6月12日の朝、起床して携帯を見ると俄かに信じがたいメールが届いていた。
「Breaking News:Brian Wilson Dies at 82」。
海外ニュースサイトのメールマガジンだった。
宙吊りにされたような心持ちで本文を読み、確かな情報であることを確認する。
いつもは何か流しながら朝の支度をし、そのままイヤホンを突っ込んで家を出るのだが、この日はずっと無音だった。何を聞いても、身体を通り抜けていってしまうような、地に足がつかない感じがした。
出勤の道すがら、ぼんやりと携帯を眺める。
ロニー・ウッド、ボブ・ディラン、クエストラヴ、ショーン・レノンetc.、錚々たる面子がSNSに追悼コメントをポストしている。ここ日本でもカルチャーメディアは勿論、新聞や通信社なども訃報を出している。混み合う地下鉄の車内で、その偉大すぎる功績と波乱の人生についてグルグルと思いが巡った。
出社後、編集部での協議の結果、表紙/巻頭特集での掲載が決定。関係各所と連絡を取りつつ、急ピッチで特集の用意を進めた。無理な相談が続出する中、ライター/デザイナー/翻訳者のどなたも快く協力をしてくださり、皆が逝去の悲しみを抱いていることを感じた。
編集作業がひと段落ついた夜に、ポール・マッカートニーの追悼コメントがアップされていた。その締めくくりは、「How we will continue without Brian Wilson, 'God Only Knows'.」だった。
周知の通り、60年代にザ・ビートルズとビーチ・ボーイズは、お互いへの深い敬意のもと鎬を削りあっていた。『サージェント・ペパーズ〜』を超えるはずだった『スマイル』は未完に終わり、その事実はブライアンの隠遁にも影を落とした。
盟友であるポールでさえ、“神のみぞ知る”と言うのだ。
どこか現実感のなかった突然の訃報が、現実感のないままに私の中に落とし込まれた。思えば、大名盤『ペット・サウンズ』も、個人的な愛聴盤『フレンズ』も、どこか非現実的な夢の世界から鳴っているようだった。これからも、ブライアン・ウィルソンの音楽は、過去/現在/未来を超えて、永遠に鳴り止まないのだと思った。
rockin'on8月号では、表紙/巻頭でブライアン・ウィルソン追悼特集をお送りします。
ブライアン・ウィルソン追悼の意と、その偉大なレガシーを分かちあうべく制作しました。
今あらためて、できあがった誌面を眺めていると、関係者全員の想いが随所に詰まっているように思います。
発売日は、7月7日(月)です。
皆様にお手にとっていただけることを願っております。
(平澤碧)
ブライアン・ウィルソン追悼特集が掲載されるロッキング・オン8月号