ステージでフラン・ヒーリーも言っていたけれど、直近1年で今回も含めなんと3回もの来日を果たし、しかも常に熱心なファンが集い、熱く、温かく、親密なバイブに包まれた最高のひとときをもたらしてくれるのがこのトラヴィスというバンドだ。
トラヴィスのバンドの魅力、楽曲の魅力、そしてライブの魅力は「エバー・グリーン」であることだとしばしば評される。しかし、ことライブにおいてはエバー・グリーンな楽曲&演出がばんばん披露される楽しさ、その安定感の一方で、毎回の彼らのコンディションを如実に反映した不可測な瞬間も同居しているのが何よりの醍醐味だと個人的には思うのだ。
前回のフジ・ロックでのステージが、真夏の陽光眩しい午後の苗場というシチュエーション&フランの誕生日というタイミングだったこともあり、多幸感全開で思いっきり弾けたエモいパフォーメンスで完走したのに比べると、今回は少し「冬っぽい」というか、しっとり&しっぽりしたスローダウンの瞬間が随所でチルタイムを生んでいたのが印象的。もちろん最新作『エヴリシング・アット・ワンス』に漲るロック回帰のマインドを反映し、弾けるべき箇所、バーストするべき箇所はがっつりテンションをあげていくメリハリの効いた展開で、腰を落としてフランがギター・ヒーローばりに弾きまくる“Selfish Jean”や“Writing to Reach You”は、2016年以降のトラヴィスならではのものだ。その一方で、“Driftwood”や“Side”といった定番曲には2016年以前の彼ら、静謐な美を丁寧なアルチザンの手さばきで編み出していくある種の緊張感が復活していたのが面白いのだ。
つまり新旧トラヴィスの良いとこ取りのミクスチャー、というのが今回の彼らのライブの不可測部分だったと言える。それに対し、エバー・グリーンの部分は今回もまったくもって不変!“Where You Stand”でのフランの客席突入、“Magnificent Time”でのオーディエンスの一糸乱れぬダンスといったものが新・定番として定着したのが今回の来日だったと思うし、鉄板中の鉄板である旧・定番、“Flowers in the Window”のノー・マイク・アカペラや“Why Does It Always Rain on Me?”の大ホッピング大会で幕を下ろすエンディングはもちろん待ってました!のお約束だ。
そう、あなたが観たいトラヴィスと観たことのないトラヴィス、その両方が体験できるのが今回のツアーなのです。今日の東京公演は当日券も少し出るみたいなので、迷っている方はぜひ!(粉川しの)
公演の詳細は以下のサイトで御確認ください。
http://www.smash-jpn.com/live/?id=2558