健やかなパワー・ポップ

フェアウェル『ラン・イット・アップ・ザ・フラッグポール』
2009年08月26日発売
ALBUM
フェアウェル ラン・イット・アップ・ザ・フラッグポール
ピコピコとポップなシンセをかき鳴らしていたバンドたちが、いつのまにか鳴りをひそめ、世の無常――それも超ハイスピードな――を思う現在。07年にエピタフからデビューしたフェアウェルも、そういったバンドの一つだったが、昨年、要のキーボーディストが脱退。次作はどうなる?となるが、届いたこの2ndアルバムは、バンドとして逞しく、タフに進化した作品となった。今作にもたっぷり鍵盤は入っているが、飛び道具的アイテムでなく控えめで音楽的。その分、パワフルなギター・サウンドを磨いてくっきりと鮮やかにし、メロディとコーラスはよりフレンドリーに耳に馴染んで、リスナーに心躍るエネルギーをくれる。疾走感や破壊力勝負の一撃の一歩先を行く、確信犯的な仕掛けを忍ばせたパワー・ポップ作に仕上げている。1stアルバムの、やんちゃで明るい曲たちの橋渡しとなる楽曲もあって、一歩ずつステップを踏んできた地続きのアルバムであることも、以前からのファンには嬉しいところだろう。やってみたいことと、できることが、イコールで結ばれるようになったのが、前作から重ねた2年の年月だったに違いない。(吉羽さおり)
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