海風吹き抜けるQVCマリンフィールドの巨大ステージ。その左右のヴィジョンにバンドの紋章が映し出され、予定時刻の18:30を過ぎると、開演前BGMの“ボレロ”に合わせて「その時」を待ちきれないアリーナ/客席一丸の手拍子が沸き上がる。やがて……場内の照明が消え、大歓声の中ひとり舞台に現れた升秀夫が会場に向かって大きく手を振り、一礼してリズムを刻み始めると、オーディエンスのザイロバンド(LED内蔵のリストバンド)が輝き始め、広大な会場を七色に染上げていく。そこへ増川弘明が、直井由文が、藤原基央が登場、藤原がレスポール・スペシャルを高々と掲げると、スタジアムの歓声はさらに熱を増していく。そして、“Stage Of The Ground“に流れ込んだ瞬間に大音響とともにキャノン砲が炸裂して銀テープが舞い上がる――というダイナミックな幕開けで一気に沸点を超えた会場の高揚感は、終演まで高まりこそすれ冷めることは微塵もなかった。
“オンリー ロンリー グローリー”のパワフルなサウンドがスタジアムを揺らし、藤原&増川のギター・サウンドがきらめく“プラネタリウム”では一面のハンドウェーブに伴って光の波がスタジアムを包み込む。そして、“花の名”の藤原の凛とした歌声が、巨大な会場を感動で包んでいく。「調子悪い人いないっすか? いたら声かけてあげてください」と満員のアリーナに呼びかけるのは藤原基央。「楽しんでる? 僕らも今、すごい幸せな気分です」と語る藤原の声に湧き上がった歓声が、「……半分終わってしまった」の言葉とともに一斉に「えーっ!」の声に変わる。でも、「あっという間でしたね……あっという間ですよ。そういうもんだよ、夏だもん(笑)。暑いな。風呂みてぇだ」と軽妙に語りつつ、「イントロクイズ」とメジャー・デビュー曲“ダイヤモンド”のイントロのフレーズをゆっくり弾いてみせると、スタジアムは再び今この瞬間を最大限に楽しみきろうとするポジティブなヴァイブで満たされていく。そのまま続けて“メーデー”“カルマ”……BUMP OF CHICKENのキャリアを彩ってきた名曲が、紛れもない「今」のリアリティと訴求力をもって胸に迫ってくる。「この場所でやるの僕ら初めてなんですけど、そんな俺らでも言えることがある……千葉へようこそ!」。かつてすぐ隣りの幕張メッセで行った公演を上回る規模の、地元・千葉へのあまりに巨大な「凱旋ライブ」のステージから、藤原はそう呼びかけた。惜しみない拍手が4人へ降り注ぐ。
メンバーがステージを降りた後、暗転したスタジアムに3万5千人のザイロバンドが再び輝き、アンコールを求める“supernova”の合唱に応えて4人がもう一度オン・ステージすると、割れんばかりの大歓声が幕張の夜空に広がっていく。「私事ですが、明日はうちのドラマー升秀夫の34回目の誕生日です!」という藤原の言葉とともに、会場全員が“ハッピーバースデー”の大合唱! 「生まれてきてよかったな、お前」と升に呼びかける藤原。「みんな、来てくれてありがとう!」とオフマイクで叫ぶ升に、ひときわ熱烈な喝采が湧き起こる。「ザイロバンド、すごい。飛行機とかから見えるんじゃないかと思って」と感慨深げに会場を見渡して語る増川。「どうせだったら、夏、いちばん盛り上がっちゃいますか?」と呼び起こした轟々たるコール&レスポンス「いやいや、それじゃ飛行機に届かないなあ」とさらに天井知らずに煽っていく直井。「じゃあ、感謝の心をこめて歌います!」の藤原の言葉に導かれて鳴り渡ったこの日のラスト・ナンバーは“ガラスのブルース”。《ガラスの眼をした猫は叫ぶよ》を「ガラスの眼をした君と叫ぶよ」と歌詞をアレンジしてみせる藤原の歌に、スタジアムに響き渡るシンガロング。最後の《僕はいつも 精いっぱい歌を唄う》を、藤原は「僕は今も 精いっぱい君と唄う」と歌っていた。真摯に音楽を奏で歌い続ける限り、自分たちの歩んできた道程はいつだって「今」と「これから」を照らすメッセージとして響き続ける……そんな彼らの確信が、この晴れ舞台でとめどない祝祭感とともに咲き誇っていた。9月から始まるアリーナ・ツアー『BUMP OF CHICKEN 2013 TOUR "WILLPOLIS"』へ、そしてさらにその先へと続いていく4人の新たな足跡を、どこまでも見続けていたい、と改めて思わせてくれる、最高の一夜だった。(高橋智樹)
[SET LIST]
01.Stage of the ground
02.firefly
03.虹を待つ人
04.オンリーロンリーグローリー
05.プラネタリウム
06.花の名
07.ダイヤモンド
08.メーデー
09.カルマ
10.K
11.天体観測
Encore
12.ガラスのブルース