祝・デビュー30周年!
「4人の30年、そしてこれから」、スピッツの魔法のメロディ10曲、ニューシングル『紫の夜を越えて』徹底レビュー、立体企画!
撮影=中野敬久
彼らは“ヒバリのこころ”のまま、どのように銀河を飛び越えたのか?
ヘソ曲がりのまままっすぐ歩き続けたスピッツの30年、そしてこれから――
デビュー30周年となる3月25日、スピッツは『NEWS23』のエンディングテーマ“紫の夜を越えて”をニューシングルとして配信リリースした。30周年企画として公開中のメンバーによる年別コメントを楽しませてもらいながら、JAPANでも30周年をぜひ祝いたい!と本記事を企画した。
メンバー4人にとってスピッツの物語は1987年の結成から始まるが、リスナーとスピッツとの物語が公式に始まったのは1991年3月25日に同時リリースされたアルバム『スピッツ』とシングル『ヒバリのこころ』だ。個人的な話になるが、その年の1月発売の『ROCKIN’ON JAPAN』でスピッツが初インタビューに登場した同じ月、私はこの会社に入社した。とてもオリジナルな才能を持った新人バンドとしてみんなが注目していて、編集部ではいつも誰かしらの机の上のラジカセからスピッツの曲が鳴っていた。《どうせパチンとひび割れて/みんな夢のように消え去って/ずっと深い闇が広がっていくんだよ》(“ビー玉”)という、みもふたもなくリアルな死の手触りが、牧歌的なメロディにのって真っ昼間のオフィスに響く光景は、今考えればものすごくシュールだ。2年後「世界スピッツ化計画」という連載も始まった。今も昔もそんなふうにずっと、スピッツはみんなが大好きなバンドなのだ。
オリジナルメンバーのまま休止や解散もなく、30年以上もコンスタントに活動を続け、時代遅れになるどころか名曲を更新し続けるロックバンドは世界中でも稀で、U2やレディオヘッドのように宝物みたいな貴重な存在だ。なぜ、スピッツは30年以上も醒めない魔法を紡ぎ続けることができるのだろう? 本人たちですらきっと解くのが難しい謎だけど、もしかしたらスピッツは、《五千光年の夢が見たいな うしろ向きのままで》(“五千光年の夢”)というような、得意の逆上がりの視点で、時代の先を見ていたバンドなのかもしれない。 ※以下、本誌記事に続く (井上貴子)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2021年5月号より抜粋)