現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』2月号にYOASOBI初の有観客ライブのレポートを掲載!
「初めまして、YOASOBIです」――
初の有観客ライブに挑んだふたりはその日、武道館でどんな音楽を鳴らしたのか?
そのすべてを完全レポート!
文=小川智宏
開演時間には充分余裕があるけれど、九段下駅の階段を上る歩調がちょっと速くなる。周りを歩く人たちもそんな感じで、みんな日本武道館を目指して早足で進んでいく。20代らしきカップルが「楽しみだね」と言い合っている。母親に手を引かれた小さな女の子が“夜に駆ける”を歌っている。そんな、文字通り「国民的」なポップアーティストとなったYOASOBIの初の有観客ワンマンライブ、武道館2デイズ、2日目直前の光景。もちろん個人的にも初めて目撃する「生」のYOASOBIである。もともとは2021年夏のROCK IN JAPAN FESTIVALで実現するはずだったライブが長引くコロナ禍の影響で幻となってしまってから4ヶ月。もちろん、オンラインライブやテレビでふたりのパフォーマンスに触れることはできたけれど、実際に目の前でシンセサイザーを操るAyaseと歌を歌うikuraの姿には、それとはまったく別種の実感と感動があった。予想外に時間がかかったけれど、待った甲斐があった。ライブでikuraもAyaseも、何度も「初めまして!」と言っていた。そう、これが初めまして。僕たちはようやく、YOASOBIに出会うことができた。
スタンドに足を踏み入れると、目に飛び込んでくるのは武道館のアリーナを埋め尽くすように設置された、巨大なステージ。いわゆる360度客席のライブというのは武道館でも何度も観たことがあるが、これはそういうスケールではない。正方形のマス目が41個組み合わされたデザイン、その床面すべてがLEDパネルになっている。観客はそれをスタンド席から見下ろすような形でライブを観ることになる。単純に映像的スペクタクルという意味でももちろんすごいが、それ以上にこの形と構造がこの日のライブにとって実はすごく重要だったということを、僕はこのあと強烈に知ることになる。
客席の灯りが落ち、SEが流れ始める。観客の手拍子の中、バンドメンバーとともにAyaseとikuraが姿を見せる。全身パッチワークのカラフルな衣装が照明によく映えている。そして大きなステージの中央に置かれたシンセの前にAyaseが立ち、それと向き合うようにポジションを取ったikuraがマイクを握る。そうしてスポットライトに照らされる中、アカペラで歌い出したのは“あの夢をなぞって”だった。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年2月号より抜粋)