ジャック・ジョンソンど真ん中のアルバム・タイトル。先行シングルのオープニング曲と本編ラストの曲は豊かなアレンジに彩られているが、それ以外は全体的にシンプルなサウンドで構成されていて、初期2枚の感触に近いものがある。ただし、ソング・ライティングは天井知らずに向上しているので、ビシッとツヤ立った米と最高の素材で作ったミソ汁で頂く朝ごはん、みたいな新作である。シリアスなタッチだった前作を越え、見事に極まっている。

力強いブルース・ロックや、トロピカルなパーカッションの中に作曲技術が光るナンバーもあるが、例えば彼のライブにおいて、より大きく、神秘的な求心力を発揮するのは静謐な歌の方であったりもする。短い曲ながら女性ボーカルが絡む“ホエン・アイ・ルック・アップ”の存在感や、まるで子供をあやす唱歌のようにフレーズがリフレインするナンバーなど、彼の歌はメッセージ以上に大きな「拠り所としてのポップ・ソング」と化して心のひだに触れる。これは世界の新しい唱歌だ。そして日本盤ボートラは、横浜赤レンガで歌われた感涙の“ホワット・ユー・ソート・ユー・ニード”。（小池宏和）