ステージ・セットは、説明は無かったけれども恐らくホテルをコンセプトにしていて、『X’massive』の文字が踊るDJ卓には木目が入っている。ホテルのフロントを模した感じだ。そこにDJ FUMIYAが収まり、この夜のオープニング・チューン“トゥナイト”のトラックを繰り出すと、それぞれのヴァースの歌い出しでRYO-Z、PES、SUが強いキック音に合わせたクラップを誘いながら順に登場。オレンジ(赤?)のラインが入ったホテルマン風のスーツで揃えてコートを羽織り、白手袋とサングラスも身につけているのだが、こんなにワルいホテルマンがいてたまるか。そしてたっぷり焦らしたところに、サンタ衣装を重ね着したILMARIも加わり、大歓声が巻き起こる。
原曲の良い部分を壊すことなく、ビートを磨き込み、控え目ながら効果的かつドラマティックなシンセ・フレーズが加えられたトラックの精度がまず凄い。そこに乗って、乗って、更にノリノリで被せて、といった4MCの手がつけられないパーティ野郎ぶりが発揮され、高揚感は天井知らずにエスカレートしていった。もちろん、クリスマス仕様の電飾やレーザーといった派手な演出効果もあるのだけれど、まずはリップ本来の音楽的に優れたパーティ性ありき。中盤の“星に願いを”→“熱帯夜”→“黄昏サラウンド”→“Tales”→“One ~Xmas Classics~”→“楽園ベイベー”という、纏わり付くようなエロ目線とおセンチなフィーリングが混在した恋人たちの1年を選曲したのはSUさんだそうだが、そのSUさん、今回のステージに向けて張り切っていたことがありありと伝わるパフォーマンスである。序盤からマイク捌きもキレまくっていて凄かった。「俺はアスタラビスタとかやってたけど、最も何してたんだ?って人が(RYO-Z)」「いや、傍聴席にいたり(TVドラマ『リーガル・ハイ』出演時)したんだけど(SU)」とか何とか絡んでいる間に、FUMIYAはRYO-Zの放った一言をサンプリング&ループさせてパーティ・モードを繋ぐ。そこでRYO-ZはちらっとPSY“江南スタイル”のステップをコピー。鮮やかだったけれど、2012年の総括はそれでいいのか。
でも本編中、リップの楽曲が止まっていたのはこのときくらいで、あとはひたすらダンスの熱狂が続いていた。10年ぶりぐらいに披露されたという“WHAT'S UP? ~HOW'RE YOU DOIN'”は、ヒューマン・ビートボックスではなくFUMIYAのオールドスクールなターンテーブル・ワークでビシッと決める。こういう「誤摩化しのきかない、丸裸のスキルがものを言う曲」が盛り込まれていたことも、今回のステージへの意気込みを表していたと思う。“UNDERLINE No.5”と“Jack Goes On”が現代的なエレクトロニック・ダンス・ミュージック文体の中で違和感なく連なり、暗がりの中に電飾された手袋が煌めいてフロアのバウンスを煽り続ける。「おめえら、やるじゃねえか。RIP SLYME史上、1・2を争う過酷なセット・リストでしたけれども」と本編クライマックスは“Present”だ。クリスマス気分と、ダンス・フロアの恍惚感が綯い交ぜになって思わずグッと来てしまうようなフィナーレであった。
SET LIST
01: トゥナイト
02: Super Shooter
03: JOINT
04: TOKYO STOMP
05: SPLASH
06: ステッパーズ・ディライト
07: 星に願いを
08: 熱帯夜
09: 黄昏サラウンド
10: Tales
11: One ~Xmas Classics~
12: 楽園ベイベー
13: WHAT'S UP? ~HOW'RE YOU DOIN'
14: FUKASTIC
15: Watch out!
16: SCAR
17: UNDERLINE No.5
18: Jack Goes On
19: GoodDay -remix-
20: Good Times
21: Present
En-1: 新曲
En-2: Wonderful
En-3: マタ逢ウ日マデ