そして緞帳が上がった3曲目からは、舞台も演出映像も衣裳も最新アルバム『Wormhole / Yumi AraI』のテーマに則って緻密に作り上げられ、高速スピードで展開していく。
最新アルバムは、AIを使用してユーミンの膨大な過去のボーカルトラックをラーニングさせ、それを再構築した上でフィジカルのユーミンと共生させていく、という革新的な作品だ。そうした音楽面でのトライに物語性を持たせる上で設定されたテーマが「ワームホール」。つまり「時空のトンネル」を通す事によってリアルのユーミンと別次元に居るユーミンを邂逅させる、というストーリーである。今回のツアーはこの物語部分にフォーカスし、宇宙や時空を想起させる場面転換を繰り返しながら進行していく。
あらためて思うのは、「時」をテーマにしたユーミンの楽曲の奥深さだ。記憶の経過によって自然と変質していく本来の時間軸、それが豊かな感受性によって生じる現象であるならば、この次元に存在するユーミンにおいてもワームホールは実在しているのだと思う。だからユーミンの楽曲からは「懐かしさ」と「永遠」を同時に感じる事が多い。あっという間に過ぎる2時間のライブは、そんな「時」の概念を再認識させられる濃密な時間だった。(海津亮)