10月26日にソロ・プロジェクトであるアトラス・サウンドとしてのサード・アルバム『パララックス』をリリースしたディアハンターのブラッドフォード・コックスだが、今作については「自分がこれまでで作った最も孤独なレコードだ」と語っている。
もともと70年代のイギリスのアヴァンギャルド・バンドのスウェル・マップスのようになりたくて無尽蔵に若い頃から制作してきた音源に「アトラス・サウンド」という名称を与えてきたというブラッドフォードは、アトラス・サウンドとしての作品は自分で自分を慰めようとする作品なんだろうとスピン誌に語っている。
「ディアハンターよりずっと昔からアトラス・サウンドはやってきてるんだけど、ぶっちゃけ、アトラス・サウンドと呼ばずにブラッドフォードでもいいわけだからね。自分じゃいつからかもわからないくらい、ぼくは自分の音楽を作ってきたわけで、それによってコードの組み合わせなどからセロトニンの分泌を促しそうとしてきたりしてきたわけだよ。だから、心理学的にいえば、指しゃぶりみたいなもんなんだよね。自分のなかの空っぽで満たされてない部分を埋め合わせるものなんだよ」
そうした意味で今作は「自分が作ってきたもののなかでも最も孤独なレコードだ」とブラッドフォードは語り、特に収録曲“テラ・インコグニータ”については仕上がった時にディアハンターのギターのロケット・パンドに「これまで自分で書いた最も重要な作品だ」と伝えたくらいだと明らかにしている。
ただ、自身のアトラス・サウンドの変化もディアハンター抜きには考えられないもので、アトラス・サウンドとしての前作『ロゴス』などは今となっては聴くに堪えないとブラッドフォードは語っている。過去の自分の作品で聴いていて唯一満足できるものはディアハンターとしての前作『ハルシオン・ダイジェスト』の“ディザイアー・ラインズ”のみで、この曲についてはロケットにギターの弾き方まで指示され、渋々承服してやったところ、出来は完璧なものになったとブラッドフォードは語っている。
「ディアハンターはぼくの家族であり、兄弟なんだよね。バンド内ではものすごく押引きがあって、アメリカのロック・グループに必要な要素はすべて備わってるんだよ。でも、ぼくだけなんでこんなに注目されちゃうのかよくわからないんだよね。モーゼズ(・アルチュレータ)とロケットこそがバンドのドライヴとなってるわけだからさ。ロケットとぼくは巨大の樹の周りでそれぞれに吹いている風のようなものなんだよね。樹を揺らしてるんだけどさ、樹はいつも根を張ってるっていう」