君は僕の「仲間」であり「ヒーロー」──そんな幸福な空気に満ちたネクライトーキーとの一夜。「おいしくるメロンパン 2man tour 2025 ▶PAN or RICE...?」全公演レポートPart 3 〜名古屋DIAMOND HALL編〜

君は僕の「仲間」であり「ヒーロー」──そんな幸福な空気に満ちたネクライトーキーとの一夜。「おいしくるメロンパン 2man tour 2025 ▶PAN or RICE...?」全公演レポートPart 3 〜名古屋DIAMOND HALL編〜 - All photo by タカギユウスケAll photo by タカギユウスケ

現在「rockinon.com」では、おいしくるメロンパンが主催する2マンツアー「おいしくるメロンパン 2man tour 2025 ▶PAN or RICE...?」全公演のレポートを展開中だ。ここまで公開してきたのは、Chevonを迎えた初日・東京公演と、ポルカドットスティングレイを迎えた2日目・福岡公演。共に最高のムードの中で行われたこの2日間に続き、3日目の舞台となったのは、名古屋DIAMOND HALL。対バン相手として迎えられたのは、前回のポルカドットスティングレイと同様、おいしくるメロンパンとは同世代、旧知の間柄のネクライトーキーである。ナカシマ(Vo・G/おいしくるメロンパン)曰く「マブダチ」な2組の共演。その模様を記録すべく、ここにレポートをお送りする。おいしくるメロンパンのセットリストなど詳細なネタバレは次回の最終公演まで控えるが、この日、この空間に流れた清々しく幸福な空気が伝われば幸いだ。

君は僕の「仲間」であり「ヒーロー」──そんな幸福な空気に満ちたネクライトーキーとの一夜。「おいしくるメロンパン 2man tour 2025 ▶PAN or RICE...?」全公演レポートPart 3 〜名古屋DIAMOND HALL編〜

3月8日、名古屋DIAMOND HALLに最初に響き渡ったのは、猛々しくも繊細なバンドの音。トップバッターを飾ったネクライトーキーが1曲目に演奏したのは、“大事なことを大事にできたら”。5人が向き合って音を奏で始めた、そのじんわりとした幕開けに、心地の良い緊張感と静かな興奮が観客たちの間にも伝播する。「バンド」というコミュニティの奏でる音が、世界に触れて、空気を震わせる。その瞬間の喜びと切なさが染み入るように伝わる、ライブのはじまり。対バンライブだからと言って「わかりやすく盛り上げよう」なんてことじゃない。大事なものを大事に着地させる。そんな幕開けに、ネクライトーキーとおいしくるメロンパン、2組の信頼関係を感じさせた。もちろんバンドはシリアスさに終始するわけもなく、続く“ゆるふわ樹海ガール”からは一気にテンションを上げて、その持ち前のポップネスで会場を熱狂的に盛り上げていく。

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MCでは、もっさ(Vo・G)が彼女らしい自然体な語り口で、この2マンをいかに楽しみにしていたかを語る。朝日(G・Cho)もまた、昨年のおいしくるメロンパンのTOKYO DOME CITY HALL公演のライブを観た時の感動を伝えながら、「メロンパン熱が上がってる」と、感化し合うお互いの関係性を伝えた。演奏はさらにダイナミックに加速して行き、“許せ!服部”のストレンジなパーティー感で会場を巻き込むと、“紫”では透明なエモーショナルを迸らせながら疾走する。出自においても手法においても、この国のバンドミュージックの固定観念をぶっ壊しながら、その実、「人が集まって音を奏でる」ことの原始的な高揚に誰よりも実直に向き合ってきた、そんな部分がこの2組の何よりの共通点なのだと、その熱情あふれる演奏が伝える。さらにMCで、もっさは「私はネクライトーキーとおいしくるメロンパンを同世代くらいに思っていて。3人だけで鳴らす音があんなにカッコいいなんて。同世代だと、一緒に頑張れるから。3人のカッコいい姿を見つつ、横で一緒に走れたらなと思います」と告げた。その言葉の後に演奏された“北上のススメ”のパワフルなボーカルは、もっさの「走る」覚悟を伝えているようだった。ラストの“ティーンエイジ・ネクラポップ”に至るまで、観る者に、そしておいしくるメロンパンに、大事なものをたくさん届けて、託していく。そんなパフォーマンスだった。

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そして、続いてステージに上がった、おいしくるメロンパン。この日の彼らの演奏についてまず真っ先に書きたいのは、ナカシマのボーカルの凄まじさだ。元々、ソングライターやリリシストとしてだけでなく、ボーカリストとしても特別な才能を見せてきた人ではあるが、この日の彼の歌の激しさ、柔軟さ、言葉にならない部分でも人に何かを伝え得る情感の豊かさには筆舌に尽くしがたい凄みがあった。彼の声が元来抱いているフラジャイルな質感は残しながらも、裏返ることも、揺らぐことも恐れずに発されているような、屈強な歌声。生々しい状態で世界と対峙する今の彼らの大胆不敵な強さは、その歌声にもひしひしと感じられる。本当に今のおいしくるメロンパンは、バンドとしての肉体が、個々のミュージシャンとしての肉体が、とんでもない成熟を見せている。

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そして、そんなナカシマはMCでネクライトーキーの存在について「マブダチ」と形容しながら、同時に「バンド結成以前から、朝日さんの曲を聴かせていただいていました。いい意味で、僕の人生をめちゃくちゃにしたミュージシャンのひとりだと思っているし、凄く尊敬しているので。こうして同じステージに立ってライブができるのは本当に嬉しいです」と、この2マンの夜を迎えたことへの感慨を語った。お互いがお互いを同世代の「仲間」だと思いながら、同時に「ヒーロー」だとも感じているような、そんな関係性が尊い。この2マンツアーでは毎回、おいしくるメロンパンは対バン相手の楽曲を1コーラスほどカバーしているが、この日は“ゆるふわ樹海ガール”を披露。夏の日差しが照らす「痛み」を描く曲の世界観と同調するような、ソリッドに突き刺すようなカバーだった。

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シャープかつ華やかに狂い咲いた“色水”、しなやかなファンクサウンドが躍動する“黄昏のレシピ”、深い没入感を持ちながらも、翼を広げてどこまでも羽ばたいていくようなスケールの大きさも感じさせる“garuda”──ネクライトーキーのもっさもMCで触れていた、ナカシマ、峯岸翔雪(B)、原駿太郎(Dr)から成る3ピースの凄みは、この日ももちろん爆発している。緊密なミニマリズムと、想像が膨れ上がっていく物語性が同時に押し寄せてくるこの感動はやはり唯一無二。そして、その最新系と言える新曲“千年鳥”も、既にライブの場でアンセムとして響き渡っている。永遠なき世界で、それでも永遠を生きる覚悟を歌うこの力強い曲の歌詞には過去の楽曲を想起させるフレーズもたくさん出てくるが、自らが積み上げてきた過去を背負い、未来への意志へと変換するポジティビティがやはり素晴らしい。この“千年鳥”の導入部分で、ナカシマにスポットライトが当たり、彼がギターを奏でながら歌い始める瞬間には強い覚悟を感じるものだが、思えば、おいしくるメロンパンにはナカシマのボーカルでいきなり始まる曲がいくつもある。これは凄いことだ。彼にはずっと、自らの声で世界に真っ向から飛び込んでいく覚悟があるのだ。

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敬愛も友愛も混ざり合う、清々しい空気に満ちた対バンだったツアー3日目。次は遂にツアーファイナル、大阪・大阪BIGCAT公演。対バン対手はシンガーズハイである。この旅路の終着点、心してレポートするので楽しみにしていてほしい。(天野史彬)

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