でんぱ組.inc@国立代々木競技場・第一体育館

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着実に知名度と人気を上昇させているでんぱ組.inc。「でんぱーりーナイトdeパーリー」=国立代々木競技場・第一体育館でのワンマンライヴには、メンバーのコスプレをした女の子から仕事帰りの男性、さらには親子連れまで、様々な世代・性別の人々が集まった。以下では、2デイズ公演の初日:2月10日の模様をレポート。会場内ではディアガール(註:彼女たちのホームグラウンド「秋葉原ディアステージ」で働く女の子の呼び名)がサイリウムの売り子をしていて、開演前にもかかわらず既にアットホームな雰囲気。“でんぱーりーナイト”のMVから飛び出してきたようなステージセットに胸が高鳴る。注意事項のアナウンスのあと、スクリーンの中の時計がカチカチと進み始め、暗転。メンバーが宇宙を駆け巡るようなアニメーションののちに古川未鈴/相沢梨紗/夢眠ねむ/成瀬瑛美/最上もが/藤咲彩音が登場。歓声が溢れるなか、6人は静かに立ち位置についた。

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「でんぱーりーナイトへようこそ!」――1曲目は“Dear☆Stageへようこそ♡”にこの日ならではの歌詞アレンジを加えた“でんぱーりーナイトへようこそ”だ。ふわふわとワンピースの裾を揺らしながら、会場の奥の方までしっかりと視線を向ける6人。ライヴ中の観客に語りかけるような歌詞も相まって、この大きな会場を満たす観客一人ひとりの手を取ってまるごと桃源郷へ誘っていくかのよう。会場のキャパシティが大きくなっても決して変わらない彼女たちのマインドが映し出されたかのようなオープニングだった。“なんてったってシャングリラ”のあとの最初のMCでは各々自己紹介。ふと「パーティーってどうやって始まるの?」と夢眠が首を傾げると、スクリーンにRPGゲーム画面。「PUSH START BUTTON」という指示に従って古川がボタンを押し、“でんぱーりーナイト”がスタート――と思いきや、突然の雷鳴とともに演奏が中断されてしまう。どうやら影の道化師に色を司る妖精たちがさらわれてしまい、でんぱワールドから色がなくなってしまったようだ……ということで6人は妖精救出のため冒険に出る。カラフルなワンピースからグレーのセーラー服にチェンジしたメンバーがステージ上で“ブランニューワールド”“W.W.D Ⅱ”と披露している間、スクリーン上ではドット絵で描かれた6人が次々と敵キャラを倒していく。無事ラスボスに勝ち、妖精が閉じ込められている時計のゲートも解錠。青・紫・黄・緑・白・赤それぞれの色の妖精にメンバーたちが呼びかけるなか、オーディエンスもサイリウムの光で応援すると、「Check a でんぱ!」という呪文とともに色彩が徐々に戻ってくる。カラフルなセーラー服に着替えた6人がオンステージすると、テープキャノン発射と同時にスタートした2度目の“でんぱーりーナイト”では、メンバーがトロッコに乗ってセンターステージへと移動。妖精たちも登場して冒険劇のラストを華やかに飾ったのだった。

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センターステージから360度全方向のオーディエンスに向けて唄い踊る6人。「すごく高まってきたのでみんな踊りたくないですか!? ダンスしたいのは誰ですかー!?」(古川)と突入した“強い気持ち・強い愛”~“でんでんぱっしょん”という流れにはオーディエンスのテンションも熱量も凄まじいのだが、その熱にメンバーが押されるのではなく、むしろ引っ張っているぐらいの頼もしさを感じる。「一緒にダンスしよう! 分からないかな? じゃあ教えてあげる!」と藤咲が紹介した“ダンス ダンス ダンス”は2月18日にリリースのアルバム『WWDD』からの新曲。サビでクルクルと腕を回すシンプルな振り付けを早速真似るオーディエンスの姿も多く見受けられた。メインステージに戻ったあとは奇天烈な展開がクセになる“NEO JAPONISM”(こちらも『WWDD』より)などを披露。“キラキラチューン”では、板垣祐介(G)/山田裕之(B)/松原“マツキチ”寛(Dr)/野間康介(Key)/若森さちこ(Per)による「でんでんバンド」も登場だ。しかしダンスを放棄して全力でマラカスを振る成瀬に怒り、演奏を止めてしまう古川。ケンカが始まるものの「それぞれの楽しみ方でいいんじゃないかな」と相沢が仲裁に入って仲直り、でんでんバンドの面々に6人が謝る……という流れを経て、ドラムソロがスタート。そこへバンドメンバーが徐々に音を重ねていく、というセッションパートには客席から拍手喝采が起きた。アッパーチューンでもう一段階熱量を押し上げる本編終盤。情報量の多くハイスピードな曲たちを難なく演奏してみせるでんでんバンドの腕もさることながら(特に重低音のズッシリ効いた“Sabotage”は凄まじかった!)、それを乗りこなし、絶え間なくフォーメーションを変化させながら唄い踊る6人の瞬発力と集中力の高さには何度見てもやはり感心してしまう。「すごく幸せな気持ちだから終わるのが嫌だ……」(最上)、「帰りたくないなぁ」(藤咲)と名残惜しそうな他メンバーに対して「明日もあるし、もう終電なんで」と帰ろうとする夢眠、というキャラクターのコントラストもコミカルに見せつつ、「最後、みんなで大暴れしていくぞー!」(古川)と“サクラあっぱれーしょん”へ。無数のサイリウムが放つピンク色の光を反射させながら、ひらひらと舞い落ちる紙吹雪がフィナーレを彩った。

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アンコールではレギュラー番組「でんぱジャック - World Wide Akihabara -」のキャスター役・レックスによる曲紹介のあとに“バリ3共和国”を披露。そしてセンターステージに姿を見せたレックスからの「ちょっと早めのバレンタインプレゼント」ということで番組内の人気コーナー「妄想バーチャルデート キメ顔 6連発」の映像がスクリーンに映されると、メンバーからは「ギャー!」という悲痛な(?)叫び、客席からは「フゥ~!」という歓喜の声が上がったのだった。“檸檬色”のあと、「一人ひとりじゃ大したことないけど、メンバーやバンド、それからみんなと一緒に素晴らしいパーティーを開くことができました」と感謝を言葉にした相沢に続いて、一人ひとり想いの丈を口にしていく。「苦しいことも大変なこともあったけどみんなの応援のおかげで頑張れました。この気持ちを返していきたいです。みんなが幸せになりますように。ばびゅっ!」(成瀬)。「規模が大きくなったとしても笑ったり泣いたり怒ったり……ずっと変わらないのでずっと支えていてください」(最上)。「でんぱ組に入ってから初めて知ったこと、感じたことがたくさんあって、このグループに入って人間に少し近づいたと思います(笑)。みんなとの思い出は最高の宝物です」(藤咲)。「バックボーンに頼らなくても楽しんでもらえるようなステージにしたいなと思っていて、伝わってるのかな?と思いながら唄ってました。どうですか? 最後の最後まで目一杯楽しみましょう!」(古川)。「思い出を更新するぞって言ったからには、今日のでんぱ組.incをみんなが観てきたなかで一番のでんぱ組.incにしなきゃいけなくて。その一心でやっていたら私にとっても最高の1日になりました。またライヴで会いましょう!」(夢眠)。そして「感謝の意を込めて」と“ORANGE RIUM”へ――オレンジ色の光が客席を満たすなか、その景色を見るメンバーの姿がスクリーンに大映しになる。それらはどれもとても優しい表情をしていた。
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ダブルアンコールにて、スクリーンに映されたのは武道館公演の翌日、メンバーが各々の反省点を語る姿。武道館が「ファンに自分たちの夢を叶えてもらったライヴ」だったならば、この代々木2デイズは「ファンに夢を与えるライヴ」にしよう、という決意。そして最後に映った「今日の代々木ワンマンライヴ、でんぱ組.incの未来を感じてもらえましたか?」という言葉へ拍手と歓声が贈られたあと、火炎放射の演出もあった“ちゅるりちゅるりら”でライヴは終了した。

6人の物語とライヴそのものが重なってドキュメンタリー的な感動を生み出した武道館公演に対して、「来てくれたみんなを楽しませる」ことに徹し、クオリティの高いパフォーマンスを目指していった今回のライヴ。様々な挑戦をしていただけに発展途上な面もあったものの、振り切った表現ですべてをエンターテインメントとして昇華していく姿には大きな変化の兆しを感じた。なお、でんぱ組.incは、2月27日から全25公演(16公演+女性限定4公演+追加5公演)のツアーを開催。既にソールドアウトの公演も多いが、ぜひこの機会に新章を目撃してみてほしい。(蜂須賀ちなみ)

■セットリスト

01.でんぱーりーナイトへようこそ(Dear☆Stageへようこそ♡)
02.なんてったってシャングリラ
03.でんぱーりーナイト
04.ブランニューワールド
05.W.W.D Ⅱ
06.でんぱーりーナイト
07.強い気持ち・強い愛
08.でんでんぱっしょん
09.ダンス ダンス ダンス
10.Future Diver
11.NEO JAPONISM
12.キラキラチューン
13.Sabotage
14.でんぱれーどJAPAN
15.くちづけキボンヌ
16.サクラあっぱれーしょん

(encore)
17.バリ3共和国
18.檸檬色
19.ORANGE RIUM

(encore 2)
20.ちゅるりちゅるりら
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