──私は、ニューヨークのIMAXシアターで観たのですが、IMAX上映に耐えうる音声や映像をできる限りクリアに仕上げるのは大変でしたか? それとも比較的スムーズに進んだのでしょうか。
バーナード「それは、素晴らしい質問ですね。簡単ではありませんでした。本当にとても難しい作業だったんです」
──例えば、ザ・ビートルズの作品のようにAIを使われたのでしょうか?
バーナード「いいえ、AIは一切使っていません。むしろ、私たちはAIとは正反対のやり方をしています。
映像に関して言えば、映画でご覧いただくフッテージは、オリジナルのプリントを徹底的に探し出して入手しました。オリジナルのネガを探し出し、それを見つけるまでは決して妥協しませんでした。ですから、常にコピーではなく、オリジナルから作業するようにしたんです。
音声についても同じです。バンドのスタジオ録音を耳にするとき、実際に聴いていただいているのは1969年当時のオリジナル音源なんです。実際に使っているのは当時のレコード盤です。マスターテープと盤を比較したのですが、盤には独特のエネルギーが宿っているんです。当時はテープからディスクへ落とす際に、EQ処理など膨大な作業が行われていて、最終的に人々が耳にし、熱狂したのはそのディスクでした。
私たちはその中でも最高のコピーを探し出しました。ニューヨーク盤やロンドン盤など、エンジニアによって音が異なるので、20種類、30種類と比較することもありました。その中で最も優れた盤には、本当に刺激的で圧倒的な魅力があるんです。ですから、皆さんが耳にするのは、何の加工もされていない、当時本来聴かれるべきだった純粋な音です。1969年1月、世界最高の再生環境で鳴らされる、最良のバージョンを体験していただいているわけです。つまり当時以上に良い音でありながら、同時に“当時のまま”でもあるのです。
さらに、彼らに先立つブルースシンガーやリトル・リチャードなどの音源についても同じです。1958年の音は1958年のまま、1964年の音は1964年のまま再生されます。そして1968年にツェッペリンが登場したとき、そのサウンドがそれまでの時代からどれほど異なっていたのかが、はっきりと体感できるのです。
これこそが私たちが音で試みていることの一例なんです。それはちょうど、ハワイの木から採れたパイナップルをその場で半分に切って、お皿にのせて差し出すようなものです。まさに純粋そのものなんです。この『純粋さ』を実現するのは簡単ではありません。正しい要素を集めて、それをきちんと移し替える必要があるからです。
だからこそ、これは音に対する独自のアプローチなんです。私たちが行ったのは、映画館のスピーカーシステムに合わせながらも、当時のモノラルやステレオの特徴をそのまま残すということです。音を部屋いっぱいに広げているだけで、決して加工はしていません。だから観客が体感しているのは──まさに時間旅行なんです。あの時代そのものの音の中にいるわけです。こんなふうに体験できる場所は、世界のどこにもありません」
今日から公開、レッド・ツェッペリン初の公認ドキュメンタリー映画『レッド・ツェッペリン:ビカミング』。監督に聴いた。ジミー・ペイジにテストされた話から、ジョン・ボーナムの音声発掘など。
2025.09.26 18:00