【ライブレポート】オアシス、来日迫る! 見どころを完全網羅した「Oasis Live ‘25」ツアーレポートで、今週末の公演に向けて徹底予習!

【ライブレポート】オアシス、来日迫る! 見どころを完全網羅した「Oasis Live ‘25」ツアーレポートで、今週末の公演に向けて徹底予習!

本記事は、現在発売中のロッキング・オン11月号、巻頭:オアシス特集に掲載されている、「Oasis Live ‘25」ツアー、ウェンブリースタジアム公演のライブレポートです。ついに今週末に迫った16年ぶりのオアシスの単独公演。その見どころを徹底的に掘り下げたレポートになっております。来日前に必読! 是非、お楽しみ下さい。



【ライブレポート】オアシス、来日迫る! 見どころを完全網羅した「Oasis Live ‘25」ツアーレポートで、今週末の公演に向けて徹底予習!

(文:粉川しの rockin'on 11月号掲載)

東京ドームでは多くの若いファンが初めてオアシスを観ることになるだろうが、初体験が「Oasis Live ‘25 Japan」になる彼らは本当にラッキーだ。何故なら彼らが遂に目撃するのは、21世紀最高のオアシスであり、初にして究極のオアシス・ライブを味わうことができるからだ。一方、古くからのファン=彼らの良い時も悪い時も見守ってきた私たちにとっても、ノスタルジックな感慨を遥かに超えた興奮を覚えるものになるだろう。再結成は伝説のゴールではなかった。「Oasis Live ‘25」は、新たな伝説が誕生する場なのだ。

筆者が観たのは8月2日、3日のロンドンのウェンブリー・スタジアム公演。「Oasis Live ‘25」はセットリストが固定化されていて、彼らは毎公演同じセットを約2時間15分やる。公演の全体像は9月号の深町絵里さんのマンチェスター公演レポートに詳しいので、ここではオアシス再結成ライブの凄さについて、ドームで絶対チェックして欲しいポイントについて列挙していきたい。

まずは、何をおいても「バンド」が凄かった。お馴染みの“ファッキン・イン・ザ・ブッシーズ”が鳴り響く中、ノエルとリアムが繋いだ手を高々と掲げてステージに登場すると、ウェンブリー・スタジアムは地鳴りのような歓声に包まれる。オープニングの“ハロー”で16年ぶりのオアシスの実存を目の当たりにし、続く“アクイース”で兄弟の絆の復活を目の当たりにし、その信じられない光景の連続に正気を失いかけていたところで、バンドが鳴らしている音自体のとんでもなさに気づき、ある意味で正気を取り戻させてくれたのが“ブリング・イット・オン・ダウン”、オアシス屈指のヘヴィでラウドなロックンロールチューンだった。この曲固有の荒々しさはそのままに、筆者のいたスタジアム4階席まで、個々のプレイがノイズで潰されることなく、シャープに、タイトに、折り重なりながら襲いかかってくるのに驚愕する。

今回のセットリストは23曲中20曲が『Definitely Maybe(邦題:オアシス)』と『モーニング・グローリー』の時代のナンバーで、極端に初期曲に偏ったそのセットを、ノエルはなるべくシンプルにやりたかったはずだ。「Oasis Live ‘25」の真髄は2009年の延長戦ではなく、オアシス黄金期のロックンロールの復活にこそある。だから今回は、あくまでギター/ベース/ドラムの王道バンドとして勝負することが重要だったのだろう。彼らが今回目指したのは恐らく、オアシス史上最もラフでラウドな『Definitely Maybe』期のサウンド感覚のアップデートであり、しかもスタジアムの音響に見事に最適化されていたのが、「Oasis Live ‘25」のバンドのアンサンブルとサウンドミックスの凄さなのだ。

ロックンロールの生々しさ、荒々しさをクリアに鳴らす、という今回のテーマにおいて、大きな役割を果したのがオアシス初のトリプルギター体制だ。「オアシスが凄かったのは、ジョニー・マーやジョン・スクワイアみたいなギターヒーローが一度もいなかったことだよ、もっとパンクアティチュードでやってたっていうか」と、かつてノエルは本誌のインタビューで言っていた。今回のトリプルギターは、まさに彼らのパンクアティチュードをスタジアムで実現する最大の武器になっていた。

恐ろしく分厚い爆音ギターが鳴っているのだが、3人の異なる個性がそこに立体感を生み出していく。ボーンヘッドが最もベーシックなリズムギターを担い、ゲムはスライドギター他変化球でその真価を発揮、ノエルは満を持してソロを弾きまくっている、という適材適所のチームワーク。ソロ活動ではシンガー&フロントマンとして忙しく、ギターの見せ場はゲムに譲ることが多かった兄が、こんなにも楽しそうにギタリストしている姿は、本当に久しぶりに見た気がする。リアムのシンガーとしての復活に加えて、ノエルのギタリストとしての自意識の回復もまた、オアシスが復活する上で欠かせないものだったことがわかる。

次に挙げるべきトピックはリアムの歌声だろう。リアムの喉の状態が直近25年で最高の状態にあることは、彼のソロライブで何度も証明されてきたことだが、リアムは今回のオアシスでソロとは違う歌い方をしている、というのがさらに凄い点なのだ。声の伸びの足りなさをテクニックで補う熟練の歌唱から、喉の奥まで全開にしてビブラートに挑む攻めの歌唱へ、“リヴ・フォーエヴァー”にしても“ホワットエヴァー”にしても、ソロ時よりもさらに広大な空間を掌握する圧巻の歌声だ。

もちろん彼の努力と節制の賜物ではあるが、ノエルの歌唱セクションやイントロ&アウトロが長いナンバーを適宜挟むことで、リアムが何度か喉を休める構成になっていたのも大きいだろう。この構成の妙にせよ、高品質な音響にせよ、メンバーのコンディションの良さにせよ、オアシスがこの再結成ツアーのために周到に準備を重ねてきたことがうかがえる。

ノエルも素晴らしかった。初日のカーディフでは、映像を観る限り未だ緊張した面持ちだった兄は、公演を重ねる毎にどんどん肩の荷を下ろし、自由になっていったのだろう。“トーク・トゥナイト”ではスクリーンに大写しになったノエルの目尻に、涙が滲んでいるのを目の当たりにして胸が熱くなってしまった。元々ノエルはエモーショナルでロマンティックな人ではあるが、再結成オアシスをこんなにも愛し、ステージを楽しみ尽くし、感情を揺さぶられている兄の姿を見ることになるとは思っていなかった。

ノエルに寄り添うようにアコギを弾いている、ボーンヘッドの姿にもグッとくる。彼こそがオアシス復活の精神的な功労者だとつくづく思った。「次の曲はマンチェスターに捧げる」と言って始まる“ハーフ・ザ・ワールド・アウェイ”では、お約束の大ブーイングが巻き起こるわけだが、「何ブーイングしてんだよ? マンチェスター人がいなけりゃ、そもそもお前らはここに来られなかっただろうが」と、兄の客弄りMCも復活(客も大喜び)。涙と笑いとがごっちゃになって、とにかくエモいノエルなのだった。

オアシスを愛し、楽しんでいるノエルの姿ほど、リアムが待ち望んでいたものはなかったはずだ。兄弟は何度も目線を交わし、すれ違いざまにノールックでハグを交わす。こんなにも二人がステージ上で意思疎通を図っている姿は、2000年代には殆ど見られなかったものだ。タンバリンヘッドの上にさらにマラカスまで突き刺したリアムのふざけた姿に、ノエルが爆笑しているのが見える。「あいつはいつだって俺を笑わせてくれるんだ」と、かつて兄が言っていたのを思い出さずにはいられない。解散しようがしまいが、兄弟は常に兄弟だったということだろう。リアムの立ち振る舞いやMCも、ソロライブのそれより明らかに弾んでいて朗らか、ノエルとボーンヘッドがいると、自然に弟キャラに戻るものなのかもしれない。

リアムとノエルのソロライブで何度もオアシスのナンバーが演奏され、歌われるのを観てきたが、「リアムが歌ってノエルがコーラスを入れる」光景を16年ぶりに目にすると、やはり兄弟が揃わなければオアシスの楽曲はオアシスとして聞こえないのだと、改めて再確認せずにはいられない。だから「Oasis Live ‘25」でとりわけ盛り上がるのは二人の歌声が響き合うナンバーで、“アクイース”は言うまでもなく、“ロール・ウィズ・イット”の木霊コーラス、“スライド・アウェイ”のアウトロも物凄い歓声だった。特に2000年代後半には“スライド・アウェイ”のアウトロをリアムが歌わないことが多かったことを思えば、兄弟が互いに負けじとシャウトする同曲の白熱のエンディングに、ノエルが誇らしげにリアムを指差す仕草に、落涙せずにはいられなかった気持ちは、古参ファンの皆さんにはご理解いただけると思う。

「長すぎる」と感じなかった“ドゥ・ユー・ノウ・ワット・アイ・ミーン?”も初めてで、この曲のポテンシャルがここまで活かされたのはトリプルギターに加え、ジョーイ・ワロンカーの功績も大きいはずだ。歴代ドラマーの中でもとりわけ技巧派の彼が敢えて手数を絞り、荒ぶる3本のギターの手綱をガッツリ掴む役割に徹したことで、より強靭なグルーヴが生み出されているのだ。アンディのベースも盤石で、つくづく死角がないのが「Oasis Live ‘25」だ。

最後に挙げるオアシス再結成ライブの凄さは、あの場にいた全ての人々だ。観客は驚くほど若く、半分以上はオアシスを初めて観る層だったのではないか。95年のリアムみたいな格好をして“ロックンロール・スター”を熱唱する若者たちのピュアな興奮に、リアルタイマーのノスタルジーが交錯する其処は、オアシスにしか生み出し得ない現在進行形の伝説の現場だ。オアシスのライブは常に観客がライブの良し悪しの3割くらいを決定づけるが、今回、私たちは最早オアシスの一部だった。“シガレッツ&アルコール”のポズナンで隣の人と肩組んで破茶滅茶に飛び跳ねながら湧き上がってきたのは、私たちこそがオアシスの再結成という伝説を「作る」のだ、という高揚だった。

ロンドンは2日よりも3日のほうがさらに良かった。今のオアシスはライブをやればやるほど確信を強めるゾーンに入っており、ツアー後半の日本にはほぼ完全体としての「Oasis Live ‘25」が上陸する。それを最終的に完成させるのは、ドームに集う私たち一人一人なのだ。


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