インタビュー=矢島由佳子
──rockinon.comでは1年ぶりの取材ですが、EPのタイトル『I’m busy』の通り、忙しい1年でした?このEPは忙しい人に聴いてほしい。忙しいのに結果がついてきてない方、一生懸命頑張っているのに「なんでなんだ」ってなっている人に(Haruhi)
Haruhi 願望でもありますね。「忙しくなりたい」みたいな。本当に忙しいやつは、ジャケットに書いてある歌詞のようなことを気にしてないよねっていう。
Dagabazi 本当に忙しかったら言わないよね。頭だけ忙しいっていう感じ。
Haruhi 今回はDagabaziが考えた歌詞と俺の歌詞、ちょうど半々なんですけど、皮肉的なところは似ているよね。普通にストレートに言わない感じ。ストレートに言っているようで皮肉的な歌詞もあるし。クラスの端っこにいる感じ。
──フィクションというよりも、普段思っていたりムカついたりしたことが歌詞に出ている?
Haruhi 意外とそうですね。歌詞を作ったあとに、溜めていたものが出たかもって気づくパターンが多いです。
Dagabazi 俺もそうかも。スキャットで出てきた単語から歌詞を膨らましていく中で、最初はフィクションのつもりだけど、完成したら「あれ、これ今の俺じゃん?」みたいな。“Day by Day”も、最初は俺の気持ちを書こうとか全然思ってなかったんです。でも肉付けしていくときに、やっぱり生身の自分から単語が出てくるから、意外と素が出ちゃう。
──“Day by Day”(作詞:Dagabazi、作曲:Haruhi、編曲:CheChe)だと、どういう素の自分が出たと思っているんですか?
Dagabazi 25歳を過ぎて、学生時代に遊んでいた友達が結婚したり、連絡を取らなくなったりして。ちょっと一呼吸置いて、自分たちの人生を俯瞰して見るタイミングがたまにあって。「今バンドをやってるけど、これ、どうなるんだろう」みたいなことを思うし⋯⋯言いたいことがまとまらないですけど。こういう、まとまらない感じを書いていますね。ちゃんと自分がある人はこんなことを言わないのかなとも思ったり。
Haruhi この曲、昔の写真を見ている感じがします。昔の写真を見て、クッてなるときもあるし、「よかったなあ」ってなるときもあるし。
Dagabazi 本当にそうかも。地元の実家の敷地内にばあちゃん家があって、東京ドームくらい──そこまではないかもだけど、大きい森もあって。でも俺が上京するタイミングで、そこを更地にしたんですよ。そこに今、マンションが建っているんです。だから夏休みとかに地元へ帰っても、今まで暮らしてきた環境に戻ると安堵するものなのに、そうはなれなくて。前はカブトムシも捕れたけど、いなくなっちゃった。今のHaruhiの言葉を聞いて、それを思った。
Haruhi わかりますねえ。おじいちゃん家の周りが森で、家とかもなくて、おじいちゃん家だけがポツンってあるようなところで。たぬきとかいて、追いかけると森の中入っちゃいそうになるくらいだったんですよ。でも20年ぶりに帰ったとき、周りが更地になっていて、家も建っていて。「え、まじで?」みたいな。なんとも言えない気持ちになった。
──ここまで話してくれたみたいに、CheCheって、サウンドはクールなものを作っているけど、実はクラスの端っこにいる人が普段言えないこと、頭の中でグルグルして吐き出せないこと、言葉がないけど人間みな感じたことのある感情、20代半ばのリアルなこととかを、人間くささ全開で歌っているのが魅力だと思うんですよね。
Haruhi 温かい感じがしますよね。1曲1曲が人間の性格みたいな感じなんですよ。冷たくクールにあしらっているけど、歌っていることには人間味が溢れている。このEPは忙しい人に聴いてほしいかも。7曲入っているんですけど1曲1曲は短いし、忙しくて「うわー!」ってなったときに聴いてほしい。忙しいのに結果がついてきてない方っているじゃないですか? 僕らみたいに(笑)。
──そういう気持ちはバンドマンだけじゃなくて、会社員でもあるあるだと思います。
Haruhi 一生懸命頑張っているのに「なんでなんだ」ってなっている人に聴いてほしいかな。たとえば“Spotlight”は、周りの友達が結婚の話をしていて俺だけついていけなかったり、周りのバンドも調子よくて比べちゃったりしたときの曲で。ライブをたくさんやっていたので、バチバチな対バン相手がいると「悔しいな」「俺らはまだまだだ」みたいな気持ちもあった気がします。
岸本 《青い芝》みたいな?
Haruhi 「おまえら、なんかいい感じだけど、ふざけんなよ」みたいな感じかもしれない。悔しいっていう気持ちと、皮肉ってやろうという気持ちかもしれないですね。
岸本 それをだいぶ上手いこと言ってるね。
──Dagabaziさんが書いた“Pie”も皮肉な感じがありますよね。Haruhiさんが書いたのかなと思うくらい通ずるものがあって、それこそがCheCheらしさになりつつあるんだなと思います。今、ギターのアプローチが固定化されてきている。誰もやってなくて、自分の中で面白いって思うアプローチをやりたい。やっぱり、ギターにロマンを感じちゃう(ヤマダ)
Haruhi 確かに。遠回しに言ってる感じというか。
Dagabazi これが初めてCheCheで歌詞を書いた曲でした。「パイを焼く」っていう日常的でかわいらしいテーマですけど、それを使って本当は「誘惑」「支配」とか、そういうことを書きたかった曲ですね。後半で言っているように、結局、欲望や誘惑に支配されていて、逃げられないよねっていう。曲もマイナー調だし、暗いし、問題提議する曲にしてみようかなと思ったときに、世界のお金の流れとかをいろいろ調べていたのもあって、「支配」とか「パイを焼いてあげたんだから文句言うなよ」みたいなテーマがぽっと出てきて、そこから一気に進んで完成しました。
──そういうテーマをメンバーに共有したうえで、それを表現できる音を作っていくのか、それとも──。
ヤマダ 基本的に歌詞の意味はあとから知るんですよ。だからアレンジは歌詞を踏襲することはなくて、どちらかというとサウンドで決めています。でも“Pie”は、なんか悲しいような曲なんだろうなとは思って、レコーディングのときも冷たい音で録りたいなと思っていました。あとから歌詞を見たときに「ハマってるかも」と思って嬉しかったですね。個人的には──今、ギターのアプローチというものが固定化されてきているような印象があって、そこに抗ってチャレンジしているシーンもあると思うんですけど、自分もどちらかというと後者に行きたくて。抗っているシーンの中でも誰もやってなくて、自分の中で面白いって思うアプローチをやりたい。それがこの曲でいちばんやれたかなって思います。
──他のギタリストや、最近の曲にないギターアプローチをやってやろうと。
ヤマダ 基本的にそういう姿勢でずっと挑んでいるんですけど、“Pie”は特にうまくできたかなって思います。ギターって、どうしてもボーカルとかフレットレスの楽器みたいに音階が無限にあるわけではなくて、一回音を鳴らしたら大きくはならず、どんどん小さくなっていくという減衰楽器だったりするけど、その逆を行きたいなと思っていろんなエフェクターとかを使ったりしていますね。“Pie”に関しては、ギターという制限のある楽器で、グランドピアノくらいの派手さとかダイナミックレンジを出せたらなと思っていました。やっぱり、ギターにロマンを感じちゃうんですよね。たとえばシンセサイザーから似たようなサウンドが出せても、それをイメージしてギターで起こすことにロマンを感じるし、そこを諦めたくないなってずっと思っています。
──タツキさんのギターへの姿勢がわかる話をしてくれてありがとうございます。息吹さんはこのEPを作るうえで、ベーシストとしてどんな姿勢を大事にしてましたか?
岸本 “ARCH”、“Spotlight”、“Pie”、“Stupid”、“Face”の順番で録ったんですけど、今思うと、去年の夏に“Pie”を録ったくらいまでは丁寧に弾こうとしすぎていたというか。ライブでもそうなんですけど。自分にしかわからないレベルだと思うんですけど、“Stupid”、“Face”あたりから楽しく弾く方法がわかってきて。毎回レコーディングのときはアンプをレンタルしているんですけど、“Pie”で初めてビンテージのアンプをレンタルして、“Stupid”、“Face”のレコーディングでまた別の古いAmpeg Japanのアンプを使って、そのあたりで自分のサウンドやアプローチの仕方、どう弾きたいのかが固まってきた感じがありました。別に“Spotlight”、“Pie”が悪かったわけじゃないんですけど。なんなら“ARCH”とか、いちばん音が好きだし。だからこのEPは全体を通して、成長した記録が残せた感じがします。
──“Spotlight”のEPに収録されている「EP Mix」は、シングルバージョンからベースを変えました?
岸本 録り直しましたね。でも録り直したバージョンも、1日4曲くらい録った日で、超急ぎで録りました。これは載せておいてほしいんですけど、僕、全部2、3テイクで録り終えました。
ヤマダ エンジニアの人も「これがベースだよ」「同世代のやつらに見せてやりたい」って言ってました。
岸本 そんなこと言ってたの!? それ、直接言ってほしかった!