ご存知の通り、おいしくるメロンパンは綺麗に5曲ずつ楽曲を収録したミニアルバムを2016年のファーストアルバム『thirsty』からコンスタントにリリースし続けてきた。たった5曲、3ピースのロックで20分足らずで描かれる音楽の物語。しかし、そこに何かを決定的に変えてしまう無限の可能性が宿るのが、おいしくるメロンパンの音楽だ。11枚目の、そしてメジャーデビュー2作目となる最新ミニアルバム『avenue』。これは、その何かを決定的に変えてしまう力が、とんでもなく冴え渡っている傑作。4月に先行してリリースされていて、すでにライブの強力な武器となっている”ツツジの枯れる頃には”に始まって、そこからしたたかなくらい緻密に構成された3曲を経て、最後は曲を作ったナカシマも想像なかったどんでん返しの”bedroom swimmer”(大名曲)に到達する。この驚くべき5曲の旅をナカシマと辿りつつ、改めておいしくるメロンパンの音楽の神秘と画期性に迫った。
インタビュー=古河晋 撮影=岩渕一輝(TRON)
現実的なところから、少しずつファンタジー、夢の世界に歩いていくコンセプトで作った
──11枚目のミニアルバム『avenue』ができましたけど。めちゃくちゃよくできた作品。“ツツジの枯れる頃には”ではじまり、“bedroom swimmer”に到達するまでの流れで、最初に思ったのと違うところに連れてかれる。まずナカシマくん自身にとって、これはどういう作品?おいしくるメロンパンの振り幅みたいなものを、端から端まで表現しようとして作りました。実現できたかわかんないですけど。そういう実験的なことはできたかなとは思ってます。いろんな端っこの物差しがあると思うんですけど。ひとつは、等身大で現実的な曲も僕は書くし、ファンタジーな曲も好きで書くんですけど。そういう現実的なところからファンタジーなところまでっていう。この作品自体が、現実的なところから、少しずつファンタジー、夢の世界に歩いていくコンセプトで作っていったので。1曲目から5曲目にかけて、ちょっとずつファンタジーになっていくイメージです。
──できあがっての自分なりの手応えとか評価は、どう?まあ、いつも通り、いい作品ができたなとは思います。
──想像と違ったところは、そんなになかった?いや、5曲目でもっとスケールが大きいものっていうか、“ツツジの枯れる頃には”とは、まったく別の音楽性の、別のバンドが作ってるような曲を作って、こんなに振り幅があるっていうところを見せられたらって最初は思ってたんですけど。ある意味、最終的に等身大なところに帰ってきて。でも、まったく別の等身大というか、思わぬ着地をしたと思ってますね。
“bedroom swimmer”に、ずっと僕が表現したかったメッセージの核の部分があると思ってて。それは逃避と息苦しさ
──ちょっとこの作品のすごさを言語化するのは簡単ではないと思ってたので、別角度からいこうと思うんですけど。この前「リフレイン・ブルー」っていうツアーをやったじゃないですか。4〜6枚目のミニアルバム『flask』『theory』『cubism』の曲だけをやるという。あの時期に向き合ったツアーをやってどうでした?自分のようで自分じゃない作品だなあって、やりながら改めて思いました。たぶん、おいしくるメロンパンの曲が大きく変わっていった時期で。迷ってもいたし、苦悩しながら作ってた痕跡がすごいあるので。やりながらこういう時期もあったなあとか、どんなこと考えてたんだろう?みたいな。特に3枚目の『hameln』が、僕の中では衝撃的な作品で。自分の音楽人生において、一度、やりたいこと全部できちゃったぐらいの気持ちになって。そっからどこに向かっていけばいいんだろうっていうことを考えながら作っていたのが4、5、6だったんで。どこに行けばいいんだろう?っていう気持ちが結構出ている作品に、自分としては聴こえますね。
──その頃の曲の出来は今、どう感じる?出来はいいと思ってます。やっぱり悩めば悩むほど、普段の等身大の自分じゃたどり着けないところに行ける気がしてて。その頃は特に悩んでいたので、今じゃどうやって書いたらいいのかわかんない曲ばかりだと思いますね。
──偶然でもあると思うんだけど、その『flask』『theory』『cubism』という過程──ここに向かうっていう明確な目的ははっきりしていないんだけど、それでもおいしくるメロンパンのクオリティ、ナカシマくんのクオリティで物作りをきっちりやっていく中で、別の場所に行くっていう過程は、今回の『avenue』に似ている感じがしました。だから、いいタイミングであのライブをやったなって、この作品を聴いたときに思いました。そうですね。なるほど。
──悩みながら『cubism』で別の世界に行ったじゃない? 変わらないまま変わることに、あの3枚で成功した。どのアルバムが欠けても、その次の『answer』には行けなかったと思うし、今のおいしくるメロンパンになれなかったと思うんですよね。どこに行けばいいかわからなかったけど、自分の本能に従ってどこかに行こうとしていた痕跡を、あの時期の作品から感じるし。この前のライブを観ても、そういう時期だったなって感じましたね。今回の『avenue』も、明確な目的みたいなものは言語化できないんだけど、本能的にこうなりたいっていうのはあって。その答えが、5曲作って到達した“bedroom swimmer”だった気がします。確かに。なんか、この曲もずっと僕が表現したかったメッセージが核の部分にはあると思ってて。それは逃避と、それに伴う息苦しさみたいな。今までとはまったく違った形で、それを表現することができた。それが、この『avenue』で到達することができた場所なのかもしれないですね。
──結構、ナカシマくんとしては本筋に戻ったというか。そのために自分でコントロールしてやる必要があって、メンバーや周りの大人に説明するというよりも、楽曲で導いていくという。ある意味ワガママに作る必要が今回はあったのかなって。確かにそうですね。