インタビュー=小池宏和 撮影=是永日和
──実に9年ぶりのフルアルバムということで、寺澤さんもフルは作ってないもんね?俺たちはこれからもまだ楽しませられるよという、プレゼントのようなアルバムになったかなって感じますね(富山)
寺澤俊哉(B) 作ってなかったです。2018年に加入したので、8年でやっと。びっくり(笑)
菅原 すいません、といったところですかねえ。僕の個人的な意思として、次はフルアルバムを出したいと思ってたんです。弾数(曲のストック)もあったので、弾を磨きながら、光るものがあるなって思ってたんですけど。
──菅原さんのサンクラ(SoundCloud)に、2曲かな、あるよね。
菅原 よくご存じで。“銀行強盗の唄”と“なるべく”はそんなふうに前のめりに公開していたというのもありつつ、ちゃんと纏めて出したいなという気持ちがありました。
──うん。先に僕からアルバムの感想を言わせてもらうと、今回は奇を衒った新機軸よりも、10年かけて培ってきため組らしさとちゃんと向き合ったんじゃないかなと思って。それが今後10年に向けての大きなマニフェストになったアルバムなんじゃないかな、と思います。じゃあ折角の機会なんで、ひとりずつ手応えを訊いていこうかな。
菅原 はい。さっきはかっこつけて、光るものがあるだろうって言ったんですけど、本当に最初の段階では、溜めていた曲たちだったので、一度は世に出るもんじゃないと判断した曲も含まれていて、半信半疑な気持ちも正直あったんです。いざ、め組で料理してみるかって、サポートドラマーの茄子川にも手伝ってもらってアレンジしたんですけど、いつの間にか半信半疑な気持ちはどこかに置いてきて、マスタリングを終えたときに、自分が想像していたよりも遥か上の上の完成度で。そういう意味では自信に繋がりましたね。
──なるほど。富山さんはどう?
富山京樹(G) 久しぶりに12曲というボリュームと向き合って、“バンド・デシネm9(^Д^)”みたいに今までのめ組の系譜から発展させた曲もあれば、“もったいない夜”や“銀行強盗の唄”みたいに、今までにない、まだこんなの出てくるんだ?という曲もあって。俺たちはこれからもまだ楽しませられるよ、みたいな、そういうプレゼントのように示せるアルバムになったかなって感じますね。“ピー”とかはストレートな部分とちょっと凝った部分が両方あって弾いてて楽しかったですし、“あたし猫。”のサビで猫の鳴き声みたいにワウワウ鳴らしてるのも狙い通りで、やった!って感じですね。
──うんうん。ギターのバリエーションが本当に豊富で、“もったいない夜”なんて派手なことはしてないんだけど、いぶし銀で滅茶苦茶いいんだよ。
菅原 できちゃうんですよねえ。嫌味みたいに聞こえるかもしれないけど、そういうことじゃなくて、できるからこそどこまで出していいのかという匙加減が本当に難しい。さよ今とかは、こんなの絶対できないですもん。
め組をちゃんと味わってもらおうと思ったら、フルアルバムを作るのが一番いいんじゃないかな(寺澤)
──本当にそうだよ。“銀行強盗の唄”なんて、キューバ音楽じゃん。仮に曲ができたとしても、なぜそれをパッと演奏できるんだって思うよね。じゃあ、麗さんはどうですか、手応え。
久佐賀麗(Key) まず、フルアルバムを出せる!ということが人生で初めての経験で。その響きだけで最初からテンションが上がってたというのもあるんですけど(笑)。菅原さんが言っていたように前々からストックされていた曲もあって、これを仕舞っておくのは勿体ないよな、とか、私これやりたい!というデモがあったので、それを今回詰め込めたというのが嬉しいです。“銀行強盗の唄”とかは、このタイトルで、でも聴いたらこのテンション感なんだ?というところが面白かったり、あとは自分で歌わせてもらった曲なんですけど、“あたし猫。”は2年ぐらい前かな、「麗、仮歌入れてよ」って言われて録ってたんです。でもその後は誰もそのことに触れないから、没になったのかなって思ってて。ようやくこの12曲が作れて嬉しいですね。先にライブでやっていた“奈良より断然☆台北”もアレンジがガラッと変わったところがあって、案を出し合いながらみんなで乗り越えてこの1曲を作り上げたよねという気持ちが強いです。
──紆余曲折あったけど、それも含めて楽しめたってことかな。じゃあ寺澤さん、どうですか?
寺澤 はい。め組の曲って本当にバラエティ性豊かなんですけど、フルアルバムだからこそ入れられる曲もあるなって思って。5曲入りだったらたぶん入らないだろうなという曲も、フルなら入れようっていうバランスがあって。でも、め組はそういう曲がすごくいいバンドだったりするんですよ。め組をちゃんと味わってもらおうと思ったら、フルアルバムを作るのがいちばんいいんじゃないかなって、できあがったものを聴いて思いましたね。曲調はバラバラなようでも聴いてみると一貫性があるし、それは自分たちの強みだなって。コース料理としてできあがっている感じは、ありますよね。
──そうそう。僕が今回の『SNaCk』で好きな“もったいない夜”とか“銀行強盗の唄”とかも、シングルカットするよりはアルバムの中で聴きたい曲だと思うんだよ。アルバムの中でいい時間を過ごさせてくれる曲というか。
菅原 うーん、なるほど。5曲入りミニアルバムには入らない。
寺澤 うん、だけどフルアルバムには必要だよね、こういう曲。
菅原 ずっとこう肩肘張って、リード曲、リード曲みたいな具合で、ミニアルバムとかも作ってきたんで、そうすると違う贅沢が欲しくなるんですよ。本当はこういう遊びも好きなので、本能的に欲求したというか。11年目の形としては、出るべくして出たタイミングなのかな、って思いますけど。
──そういう意味でも、ストックを出すタイミングだったんだろうね。め組らしさを打ち出しつつ、1曲目の“WE ARE WAKEARI !”がちゃんと「はじめまして」の挨拶にもなっているのがいいなあ、と思って。
菅原 はい。幕開け感と、いらっしゃいませー、という気持ちを込めてご挨拶させてもらっているんですけど、今まで聴いてくれている人に対してはいつもの挨拶のようでもあるし、はじめましての人に対しても、我々はこういう人間なんですよという説明を早く済ませておこう、みたいな。本当だったら、サブスクのことを考えて1曲目にリード曲を挿して、ってやるべきなんですけど、さっきも話したようにアルバムとしてちゃんと遊びたいので、元来のアルバムの聴き方の方程式に則って、やりました。
──リード曲は“ピー”を出すんだっけ? 大丈夫かな。オンエアされたら放送事故になりかねないもん(笑)。
寺澤 攻めてますよね(笑)。
久佐賀 黒丸が多いなあー、歌詞。
菅原 そうかあ。俺としては、リード曲になるべくしてなってるんですけどね。リード曲を“駄菓子歌詞”にしようっていう案も出ていたんですけど。
久佐賀 『SNaCk』っていうタイトルのアルバムだしね。
菅原 っていう声もあったんですけど、何度も言うように遊びたいので、そうは問屋が卸さんというところで、“ピー”になりました。