UKマンチェスター出身のホット・ミルクの2ndアルバム『コーポレーション・ポップ』を聴き、そこに込められた感情の切迫ぶりに圧倒されてしまった。これまではエモ、パンク、オルタナ、メタル、EDMなどを飲み込んだハイエナジーかつキャッチーな曲調が印象的だったけれど、今作では世の中に物申すメッセージ性をグッと強めている。
振り返れば前作1stアルバム『ア・コール・トゥ・ザ・ヴォイド』は、ハン・ミーとジム・ショウによる男女ツインボーカルの掛け合いが大きな魅力になっていた。しかし、今作はその領域だけに止まらない。激しいスクリームが飛び交い、聴き手の胸倉を強引に掴み取るオフェンシブな手法を取っている。それこそ、ポストハードコアやメタルコアにも通じるヘヴィな表情でこちらに迫ってくるのだ。そうした変化の一つとして、前作以降のツアー経験が大きな影響を与えているようだ。
「南米や日本にも行かせてもらって、どのライブもあり得ないほど最高だったからね」(ジム)
「周りの地元の人達が体験できないような貴重な人生経験をさせてもらったから。2人ともワーキングクラスの出身で、今のような機会を与えてもらってることがどれだけ恵まれてるか自覚してるし、最高すぎる20代の人生を送らせてもらっているわ」(ハン)
バンドの視点は内側から、完全に外側へとシフト。アーティストである前に、一人の人間として、今放つべき言葉を全身全霊で訴えるようになった。従来のバラエティに富むサウンドを継承しつつ、攻撃のギアを一段も二段も上げた今作について、きっちりと二人が語ってくれた。過酷な状況下でのレコーディング、1曲1曲を有機的、かつ効果的に繋げた作品トータルのこだわりについてなど、本誌のインタビューを読んでもらえれば、今作を10倍楽しめるはずだ。ライヴ感漲るニューアルバムを引っ提げ、待望の再来日を果たす「SUMMER SONIC 2025」のパフォーマンスは必見だろう。(荒金良介)
ホット・ミルクの記事が掲載されるロッキング・オン7月号