前作はチャーリー・ドレイトンやダリル・ジョーンズといったミュージシャンをバックにしたLA録音で、そのオーガニックでダイナミックなバンドサウンドが痛快なアルバムだったが、今作はほぼ斉藤ひとりによる多重録音作品で、リンドラムやTR-808といった往年のリズムマシーンの名機、モーグなどのアナログシンセを使った手作りのサウンドが耳を惹く。生ドラムの代用としてのリズムマシーンではなく、丸みと鋭さを併せ持ったチープで温かみのある人工的な音色と荒々しいグルーヴが、これまでにない表情を斉藤の音楽世界に加える。MANNISH BOYSで中村達也という当代一のパワフルなドラマーと組んでいるのだから、こうした方向性は納得できる。さらにアナログシンセの泥臭い音色と斉藤らしいフォーキーで乾いたギターサウンドが融合した“問題ない”のような楽曲もおもしろい。ビートルズみたいな壮大なスケールの“始まりのサンセット”がベストテイクか。(小野島大)
デビュー25周年にして更に冒険・進化
斉藤和義『Toys Blood Music』
発売中
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前作はチャーリー・ドレイトンやダリル・ジョーンズといったミュージシャンをバックにしたLA録音で、そのオーガニックでダイナミックなバンドサウンドが痛快なアルバムだったが、今作はほぼ斉藤ひとりによる多重録音作品で、リンドラムやTR-808といった往年のリズムマシーンの名機、モーグなどのアナログシンセを使った手作りのサウンドが耳を惹く。生ドラムの代用としてのリズムマシーンではなく、丸みと鋭さを併せ持ったチープで温かみのある人工的な音色と荒々しいグルーヴが、これまでにない表情を斉藤の音楽世界に加える。MANNISH BOYSで中村達也という当代一のパワフルなドラマーと組んでいるのだから、こうした方向性は納得できる。さらにアナログシンセの泥臭い音色と斉藤らしいフォーキーで乾いたギターサウンドが融合した“問題ない”のような楽曲もおもしろい。ビートルズみたいな壮大なスケールの“始まりのサンセット”がベストテイクか。(小野島大)