KEYTALK@新代田FEVER

KEYTALK@新代田FEVER
東京・新代田のライブハウスFEVERのオープン5周年を記念して企画され、4月18日より東北4ヶ所をまわる「FEVER TOUR 2014(東北編)」に参加するKEYTALKが、17日の出発前日にFEVERで行なった「前夜祭ワンマン」ライブ。「5周年を期に、東京と地方のライブハウスを、ゴリ押しといわれても盛り上げたい」というFEVER代表・西村等氏の思いが、全国をまわる「FEVER TOUR 2014」に結実。ライブ中に、寺中友将(vo,g)が「今日、みんなが“夏”を作ってくれた。この“夏”を明日、東北に持っていきたいと思います」と、熱っぽく語っていたように、この日のライブは、どこよりも早い“夏”の熱気と流れる汗、たぎる興奮と躍動感に沸きかえっていた。「何か新しいことが始まりそうな“出発前夜”」――思えばこんな雰囲気は、KEYTALKの音楽そのものを表すような言葉ではないか!

チケットは早々にソールドアウトとなり、会場は期待感でパンパンに膨らんでいる。照明が暗転し、そんな観客に挑みかかるような格好で走り出てきたKETTALKの4人。1曲目にキラーチューン“太陽系リフレイン”を持ってくるセットリストでスタートした。ライブ後半のラストスパートで演奏されることも多い定番曲。高速4つ打ちビートにキャッチーな歌メロ、切ない味わいのダブルボーカルの切り替えと、ドラム~ベース~ギターへ短いソロを交換していくスリリングな演奏など、KEYTALKの魅力が詰まった1曲である。最初からこの曲を演奏されると、バンドの自己紹介とも、「今日の俺たちについてこられるか?」というメッセージとも受け取れる。実際これに続いて、間髪いれずに演奏された“スポットライト”“sympathy”の高速系楽曲3連打によって、フロアはジャンプと歓声、掛け声のるつぼと化し、早くもモッシュ寸前の状態に。ハイテンションのまま、ギアをガンガン上げて疾走していく4人の姿に雄々しさすら感じる、爽快で圧巻のオープニングだ。

KEYTALK@新代田FEVER
最初のMCに立った小野武正(g)が「うわぁー、ステージの上、すでにめちゃくちゃ暑いんですけど~」とこぼしながら「最後まで、みんな、かかって来いよ!」と叫んで、雰囲気を一気に和ませたあと、始まったのは“コースター”“a picture book”“fiction escape”の3曲。KEYTALKの多彩なメロディワークとコーラス、バラエティ豊かな曲調が際立った曲たちだ。90年代風J-POPのメロディといまのクラブテイストのダンサブルなリズムを合わせた「コースター」や、哀愁漂う首藤義勝(vo,b)のボーカルとポストパンク的でハードボイルドなベースがクールな“a picture book”、そして、わずか3分間という時間のなかで、ボサノバ~エモコアを駆け巡ったあと和テイストの超ポップな大合唱へ導かれる“fiction escape”の高揚感。この見事なハイブリッドな感覚は、ここ何10年間のJ-POPやJ-ROCKをいったん丸ごと括って、編み直してみせたかのような、新しいメンタリティと新鮮な批評性に満ちて、聴こえてもくるのだ。


次にMCを担当した首藤が「5月に新しいアルバムをリリースします。もう買ってくれた人、いる?(笑)欲しがりのみんなには新曲、持ってきました」と紹介したのが“MURASAKI”。ムード歌謡的なボーカルが転調を繰り返すなか、ギターが別のメロディを弾きながら伴奏していく展開で、これまた、さまざまな音楽的景色が織り込まれている。この日のライブ中間部は、KEYTALKの新旧の楽曲を散りばめ、ワンマンでもあまり演奏されていない珍しい曲もプレイされたりして、その意味でも、彼らの多面的な魅力を改めて味わうことができた。最新シングルに収録の“サイクル”は、ラテンリズムとお囃子&わらべうたが入り混じる軽快さで、フロアもダンスと手拍子で童心に返って、明るい笑顔があふれる。“フォーマルハウト”では、ツインボーカルの透明感あるコーラスと、ツインギターのスピーディな掛け合いがカラフルだ。“僕のなか”と“Sunday Morning”は、ライブでもあまり聴いたことのない演奏で、寺中のボーカルが、青春時代のちょっと停滞した気だるさ(“Sunday Morning”)と、それでも何かに向かって走り出したい衝動(“僕のなか”)をうまく表現していた。MCで寺中は「いやあ、久々で緊張しました~。久々すぎて、スタジオでCDを聴きながら、曲のギターコードを拾うところから始まってね」と小野と話しながら、笑いを誘っていた。
KEYTALK@新代田FEVER

そしてメンバーもフロアも、火の玉と化した終盤戦に突入である。始まりの号砲は、八木優樹(dr,cho)の爆音ドラムソロと、「かかって来いやー!」の雄叫びから。本日最速BPM記録更新の“UNITY”のギター・フレーズが始まると、フロアは「待ってました」とばかりに、「ウオッ、ウォッ」という掛け声とジャンプ、ハンドクラップの嵐となる。それにしても、この曲の八木のドラミングは強烈の一言。スラッシュメタルか!?と思わせる超絶バスドラ連打を叩き込んだあと、キレッキレのスカビートでフロア中を宙に浮かせて、気が付けば、全員が飛び跳ねながらダンスに波に飲まれていく。あとはラストまで、ただただ疾走あるのみ。すっかりキラーチューンとなった“パラレル”“S.H.S.S.”の硬質ハードロック・サウンドとダブルボーカルのパワフルな歌いまわし、客席全体をシンガロングに巻き込んでいくサビのキャッチーなメロディの快感には、誰も抗うことはできない。異なる2つの曲を強引に結びつけたような複雑な展開の“MABOROSHI SUMMER”でも、「幻、幻~」というサビ部分では、PVにもあった盆踊り風の振り付けで会場が踊りだし、轟音ロックのなかにも和やかな祝祭空間が現出していた。最後は“見上げた空に”で本編終了。首藤の繊細で伸びやかなボーカルと穏やかな曲調は、トップギアで空中に舞い上がったファンの熱い情熱のたぎりを、鮮烈なカタルシスとともに見事に着地させてくれた。
KEYTALK@新代田FEVER

この日、メンバーのMCは比較的少なかったかもしれない。最初から最後まで「熱い演奏でぶっ飛んでやる、この勢いで東北行くぜ!」といった4人の心意気が、会場全体にあふれている印象だった。だがそんななか、アンコールに再登場した八木は「ぼくが立っているということは、みなさんおわかりですか」といいながら、「3・2・1(八木)、アス!(全員)、からの~(八木)、アスッ!(全員)」という複雑なコール&レスポンスを笑顔で完成させ、キュートな和みキャラを振りまいた。そのままアンコールの“アワーワールド”“夕映えの街、今”の2曲に突入。高速メタルドラミングとスカビートがフロア全体を明るい高揚感と「ララララ~、ワッショイ!」という大合唱へ誘っていく。透明で清涼感あるメロディやボーカル&コーラスに、エクストリームなほどの轟音ロックサウンド、ダンサブルな高速ビートの快感性と文学性の高い歌詞など、KEYTALKの音楽には、さまざまに異なる、色とりどりの鮮やかなラインが、幾重にも重ねられている。「終わりなき、旅の途中で 歌いだせ 名も無き詩を」(“夕映えの街、今”より)。新しい音楽へと向かう、彼らの旅の「出発前夜」。われわれはこの夜、確かにそれを目撃した。(岸田智)

セットリスト
M1 太陽系リフレイン
M2 スポットライト
M3 Sympathy
M4 コースター
M5 a picture book
M6 fiction escape
M7 MURASAKI
M8 サイクル
M9 OSAKA SUNTAN
M10 僕のなか
M11 フォーマルハウト
M12 Sunday Morning
M13 UNITY
M14 パラレル
M15 トラベリング
M16 S.H.S.S.
M17 MABOROSHI SUMMER
M18 見上げた空に

En1 アワーワールド
En2 夕映えの街、今
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