2022年、比類なきデビューアルバム『キャロライン』で熱狂的な支持を得たロンドン出身の8人組音楽集団キャロライン。名門レーベルであるラフ・トレードのジェフ・トラヴィスが惚れこんだという話もさることながら、何よりもその音楽性が、活況が続くUKのインディシーンのなかでもきわめてユニークなものだった。フォーク、スロウコア/エモ、ポストロック……とサウンドの要素を並べてみてもキャロラインの音楽を正確に言い当てられない感覚があるが、その抽象的でミステリアスな手触りもまた魅力に拍車をかけていた。
そんな彼らが待望の新作とともに帰ってくる。タイトルはシンプルに『キャロライン 2』。果たしてアルバムはまさに前作の正当な続編であり、同時に大きな飛躍を刻んだ一枚に仕上がっている。
どこか気まぐれに聞こえるギターがリードし、ドラムがゆったりと叩くリズムや管弦楽器、さらにはノイズと重なっていくオープニングの“トータル・ユーフォリア”(“完全なる幸福感”)から、スケールアップしたキャロラインのサウンドが広がっていく。基本的には前作の音楽性を発展させ、遅いテンポでじっくりオーガニックなアンサンブルを聴かせるものになっているが、前作ほどの長尺曲はなく、一曲のなかで複雑な要素や展開をタイトに聴かせるスリリングなナンバーが並ぶ。アレックス・Gからインスパイアされたという声のエフェクトなど新たな実験も加わっているが、冗長だったり小難しかったりする印象はなく、むしろよりダイレクトにエモーションが伝わってくることに驚嘆する。意外なところではキャロライン・ポラチェックの参加曲もあり、ポップとオルタナティブを混ぜながら音楽的領域をぐっと広げた一枚であることは間違いないだろう。そして前作以上に、おそろしく陶酔的な作品でもある。
ますます唯一無二のグループとなったキャロラインだが、ロッキング・オン次号ではいかしてこの飛躍作にたどり着いたのかを解き明かすインタビューを掲載予定だ。美麗にして壮大、エモーショナルかつ力強い彼らの第2章がいま、幕を開けようとしている。(木津毅)
キャロラインの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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