【JAPAN最新号】「究極のスピッツ」が宿る傑作アルバム『ひみつスタジオ』を全曲解説!

【JAPAN最新号】「究極のスピッツ」が宿る傑作アルバム『ひみつスタジオ』を全曲解説!
現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』6月号にスピッツ『ひみつスタジオ』全曲解説レビューを掲載!

「究極のスピッツ」が宿る傑作アルバム『ひみつスタジオ』を全曲解説!

文=杉浦美恵、小川智宏、天野史彬


01. i-O(修理のうた)

『ひみつスタジオ』はこれまでの作品の中で最もストレートに草野マサムネ(Vo・G)の感情や思考が綴られたアルバムになった。そしてその「ストレート」のベクトルが、人間というひとつの生き物が本来的に持つはずのやさしさや温かさや希望を指しているというのが実にスピッツらしいし、この時代にこのアルバムに出会えたことがとても嬉しい。まず1曲目、やさしい風を吹き込むように鳴り出すのが“i-O(修理のうた)”だ。キラキラと光が射しこむようなイントロと穏やかに耳に滑り込んでくる歌声。じんわりと心を解きほぐしてくれるような始まり、そして《今も僕は温かい》と歌う歌詞は、生きていること、まだ心を失くしていないことの確かな表明だ。今、愛しいものや風景が簡単に破壊されていく日々を生きていて、小さな声をあげても届かず、知らずに私たちの心も壊されていたのだと、この曲に気づかされ、癒される。破壊が創造を生むというテーゼは芸術や文化にも長く根付いてきたものだが、そろそろそれもひっくり返されていい。その声を上げるのにスピッツほどふさわしいバンドはいないだろう。“i-O”という記号のようなタイトルは、「アーイオー」と歌うサビから仮タイトルとしてつけられ、それがそのまま残ったものだというが、ロボットの名前のようであり、そのロボットが“修理のうた”として《愛を》と歌い再生を果たす。アルバムジャケットを眺めながら思わず涙が零れた。(杉浦美恵)(以下、本誌記事に続く)


(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年6月号より抜粋)


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