来日公演が大好評だったテデスキ・トラックス・バンドのデレク・トラックス。スーザン・テデスキと出会う前から自身のデレク・トラックス・バンドを率いてきたが、このバンドで彼が目指していたのは、自身の表現やスタイルを広げることだ。そして、このバンドは徹底的にその目的に徹した活動をしていた。それは11歳からプロとしてギターを弾いてきた天才ギタリスト、デレクの願うところでもあったからだ。
神童からそのまま天才ギタリストへと成長したデレクは当代一の若手ブルース・ギタリストとして目されるようになり、オールマン・ブラザーズ・バンドの一員になる一方で、エリック・クラプトンのツアーにも参加するなど、早くからブルース・ギタリストとしての成功を手にしていた。しかし、夥しいほどの客演オファーをこなす一方で、ギター・ヒーローからは離れた自身の表現を探求することをデレクは求めていたのだ。
それでデレクは自身のバンドではインド音楽、ゴスペル、ジャズ、ファンク、R&Bと表現の枠を広げていったが、それがアルバム全体に行き渡る形で定着し、バンドの音楽性の統一も実感されるようになったのが、デレク・トラック・バンドとしては5枚目のアルバムとなったこの記念碑的な作品『ソングラインズ』だ。
そして、このアルバムがリリースされた年に行われたライブもまた『ソングラインズ・ライヴ!』としてリリースされたが、今回はその映像も同時収録され、この時期のデレク・トラックス・バンドを余すところなく捉えた内容となっている。その後、デレクはそのボーカルの表現力もさることながらR&Bやソウルへの造詣も深い、妻となったスーザンとそれぞれのバンドを合体させる。そうすることでさらにバンドの表現が深みと厚みを増していったことは言うまでもない。(高見展)
詳細はSony Music Entertainmentの公式サイトよりご確認ください。
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