メンバーが一人ずつ丁寧にお辞儀をしながらステージに現れると、「いっちょいきますかー!!」という渡會の一声とともに印象的なギターリフで始まる“茶の花”で幕を開けた。オープニングに相応しい軽快なリズムと思わず口ずさみたくなる抜けの良いサビのメロディーで、初っ端からオーディエンスも手を挙げ盛り上がる。字余りの早口ラップが折り重なる部分で、渡會はものすごい目を見開いて歌い倒した。それに合わせて、竹尾のギターリフも早口に負けじと主張してる。
一筋縄にはいかない一癖も二癖もあるFoZZtoneサウンド。捉えどころがないというか、何にも例えられないというか、ライブを観ていてもとにかく不思議な感覚に陥る。ものすごくキャッチーなサビメロで人懐っこい一面を見せたかと思えば、突然4人それぞれが酔いしれるように、お客さんがいることを忘れてるんじゃないか?っていうぐらいに演奏に没頭してしまう。そのギャップが激しくて、すごく面白い。その2つが極端だからこそメリハリのあるライブが成り立っているのかなとも思う。
ライブ中盤は渡會はアコースティック・ギターに持ち替え、しっとりと切なく、緩やかなライブを展開していく。『ワインドアップ』の中でも一際、スタイリッシュで洗練された楽曲“U.C.”は秋の夜長にピッタリな1曲。オーディエンスはゆらゆらと揺れながら静かに心酔していく。
そんなしんみりしたムードを一気に戦闘モードへと変えたのは、竹尾の寸劇MCあたりから。昔、彼らが代々木のSHIBUYA BOXX前で路上ライブをしていた頃、BOXXでライブをやることが目標だったそう。それが叶った後、UNITでライブをやりたいと目標を立て、それが叶い、今度はクアトロでやりたいという説明があったところで、寸劇スタート。竹尾がクアトロに電話をかけて日にちをおさえるという体で、「1月11日空いてる?え?●●のライブがある。そう、じゃあ、1月31日は?え?空いてる?じゃあ、お願い!」というようなやりとりを関西弁全開で一人芝居。それを冷静に見守っているメンバーもなんだか面白い。そして、本当に来年1月31日に渋谷クアトロでのワンマンライブが決定したことが発表され、フロアも歓喜の声で沸き上がった。
そこから、振り切れるようにアッパーで激しく力強いナンバーが立て続けに披露され、オーディエンスは拳を突き上げヒートアップ! 特に“The World Is Mine”の「世界は俺のものだ!」と絶叫しながら振り絞った歌声はCDとはまったく違う響き方をしていたし、演奏的にも4人が一つの方向に向いた瞬間でもあった。アンコールでは10月10日より先行着うた配信が始まり、10月28日に正式にPC&Mobileで配信スタートする新曲“ワンダーラスト”も披露。軽やかなリズムと柔らかなメロディーにFoZZtoneの捻くれたポップ感を足した、新たな一面を感じさせる新曲に心が躍る。この新曲もそうだけど、捻くれているのに、なぜか不思議とストレートに届くライブだったと思う。ツアーはこれからまだまだ続き、そのファイナル公演として行われる1月31日の渋谷クアトロではとんでもなく成長したFoZZtoneが観られそうで、今からワクワクしてきた。(阿部英理子)