檄音の彼方に

サーストン・ムーア『デモリッシュド・ソウツ』
2011年05月18日発売
ALBUM
サーストン・ムーア デモリッシュド・ソウツ
穏やかなアコースティック・ギターが奏でられ、耳元でつぶやくような歌声、そこに被さってくるストリングスと、知らない人が聴いたら新人シンガー・ソングライターのアルバムと思っても不思議じゃないのはソニック・ユース、サーストンの新作ソロ。ベックとタッグを組んだのがまず話題で、ベックはプロデュース&アレンジだけじゃなくギターやベースなど全面的に絡んでいる。互いの美学や背景を考えればいつ実現してもおかしくなかった本格的なコラボの実りは大きい。檄音やエモーショナルな言葉をはき出すのではなく、風のそよぎの中にどれだけの思いを込めることができるのか。そんなところに参加した全員の気持ちが集中したアルバムであり、ソニック・ユース的な世界は表面上にはない。しかし実はこうした部分もまたソニック・ユースが初期から持っていた魅力の秘密でもあるのだ。早いテンポのものになるとソニック・ユースっぽさが前面に出てくるあたりはいかにも生真面目なサーストンらしいし、対照的に彼のメロディ・メーカーとしての冴えも露わになるソフトなナンバーもいい。ソロ・ライブでの来日希望。(大鷹俊一)
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