渾身の力を尽くす男たちが咲かせた、その22本目の花
47都道府県を回る「日本全国縦横無尽」ツアー、2月14日東京公演レポート
文=杉浦美恵 撮影=岡田貴之
宮本浩次は2021年10月から47都道府県を巡るツアー「日本全国縦横無尽」を行っているが、先日、喉の不調を訴え長崎・佐賀公演を延期。その後、新型コロナウイルス感染症の陽性が判明したため、山口・愛媛公演の延期も発表された。この記事を書いている現時点(3月18日)では発熱などの症状もないとのことで、回復次第ツアーは再開される予定だ。本誌ではこのツアーを随時追いかけながらレポートを展開しており、今回は去る2月14日、ツアー22公演目にあたる東京国際フォーラムホールAでのライブ――ツアーの中盤戦、宮本浩次のホームタウン東京でのライブをレポートする。
率直に言って、宮本浩次の「歌」はさらに研ぎ澄まされて、より伸び伸びと歌に向き合っているという印象だ。その理由のひとつとして、バンドメンバーとの一体感というか、音楽を通しての相互理解というか、歌に向かう意識の共有がしっかりとなされていることがとても大きいのではないかと思う。まぎれもなく宮本浩次のソロプロジェクトでありながら、制作の現場やライブの時間を幾度も共有することによって、エレファントカシマシとは違った在り方の「バンド」が、その存在をどんどん濃くしていっているのだ。昨年6月の東京ガーデンシアターでのライブにしても『ROMANCE』でのカバー曲の歌世界を存分にライブで表現するなど、その歌のエネルギーは凄まじいものだったが、このツアーでの宮本の歌声は実に伸びやかで、まさに「縦横無尽」だ。宮本が「歌」にしっかり向き合うためのサウンドを、という揺るぎない命題がこの「バンド」の根本にはあるはずだが、そのバンドサウンドのアップデートが、宮本の「歌」をどんどん研ぎ澄ましていくのだと思う。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年5月号より抜粋)