名演を観せてくれた。
開演前、ステージには見覚えのあるリッケンバッカーの白いベースが用意され、惜しくも昨年亡くなったベーシスト=クリス・スクワイアの写真がヴィジョンに映し出される。各パートともメンバーの出入りが激しかった音楽至上主義集団=イエスにあって、たったひとり「イエスを脱退したことのないメンバー」だったクリスの死を悼むオーディエンスの想いが、オーチャードホールの客席に静かに満ちていく。
中盤に20分間の休憩を挟んだ後、ライブはいよいよ『海洋地形学~』の世界へと突入。“危機”、“錯乱の扉”、“悟りの境地”といった、ドラマチックな展開やクラシカルな構築美で聴かせる大曲とは異なり、20分の尺の中で悠久の時間を描き出していくようなファンタジック&サイケデリックな楽曲“神の啓示”――これまで音源しか聴いたことのなかったあの幽玄なサウンドスケープが、「今」のイエスの肉体性によってくっきりとした色彩感をもって立ち昇ってくる。『海洋地形学~』は「ビル・ブラッフォードに代わってアラン・ホワイトがイエスに加入した直後の作品」でもあったため、アラン・ホワイト不在で“神の啓示”の演奏がスタートした瞬間には若干の寂しさと不安を覚えたのだが、そんなこちらの思惑をあっさりリセットするだけの驚きと感激を与えてくれる音楽空間が、そこには確かにあった。
アンコールではそのままアランがドラムを担当、満場のクラップとともに響いた“Roundabout”に続けて、“Starship Trooper”で圧巻の多幸感とスケール感を描き出して――終了。途中20分の休憩を挟んでいたとはいえ、2部構成でアンコールまで含めてトータル12曲・2時間40分というタイム感と、その隅々にまで張り巡らされた緻密で伸びやかな構築性は、まさにイエスのライブならではのものだ。ジャパン・ツアーはこの後、同じくオーチャードホールでの公演(11/22)、大阪:オリックス劇場(11/24)、名古屋:Zepp Nagoya(11/25)を経て、再びオーチャードホール2公演(11/28・11/29)へと続いていく。まだ残席もあるようなので、詳細はUDO公式サイトをご参照のほど。(高橋智樹)
〈SETLIST〉
第1部
01. Machine Messiah / マシーン・メシア
02. White Car / 白い車
03. Tempus Fugit / 光陰矢の如し
04. I've Seen All Good People / アイヴ・シーン・オール・グッド・ピープル
05. Perpetual Change / パペチュアル・チェンジ
06. And You And I / 同志
07. Heart Of The Sunrise / 燃える朝焼け
第2部
08. The Revealing Science Of God / 神の啓示
09. Leaves Of Green / リーヴス・オブ・グリーン
10. Ritual / 儀式
En1. Roundabout / ラウンドアバウト
En2. Starship Trooper / スターシップ・トゥルーパー