波多野裕文のアコースティック・ギターが約7分半の楽曲の中で幾度もリフレインするメインテーマが、メランコリアの闇から徐々に光の指す場所へと移ろい、《耳に手をあてて/雨を澄ませ/静けさに満ちたこの世界で》というフレーズの果てに透徹した風景を描き出す“海はセメント”。感情と思考を研磨するようなギターリフ&決然としたビートが、ミステリアスなきらめきに満ちたメロディと乱反射する“数秒前の果実”。ピアノの晴れやかな響きとディープなベースラインが神秘的なコントラストを描く“きみは考えを変えた”……
「3ピース・バンドのアンサンブルの限界を更新する」という領域をとっくに飛び越えて、無限に広がるイマジネーションそのままに己のサウンドをアップデートした結果、その鋭利な躍動感に満ちた楽曲と音像の中に震えるほどに荘厳なヴァイブとスケール感を宿すに至ったピープルの「今」を如実に物語っている快盤。(高橋智樹)