その中でもひときわ輝きを放っているのが、映画『死ねばいいのに』の主題歌として書き下ろされた“アイリス”である。「死とは何か」「生きるとは何か」「幸せとは何か」。そんな深くて大きなテーマにじっくりと向き合って書かれた菊池陽報(Vo・G)の歌詞と美しいメロディは、映画に込められたメッセージを増幅させるとともに、彼という人間の内側も強く浮かび上がらせる。映画のどこにシンクロし、“アイリス”を作り上げた先に何を見つけたのか、菊池はとても丁寧に語ってくれた。
インタビュー=小川智宏 撮影=YUKI KAWASHIMA
──2025年はいろいろ手探りの中で試行錯誤しながらやっていたようにも思うんだけど、今年に入ってからはどんなモードですか?2025年は自分の世界との戦いだった。でも今は、これだって見つけたものをもう一度結集して、次の段階に行けるようにやっていこうって
正月にゆっくり振り返ってみたんですけど、2025年は自分の世界との戦いだったなと思うんです。たとえばてる(鹿又輝直/Dr)だったら、ひとりのドラマーとしてどうあるべきか、This is LASTのドラマーとしてどうあるべきか、俺の歌に対してどうあるべきか、といういろんな観点から、自分のドラムと向き合っていたし、俺も曲を書くうえで自分の強みがどこにあるのか、それを生かすための曲ってなんなのかを考えていたし。
でも今はその1年間で自分たちの中にできたものや、これだって見つけたものをもう一度結集して、次の段階に行けるようにやっていこうと思って今のツアーもやれていますね。
──バンドとしてのコンディションやバランスが今すごくいいんだろうなというのは、3月25日リリースの“向日葵”以降、今年出てきた曲たちを聴いている中ですごく感じる。
あんまり自覚はないんですよね。無我夢中で作っている曲もあるので。でも、アレンジャーさんとかエンジニアさんからは、“アイリス”(6月24日リリース)くらいから「結構変わったよね」って言われるんです。「あき(菊池)の中でいろいろ思う部分や、経験しているものがまた一段階変わってきてるんだと思うよ」って。そう言われた時に、なんか変わったんだなってちょっと思うぐらいで、自分的にはやってることはあんまり変わんないです。
──そう言われて、確かになって思うところもある?
いや、研究した結果でしかないなって思いますね。“アイリス”は自分の研究した結果が、うまくいった例ではあるのかもなって。
──「うまくいった」というのは?
自分の中でこういうもののほうが売れる傾向にあるなという曲をある程度並べて、それを結集させたみたいな曲を作るとしたらどうしようかなって考えながら、パソコンでパズルを組み立てていくじゃないですか。そうするとやっぱり、自分のエゴが出てくるんです。自分のやりたいこと、自分が好きな音楽、聴いてきた、影響を受けたものが出てきてしまう。
今までは毎回その中でせめぎ合いながら、なんとかバランスを取ってゴールしてきたんですけど、“アイリス”に関しては、自分のやりたいことと研究してきたことの結果が、ある程度うまく結びついた状態で、結構スムーズにゴールできた感じではありました。
──今回、その“アイリス”に前後して、6月19日に“DressCode”、そして7月10日には“Paradox”が、立て続けにリリースされるわけだけど──。LASTってあんまりテクニカルなことをしないので、“DressCode”はテクニカルなことをしてもいいかなって。だから、逆にサビはちゃんと聴かせる方向にいった
やばいっすよね(笑)。“アイリス”は1年前に作ったんですけど、“Paradox”は、できてまだ1週間くらいしか経ってないですね(※取材は6月上旬に実施)。デモがなんとか上がって、そこから爆速でアレンジして、アレンジが終わったら次の日にはレコーディングみたいな状況だったので。タイアップの関係でギリギリで書き直しになって、「どうしよう」みたいな。一瞬諦めかけたんですけど、死に物狂いで取ってきていただいてるタイアップなので、これは死に物狂いでやらないとって。
──“Paradox”はまだラフミックスしか聴いていないんですけど、そういうスケジュール感でやってるだけあって、いちばん雑念がないというか、いちばんLASTっぽい曲になった感じがする。
そうですね、ストレートです。
──“DressCode”もベースとギターがキレキレでめちゃくちゃかっこいいし。
“DressCode”は確か“アイリス”と同じかちょっと前くらいにできたんですけど──俺、休みの日に、適当にギターを弾いて、適当にビートをつけて、自分が街中を歩いたりする時のBGMを作ったりしてるんです(笑)。それは歌を乗せたりするものじゃなくて、「こういうビートの曲を聴きたい」とか、「LASTっぽくない曲を作ってみたい」と思って作るんですけど。で、“DressCode”を作る時に何も浮かばなくて、そういう曲を聴いてたんです。あと、バンド用に作ったけど、ボツになっていた曲とか──そういう曲をとにかく再生しまくってたら、これがあって。
──これというのは、どのくらいのレベルの「これ」だったの?
ほぼこの形ですね。Bメロくらいまではできてたんですけど、サビはなくて。最初にこの曲を作っていた当時は、サビの概念に縛られない、テクニカルな曲をBGMとして流しておきたかっただけで。で、“DressCode”を作るにあたって、アレンジャーさんとサビをどうしようかって相談する中で、「この感じでやり切ってしまうと、きっと聴きづらいよ」って話になって。
「リスナーに再生されることを願うのであれば、古来よりあるABサビというセオリーを守るべきだよね」って言われたんですけど、俺の中ではこのまま普通にサビをやるのは嫌だったので悩ませてもらって。で、いろいろ試した結果、この転調に行き着きました。
──確かに、Bメロまでの雰囲気からすると、サビは距離があるよね。
そう。元々俺がやりたかったこととしては、LASTってあんまりテクニカルなことをしないのもあったので、もうちょっとテクニカルなことをしてもいいかなと思って、ベースをバキバキにしたり、一人ひとりテクニカルなことをしてる。だから、逆にサビはちゃんと聴かせる方向にいったほうがいいなと思ったんですよね。そうやってあとから足されたから、Bメロまでとサビ以降で違うんだと思う。
──そういう意味ではとても挑戦的な曲だし、“アイリス”のようなバラードと、セットみたいなタイミングで出せるっていうのはすごくいいよね。
“DressCode”はバンドが大変で、“アイリス”は歌が大変っていう(笑)。本当にやばいっすね。