bonobos @ 恵比寿リキッドルーム

bonobos @ 恵比寿リキッドルーム
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bonobos恒例の東名阪ツアー『東海道三次』Vol.3。シリーズ初日を迎える恵比寿リキッドルームはめでたくチケット完売である。そういうわけでフロアはもちろん大賑わいになっているのだけれど、ステージ上までが「これであいこだろ」とばかりに大賑わいになってしまっているのが、現在のボノボだ。先に書いてしまうと、アンコールが終わって全員でラインを作って頭を下げたとき、ステージ上には10名を数える出演者が立っていた。元々が屈強なライブ・バンドであるメンバー4名、さらにトロンボーン、サックス、トランペットの賑々しいホーン隊が3名、そしてギタリストに木暮晋也(ヒックスヴィル)、キーボード奏者にHAKASE-SUNという各方面でひっぱりだこの必殺仕事人×2。もしかすると、このメンツで音を鳴らせば半径1kmぐらいの天候なら変えられるんじゃないかみたいな、これが新興政党だったら政権取れるんじゃないかみたいな、まあそんな印象さえ抱かせる豪華ツアー・メンバーなのである。

目一杯ファンキーなインスト・セッションでライブ本編が幕を開ける。やはりというか、蔡は自慢気にバンド・メンバーの名前をコールしていった。そして松井による軽快なラテン・パーカッションが弾けると、まるで今週の日本を唐突に覆った高気圧のように、バンドは冬のリキッドルームに暖かい陽光と南風を運んでくれる。満場のオーディエンスは一斉ジャンプとハンド・クラップでそれに応じるのだった。サンバ風ラテン・ビートの次にはカリブ海へと北上してスカ・ビートをミックスし、蔡のストレートで伸びやかな愛のメッセージが乗せられてゆく。そして森本の力強くかつ艶かしい、バンドをリードするようなベース・プレイも本領を発揮だ。気がつけば開演から5曲、アッパーな曲だけで一息に駆け抜けてしまった。

「今日はツアー初日です! 飛ばし過ぎたんで休ませてください。チケット、ソールド・アウトありがとうございます。後ろの方が渋滞してしまっているので、不快でない程度に前に詰めて頂けると………。動け、おまえら」と蔡。即座に「最初からそう言えばいいじゃん」と周囲から嗜められる。3人のホーン隊の演奏は確かにバンドの賑やかさに拍車を掛けるのだが、代わるがわるエモーショナルなソロを吹く「押し」の一手だけでなくて、蔡の歌を引き立てる「引き」の絶妙なアレンジも聴かせてくれて実にいい。

“THANK YOU FOR THE MUSIC”でフロアに巻き起こる印象的なハンド・クラップは、もはや大所帯バンド・サウンドの一部であるかのように場内に響いた。さて、前半の暖かい陽射しを感じさせたアッパー・チューン連打が「昼」のモードだとすると、中盤はさしずめ「夜」のモードである。スウィングするロックあり、眩くスペイシーなダンス・チューンあり、そしてアップテンポなのにやたらスモーキーな、これぞボノボというダブ・チューンあり。ステージ上に設置された無数の、色とりどりの照明が、バラエティに富んだ楽曲とともにオーディエンスの意識を別世界へと誘ってゆく。

「俺、めっちゃしんどいよ。誰やこのセット・リスト考えたの。森本さんか。bonobosは2001年に結成して、来年で10周年です。今年が10年目です。…どうせ誰もハッキリしたことは言えんやろ。このモヤモヤっとした2、3年は(笑)ずっとお祭りで行きたいと思います」。蔡は終盤にそう告げていた。ボノボのライブは確かにお祭りである。でも、今回のステージはそれだけではなくて、1本のライブとしてドラマティックな、大きな物語を感じさせるものにもなっていた。本編ラストに披露された新曲“夕景スケープ”が、その大きな物語のエンディングとして、奇麗に残りひとつのピースを埋めるように響き渡ったのが印象的であった。

本編がそういう形で幕を閉じたので、ちょっと風変わりな趣向の今回のアンコールは、まさに番外編という感じで楽しめた。ネタバレになってしまうので詳細を書くことは控えるが、おもしろいのでぜひツアーの続きで確認して頂きたい。名古屋公演は明けて1/23(土)に、大阪公演は1/28(木)に行われる。このアンコール、内容的な部分で、悔しいが東京よりもそちらの方が盛り上がると思う。(小池宏和)
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