鉄風東京、取り繕うことを拒むロックバンド

鉄風東京、取り繕うことを拒むロックバンド
『ROCKIN'ON JAPAN』最新号(2022年7月号)New Comerより

嘘偽りない想いをさらけ出し、エモーショナルに疾走するサウンドでライブシーンのみならず、SNS上でも大注目を集めているのが仙台を拠点に活動する平均年齢19歳のロックバンド、鉄風東京だ。大黒崚吾(Vo・G)、シマヌキ(G)、muku(B)、ふわふわのカニ(Dr)からなる彼らは2018年11月に結成。その名を音楽シーンに轟かせたのは、2021年11月に発売されたEP『Nokosu』に収録されている“外灯とアパート”だ。

エモの系譜を感じさせるギターのアルペジオで始まり、閉塞感を抱えていた大黒自身の行き場のない感情を言葉で紡ぎ、サビでは伸びやかなボーカルが歌声を響かせる。特別なギミックもなく、派手さもない。きれいに整えることを拒み、かすれた声もそのまま。無骨でとにかく生々しく、その音世界に胸を揺さぶられる。

そんな彼らのシングル『遥か鳥は大空を征く』は大海原へ乗り出す決意を込めた3曲が収録。よりフレキシブルにバンド活動ができる今、高まる気持ちを抑えきれないのだろう。軽快なビートと共に前進する気持ちを汽笛のように鳴らし、走ること、歌うことを宣言するタイトル曲“遥か鳥は大空を征く”も当然そうだが、《やりたいようにやるんだ/なりたいようになるんだ》と衝動感そのままに連呼する“咆哮を定め”はその極み。飾り気のないロックバンドらしく感じたそのままをぶちまけ、今の心情を的確に届けてくれる。

そして、すべてはうまくいく、輝かしい未来が待っているなんて浮世離れしたことは歌わず、現実世界とリンクした赤裸々さが如実に表れているのが“Numb”。諦めにも似た悟りとそこでは終わらないんだという願望のグラデーションが沁みるミドルバラードだ。

また、ライブでは敬愛するKOTORIのTシャツに身を包んだ大黒が泣き叫ぶかのように絶叫し、曲へなだれ込むことも多い。その感情の爆発に呼応するよう、メンバーも一心不乱に音をかき鳴らす。取り繕うことが一切ない。信じるに足るバンドだという証がそこにはある。(ヤコウリュウジ)



  • 鉄風東京、取り繕うことを拒むロックバンド - 『ROCKIN'ON JAPAN』2022年7月号

    『ROCKIN'ON JAPAN』2022年7月号

  • 鉄風東京、取り繕うことを拒むロックバンド - 別冊JAPAN JAM 2022

    別冊JAPAN JAM 2022

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