──“アイリス”は、映画『死ねばいいのに』の主題歌ですけど、監督はじめ映画サイドとはどんな話をしながら取り組んでいったんですか?最初に監督と話をさせていただいて、編集前の映像も観せていただいたんですけど、監督も熱い方で、自分の伝えたいものややりたいことを明確に持っていらっしゃったので、すごく素敵だなあと思いました。クリエイティブな脳みそに、自分とすごく一致する部分を感じたので、話していてすごく楽しかったです。──映画としては、とても重いというか、複雑なテーマを持っている作品じゃないですか。そこについてはどう考えました?内容的に難しいというか、「死」を取り扱う映画としてはすごく絶妙なラインにある物語だと思うんです。死ぬということが悲しいのはもちろんなんだけど、同時にすごくいいことのようにも見えるという。そういう部分に対して、一個一個自分の中で考えながら書いていきましたね。生と死に関してとか、自分の人生観とか、そういうものを書くのは自分にはまだ早いと思ってたんですけど、生と死っていうものに向き合うタイミングをいただけて、人生観というものを書くタイミングをいただけて、初めて挑めたのも新しかったです。──この“アイリス”は、その生と死というテーマに向き合った時に、あきくんがどこに共鳴して、どういうふうに感情移入しているのかが、すごく露わになっている曲だよね。たぶん……自分はバンドにおいて、すごく揺らぎやすいんです。音楽以外のことは何を言われてもそこまで響かないんですけど、バンドのことを言われたりすると、すごく食らう。自分の感情が、バンドに対してはすごく敏感に反応するんです。その中で、たとえば制作がうまくいかない、自分の歌がうまくいかないとなると、こんなこと言っていいかわからないですけど──本当に「死ねたほうが楽だな」と思ってるんですよ。こんなに苦しいのも、死んだらもう終わりなんだよなと思ったら、そのほうが楽だなって思う時もあるんです。でも、ツアーに行ってライブをすれば、「生きていてよかった」って思う瞬間もあるし、すごくわがままな自分がいる。そういう自分だからこそ、本当に心から「終われたほうが楽かも」って思う瞬間もあるからこそ、書けた曲なのかなとも思います。──映画のタイトルになっている「死ねばいいのに」という言葉は、物語の中でも二重、三重の意味を持つ言葉になっているわけだけど、あきくんとしてはどういうふうに受け取った?本当におっしゃった通りで、二重、三重の意味が込められていて。誰がどの立場で言うかによって、すごく意味が変わる言葉だなと思っていました。だから、曲名にも同じようにいくつも意味を持った言葉を考えたんです。で、やっぱり花の名前はキャッチーでいいなというひらめきがあって、そこから探していったら、アイリスという花にたどり着いた。アイリスの花言葉は「希望」なんですけど、監督から「最終的に行き着きたい場所は希望だ」って言われたので、それを伝えたいという意味を込めました。でも、実はアイリスは花の色によって花言葉が変わるんです。そこには「復讐」みたいな、ちょっと怖い言葉もあって。花の色の違いによって花言葉が変わるのが、誰がどの立場で言うかによって「死ねばいいのに」の意味が変わるということに重なるなと思ったんです。──最終的には、あきくんの中では『死ねばいいのに』から、どんな希望を見出したんですか?すごく難しいけど……「なくなってしまったものをあとから知ることはできない」ということを、監督はすごく言っていたんです。でも、すごく強く残せるものがあったら、それはなくなってしまったあとも残ると俺は思うんです。そこは映画の考え方とはちょっと違っているんですけど、自分の中ではそこに対して希望を持てるなと思ったんですよね。なくなってしまったらすべて終わりのようにも思えるけど、残ったものがその人を語るんだろうなって。そこに自分を照らし合わせると、自分がいなくなっても曲は残るだろうし、これからどんな音楽を残せるかが、自分の中の希望で。曲に自分がどう生きたかを投影したら、曲を作るのもより楽しくなるし、「どんな曲を作ってやろう」って気持ちにもなるし……そういう部分に希望があるなと思っていました。自分の感情が、バンドに対してはすごく敏感に反応する。「生きていてよかった」って思う瞬間も、「終われたほうが楽かも」って思う瞬間もあって
──基本的に歌詞には映画を想起させる言葉がいっぱいちりばめられているんだけど、1ヶ所、《しがみついた死に際が綺麗なの》という1行だけが違うなと思ったんだよね。ここだけ、映画からはみ出てるなって。うん。映画の中では死ぬことが幸せなことなのか、それとも不幸なことなのかが、微妙なラインのまま進んでいくんです。ある人から見れば幸せだったんだろう、でもある人から見たら不幸だったんだろう、って。そうやって話が進んで、でも結局はどうなのかわからない。その「結局わからない」がすごく大事だなって思ったんです。《しがみついた死に際が綺麗》なんて、そんなわけないんですよ。でも、俺が投影したかった死の美しさと、死を望んでいる人の美しさと、そんなことはないという普通の人の意見がぶつかっているような一文を作りたかった。だから堂々とわけわからない歌詞を書いて矛盾させたんですよね。そもそも、死にしがみつくということも、本来はないわけです。でも、そういう状況の人もいるだろうな、それって美しくないな、でも、そこが美しい人もいるんだなと思って。──で、その矛盾はあきくんの中にもあるものなんだと思うんだよね。こういうテーマって、やっぱりきれいな物語にしたくなるものだと思うし、実際LASTはそうしてきたと思うんです。今まではそうですね。でも、いわゆるJ-POP的な歌詞になっていくことは、自分の中ではあまりやりたいことではないと思っているし、自分が死に対してこうやって感じてもいたから。俺が本当にラッキーだなと思うのは、自分がこういう人間だったからこの曲が書けたし、そこにこういうお話をいただけて、監督もいちアーティストとしてちゃんと向き合って会話をしてくれて。それは縁だし、最終的にはラッキーで書けたなって思っちゃってます。──巡り合わせという意味ではラッキーだけど、でも、言わばあきくんが自分に向けて「死ねばいいのに」って言いながら音楽作っている人だからこそ書けた曲なんだろうね。本当にそうですね。結構ギリギリな中、頑張ってきたから。俺はメンタルをやられると、這い上がってくるまではもっと落ちていくしかないタイプなんです。そういうところと、“アイリス”はすごく相性がよかったとは思います。──もっと言うと、「死ねばいいのに」って思うけど、同時に希望も知っているという、矛盾を抱えた人だからだよね。そう。やっぱりライブをしてるから。基本的に自分にあんまり自信はないんですけど、ライブをしている瞬間は、自分が作った音楽で人と繋がれている感覚がすごくあるし、いろいろな人が自分たちをかっこよく見せようとしてくれたり、いい音楽をいい音で届けようとしてくれたりしているところにすごく感謝しているので。そうやって助けられるたびに、「生きててよかった」って思う瞬間があって、そういう自分だからこそ、この陰と陽のバランスがある曲が書けたのかなって。──10月開催の日本武道館単独公演の開催が近づいてきたけど、そこに向けては今どんなことを思っていますか? 前回のインタビューでは「通過点」って言ってたけど。前より実感が湧いてきて、より通過点という気持ちになってます。次のツアー(「This is LAST one man live Zepp tour 2027」)も決まってるし、その先でどうやってLASTをもっと広げていくかとか、いろんなことに対して今のうちに目を向けないとやばいぞって気持ちになってきてるので。だから、気持ちとしてはある程度重心が下がった状態で固まってはきてるかなと思います。でかいところでやってるイメージで曲を書いてるので、そこに行かないといけないなと思うし、そこでこそ自分の楽曲はさらによくなるだろうなと思います。このインタビューの完全版は、発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』8月号に掲載!《しがみついた死に際が綺麗》なんて、そんなわけないんですよ。でも、俺が投影したかった死の美しさと、死を望んでいる人の美しさと、そんなことはないという普通の意見がぶつかっているような一文を作りたかった
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ヘア&メイク=Rino Fukase
スタイリング=Miki Toyokawa