ロッキング・オンが2000年代ロックを特集するのは初めてのことではない。しかし、過去の特集と今回を比較すると、大きく変わった点がある。それは今、私たちが2000年代ロックに対して圧倒的にポジティブな視点を持ちえたことだろう。例えばレディオヘッドの『キッド A』を出発点とする場合、自ずとあの時代の混沌にフォーカスが促される。翻ってそれをザ・ストロークスの『イズ・ディス・イット』に置き換えた場合、景色は一変する。混沌から再生へ。90年代オルタナティブの消失点から、2020年代オルタナティブの原点へ。今回の特集はもちろん、『イズ・ディス・イット』型を選択している。
2000年代は、ロックがムーブメントとサブジャンルの巨大なモザイクで描かれた時代だった。ガレージロックやポストパンクのリバイバルから、ダンスロックの波、エモの隆盛、ネオサイケ、フリークフォーク他の高踏派アートロックまで、多種多様なサウンドが同時多発に鳴らされていた。現在、Y2Kやインディースリーズとして再評価が進んでいるのは、まさに何でもありだったあの時代のロックの熱気だ。ただし、2020年代の若者たちは、単にサウンドを模倣しているわけではない。2000年代がリバイバルと再定義の時代だったとすれば、2020年代はあらゆるジャンルをフラットに捉え直す、文脈の解体とコラージュの時代である。彼らにとって2000年代のロックは自由にサンプリングし、新時代のロックを象るための豊饒なアーカイブであるからだ。
2026年現在、あの時代のトップランナーたちが新作を携えて続々と前線に帰還を果たす。そしてDNAを受け継ぐ新世代バンドが、彼らを待ち構えている。そこで描き出されるのは、ロックという不滅の生態系の美しい循環なのだ。(粉川しの)
ゼロ年代ロック特集は7月7日(火)発売のロッキング・オン8月号にて掲載です。ご購入は以下のリンク先より