フー・ファイターズの17年ぶり単独来日まであと2週間! ワシントンD.C.で行われたキャパ700人の超貴重ライブを観た! バンドの最新章を観逃すな。

フー・ファイターズの17年ぶり単独来日まであと2週間! ワシントンD.C.で行われたキャパ700人の超貴重ライブを観た! バンドの最新章を観逃すな。 - pic by Andi K Taylor pic by Andi K Taylor

単独来日がなんと17年ぶりとなるフー・ファイターズ。10月7日から始まる日本でのアリーナツアー開始まで、いよいよ2週間切った。


チケットの詳細はこちら。
https://smash-jpn.com/foofighters2025/

今回の来日が特別な理由がいくつもある。

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ー新体制での初のアリーナツアー:
新ドラマー、イラン・ルービンを迎えて世界に先駆けて行われる。2009年からナイン・インチ・ネイルズで叩いてきた彼は、今年7月12日までは同バンドツアーに参加していた。その後、ジョシュ・フリースとの衝撃の“トレード”で入れ替わり加入。37歳とメンバーより少し若く、ロストプロフェッツやエンジェルズ・アンド・エアウェーヴスでも活躍してきた。

ーデビュー30周年:
1995年のデビュー作から30周年。25周年はパンデミックで幻となったが、今年は本格的に祝える年となった。

ー2008年以来の単独ツアー
近年はフジロック(2015、2023年)やサマソニ(2017年)といったフェスが中心だったため、日本のファンにとってはバンドの新章モードがしっかりと体感できるフルセットとなる。


そのツアーの前に、9月21日、DCのライブハウス、ブラックキャットで、ウォームアップ公演を決行した。幸運にも、このキャパ700人の会場での超濃密な2時間40分、全27曲を体験することができた。


そこで実感したのはーー
ー新しいドラマーがもたらした新たなグルーブ。
ー2023年来日時とは大きく異なる可能性を秘めたセットリスト。
ー長いキャリアを重ね、30周年で原点を振り返り、いくつもの悲しみを抱えながらもなお、新章を切り開こうとするエネルギーに溢れていること。

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バンドは、すでにいくつかのサプライズギグを行なっているが、この日がとりわけ特別だったのは、DCは、デイヴ・グロールの故郷であること。自分の原点やDCのパンクシーンに敬意を表する場面があった。ライブについては、当日の午後4時にライブが発表されたが、デイヴ曰く「告知前からファンが察して列を作っていた」という。30ドルのチケットは即完売。

午後9時20分、大歓声の中デイヴが笑顔で登場し、「随分ぎゅうぎゅうに詰めたな(笑)。今夜は長くなるから楽な体勢でいろよ!」と告げて幕を開けた。実際ライブは、深夜0時近くまで続き、濃密な時間が流れた。彼自身もDCパンクシーンのレジェンドの1人であるが、彼の原点であり、出発点である場所に帰り、デイヴさんらしく、面白おかしく思い出話を披露しつつ、しかし何より感動したのは、この日のライブが、そんなノスタルジーに浸かるようなものでもなく、バンドの新章の始まりを刻むような内容であったことだ。

デイヴは、今回のツアーが始まる前に、改めてバンドサイトに長文のエッセイを発表。バンドの結成から、「根はすでに深くて抜けないほどになり、それでも成長を続けていることを誇りに思う」と語っていた。さらに、亡くなったテイラー・ホーキンスの「美しい魂の偉大さ」や、「フー・ファイターズは、いつの日か目的地にたどり着くその時まで、奏でる一音一音の中にテイラー・ホーキンスを永遠に刻み続ける」との思いを綴っていた。そして、バンドは変わり続け、悲しい経験もあったけど、これからも、「前進し続ける」との決意で、締めくくっている。つまり、それを体現するようなライブでもあったのだ。

1曲目はまさかの“Enough Space”。今回のサプライズギグで、2017年以来初めて演奏された。しかし、この日には完璧な始まりだった。デイヴが、ScreamなどのDCのハードコアシーンで培ったハードコア/パンクルーツをオルタナロックの枠組みの中で注ぎ込んだような曲だからだ。ベースラインと激しく叩きつけるドラムが特徴でもある。小さいクラブだからすぐに分かったのは、イランのドラムが、腹にドシっと響く重厚さがありながらも、突き抜けるような鋭さも兼ね備えていること。これまでのフーファイにはなかったタイプのドラムだ。それがすでに完成しているバンドのサウンドに良い意味での揺さぶりをかけ、新たなエッジを与えていた。これまで以上にヒリヒリするような新たなグルーヴを生み出していた。

ドラムサウンドに合わせて会場はすぐに飛び跳ね、そのヘビーなサウンドを引き継いで始まる“All My Life”で、会場はデイヴと一緒にスクリーム。間奏では、ドラムの前にメンバーが集まり髪を振り乱しながら激しく演奏。この会場にふさわしいハードコアパンクバンドと化していた。熱気はすでに頂点に達していた。

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その後も、“Rope”、“Have It All”と言った超レア曲で、激しく駆け抜けるようなドラムがグルーヴを引っ張る。そこからいきなりヒット曲にしてライブの定番である“Times Like These”に続くと、聴き慣れた曲に新鮮な響きが宿っていた。また、“Wattershed”で再び速攻で、ハードコアパンク的な演奏で、突き進んでいく。

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ここでデイヴが一息付いて今回のセットリストの主旨を説明していた。「実は今回初めてブラックキャットで演奏したわけじゃないんだ。その時(1995年)観た人もいるんじゃないかな。今夜は、めちゃたくさん演奏するから、帰りは遅くなるぜ。かなり昔の曲をやったり、または最近の曲をやったり、(前に行ったり後ろに行ったりの)縦列駐車みたいになると思うよ」と。

実際そのようなセットリストだった。昔の曲や、レア曲からヒット曲へと前に行ったり後ろに行ったりを繰り返し、しかしその流れがすでに見事で、バンドのサウンドは非常にタイト。激しいジャムも多く繰り返されたし、緩急つけることで、ライブ全体が刺激的に進んでいった。もちろんこのライブはアリーナで行う前のテストだと思うので、日本でも同じようなセットリストにならない可能性もある。しかし、これぞ単独ツアーの醍醐味だと思う。

この日は、とりわけ30周年とDCという原点を意識したためか、デビュー作から一番多く6曲も演奏された。しかもここ最近はあまり演奏されてこなかった曲、“Wattershed”など。また、“Stacked Actors”に、レア曲とは言えない“This Is a Call”に、“Weenie Beenie”, “Alone + Easy Target”、そしてこの日のハイライト“Exhausted”が演奏された。さらに、セカンドアルバムからは次に多い4曲が演奏された。

“Stacked Actors”は、これまで以上にディストーションが効きまくるサウンドにより奥行きがある響きとなり。“La Dee Da”のヒリヒリする叫びから、“Under You”では曲のキャッチーで柔らかいメロディがより際立つ。

そしてデイヴが、「45歳から60歳以上の“キッズ”のために歌う」と泣きメロの“These Days”をパフォーマンス。

「いつの日か、お前の心臓は止まり、最後の鼓動を刻むだろうだけど、それでいいんだ」と歌い、観客だけが合唱する場面もあった。
デイヴは、歌い終わったら満遍の笑みで、ギターを天に掲げて弾いた。

続く“The Pretender”も観客の合唱で始まる。カート・コバーンの死がインスピレーションという曲“Walk”では声を枯らしながら、手を胸に置いて「永遠に俺は死にたくない」と叫んだ。

「今日初めてフー・ファイターズを観る人?」と聞くと、かなりたくさんの人が手が挙げたからびっくりした。しかも、20代前後の若者が多かったのだ。今日のチケットが30ドルだったことで若者が来れたのではないだろうか。

デイヴはここでバンドメンバーを紹介したのだけど、ドラムのイランを「才能があって、俺たちにすごく優しくしてくれてる」と紹介していた。

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“My Hero”では「この曲はいつもは人に捧げるんだが、今日はワシントンD.C.に捧げたいと思う。誰がなんというとこの街は最高だ。昔も、今も、これからも。だからこの街を俺の故郷って呼べて誇りに思う。文句があるやつは俺のところに来い(笑)」と。そしてサビを「DCのために歌え!」と熱い大合唱に。この盛り上がりから、イランの抜けるドラムで“Learn to Fly”へ続けて流れていくところはこの日のハイライトのひとつだった。激しい曲が続く中で、“Aurora”のギターメロディが優しく響いたのも印象的だった。

そして「これは俺たちが作ったたぶん一番おバカな曲(笑)」と紹介した“Big Me”では軽やかなメロディを奏でる。“No Son Of Mine"では再びヘビーなグルーヴの中で、デイヴがギターソロとさらにモーターヘッドの“Ace of Spades”も披露した。

“Shame Shame”では「みんなが俺たちのクールなドラマーを気に入ってくれているのを感じるぜ」と言いつつ「ワシントンD.C.で演奏できて嬉しいのは、俺をインスパイアしてくれた人達が見に来てくれててるってこと」とも語っていた。剥き出しのドラムサウンドに始まる曲。「おーおー」で観客が合唱し、デイヴとクリス・シフレットのギター共演も聴きどころとなった。

またデイヴが、“Winnebago”の前に語った。「フー・ファイターズの始まりは、俺が『自分の家のアーリントンの地下室でレコーディングすればいんだ』と気づいたことにあった。ニルヴァーナのツアーが終わって家に帰ってきてアイディアがあるとそれをスタジオでレコーディングしていたからね」と語った。「だからここからそうは離れていない場所でずっと昔にレコーディングした曲を演奏したい」と。思い切りグランジサウンドの曲。そして“Best Of You”のデイヴの叫びで本編が締めくくられた。ここでのバンドジャムも新体制の完成度の高さをすでに象徴していた。

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アンコールの“Weenie Beenie”では、このタイトルの由来が会場近くのホットドックスタンドであることを語り、再びパンク、グランジモード。それに引っ張られたか“Monkey Wrench”もよりヒリヒリしたサウンドになっていた。少しテンポも速くなったように感じる見事なドラムソロで締めくくられた。

そしてこの日のハイライトと思えた曲は「昔はこの曲をいつも最後に演奏していたんだ」という“Exhausted”。曲を演奏する前に、「古くからのファンのみんな、ありがとう。それから今日初めて観たみんなも。心配するな、毎回これと全く同じだから(笑)。それに、また来るから。実はもういつ帰ってくるのかも知っているんだ」と来年のツアーもすでに示唆してみせた。この曲は、なんと、1997年以降はほとんど演奏されてこなかった。ファズギターが特徴的な曲だが、メランコリーで、深い悲しみに飲み込まれるような壮大な曲。圧巻のパフォーマンスだった。バンドの原点と、孤独を象徴しているような曲。デイヴが今そんな心境なのかもしれない。

「今日の最後の曲はこれだ」と観客も大合唱の、“Everlong”で幕を閉じた。“Exhausted”の悲しみの余韻と混じり、この曲の感動もさらに深くなる。「美しい街よ、どうもありがとう」とピースサインを掲げ、最後全員で並び、大歓声の中で、お辞儀して終了した。たった700人の会場でスタジアムバンドを観れるなんて。みんなしばらく呆然としていた。

長年のファンも、これから初めて観るファンも、バンドは、新章の幕開けに向けてすでに体制は完璧に整っている。あとは、皆さんが自分の目でそれを確かめるだけだ。

まだ変わると思うけど、一応これがこの日のセットリスト。見たくない人は見ないように。


ちなみに、ドラムのイランは、フーファイとの初のライブ後にインスタでコメント。
「昨夜のフー・ファイターズ のライブは、最高の時間だった。ここ数か月は少し身を潜めつつ、ひたすら楽曲の習得に打ち込んできたけれど、その最初のショーは溜め込んだエネルギーを一気に解き放つような、信じられない体験だった。みんなからのポジティブな反応やサポートにも本当に驚かされていて、ただただ感謝を伝えたい。これから待ち受ける爆音と汗まみれの日々が楽しみで仕方ない」

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