それから約4ヶ月、アルバムの表題曲でもある新曲“Abduct”とともに帰還した新生ケプラ──バンド名を「KEPURA」と改めたその姿には心底驚いた。青春感漂うギターロックやJ-POP的なカラフルさは影を潜め、代わりにインディーポップやポストロック、ダンスミュージックの要素までも内包したサウンドは4人の音楽的バックグラウンドの豊かさを示す。そのことが却ってバンドの根幹にあるメロディの良さを際立たせることにもつながっており、ritsuki(Vo・G)の歌うメロディに寄り添うコーラスワークも大きな聴きどころとなっているのだ。
本インタビューでは、一度立ち止まったことで、どのようにこの変化が生まれたのかを振り返りながら、『Abduct』に収録された新曲群の魅力をひもといていく。
インタビュー=風間大洋 撮影=Yasuda Aya
──一時休止を挟んでバンド名の表記も音楽面も一新されました。ここまでドラスティックな変化を遂げるに至った要因から聞いていきたいのですが。リリースを重ねながら軌道修正していくこともできたと思うけど、自分たちのやりたいことがあるから音楽をやっているんだということを伝えたかった(ritsuki)
hayato(Dr) 2020年にこの4人で音楽を始めたんですけど、いつからか、だんだん前の状態のKEPURA──カタカナの「ケプラ」に自分たちが合わせにいってる感覚が少しずつ出てきてはいたんですよ。
ritsuki 明確にいつからというのはないんですけど、気づいたらそうなっていて。このまま事が大きくなる前にどこかで区切りをつけたほうがいいなというのもあって、ファンの方や世間の人たちに「見つめ直す時間をください」という表明をしたんです。
hayato そこで一回原点に帰るというか、今までを忘れて何も考えずに音を鳴らすならどんな音楽をやるかな?というところから組み立てたのがこのアルバムでした。
──高校時代に始まって、当時やりたかったことをストレートに表現したものが評価を得た。そこでできあがったリスナーの中の「ケプラ」像が、否応なく以降の作品にも影響を及ぼすサイクルになっていったと。
kazu(B) そうですね。求められてることをやりながら自分たちのやりたいこともやっていくというのも、わりと楽しめていたつもりではあったんですけど。ちょっとずつやりたいことができなかったり、潜在的な部分で「なんとなくやめとこう」ということはあって。しっかりと区切るタイミングが必要になってきた感覚はありました。
kenta(G) 曲を作る時の「歌詞をもっとこうしたほうがいいんじゃないか」みたいな会議でも、「それは違うんじゃないかなぁ?」という感覚が少しずつ出てきて。
ritsuki リリースを重ねていきながら、ちょっとずつ軌道修正していくこともきっとできたと思うんですけど、それだと自分たちの中でもモヤモヤする部分はあるし。自分たちのやりたいことがあるから音楽をやっているんだということを、聴いてくれる人にもちゃんと伝えたほうがいいかなと。
hayato たとえば、次の作品で作風が変わったものが届いた時に、迷いだと思われたくなかったんですよね。俺らの中ではちゃんと長い時間をかけて「こういう音を鳴らしたい」という次の段階へ進もうとしていても、それを迷いや試行錯誤だと受け取られてしまったらよくない気がして。なら、しっかり言っておいたほうが、という。
──発表した段階で、どこを変えよう、どういうふうに変えようとかはある程度イメージしていたんですか?
kenta とりあえず自分たちがいいと思うものだけを作っていったら、徐々に「このやり方で合ってるわ」って目に見えてきたので、最初からのイメージとかはなかったような……。
hayato 「何か決めてからやることは全部やめよう」という空気は、うっすらあったかもしれないです。作り方もどんな気持ちから曲を作るのかも、先入観を全部取っ払って。今までのような「夏にはこういう曲」「卒業シーズンだからこういう曲」とか、そういったことじゃないところから進めていこうと。
ritsuki だから、まさかここまでまとまるとは正直思ってなかったです。自分たちの作りたいもの、鳴らしたい音をやっていった結果として気持ちが揃ったから、まとまったアルバムがひとつできたのかなと思います。
hayato 仮にまとまらなくてもいいと思ってました。それでも根本を辿っていったら今までやってきた何年間があるから、最後はちゃんと4人の作品にできる自信はありました。
──結果としてどんな曲が出てきたと感じました? それぞれのルーツが出たとか、今の好みが反映されたとか。今の自分たちにひとつストーリーがあったとして、そこでどんな音楽が流れてるか?みたいなところから曲を作っていった(hayato)
hayato 今の自分たちにひとつストーリーがあったとして、そこでどんな音楽が流れてるか?みたいなところから作っていったような気がして。その時々の気持ちに当てはめていった、サウンドトラックのような感覚の作品だと思います。
ritsuki 過去というよりは、今の自分たちに合う音のような。
──今やってて楽しい音ってなんだろうか、という?
ritsuki うん、それはあったかもしれない。
hayato 制作中はライブの話をよくしてたんですけど、それは自分たちが着飾らずに鳴らせる音、みたいなことを考えてたからかもしれない。
──それによってここまで変わるとは、という感覚もあって。
hayato それだけこの5年間を過ごしてきた俺たちと、これまで守ってきた「ケプラ」にギャップが生まれちゃっていたのかなと。
──ちなみに、休止発表から再開までの間はどんな過ごし方をしていましたか。
kenta 制作のために4人で軽井沢に行って、合宿みたいなことをやったり。あとは……何かあったかな……?
hayato 何もしてなかったと思われるよ(笑)。
kazu のびのび暮らしてはいましたね。4ヶ月って言われて「そんなに短かったんだ?」って思うくらい、各々の時間が増えて。作曲以外のライブとかスタジオ練習がなかったので、めっちゃ休んだ感じがします。
hayato 作品に向けては、休む前から動いてはいて。話し合うよりもまずは音を鳴らし合うほうが早い気がしたので、みんなでスタジオに入って適当に合わせたりしてました。何ヶ月悩んでこうなったとかじゃなく、スッと自然に作り始められて、アレンジもどんどん進んで。最後のレコーディングで思ってた音と違ったら嫌なので、そのイメージを固めるのとレコーディング自体の作業には時間をかけました。一個一個「これはこういう空気感で」「こういう世界で」と話していく意思疎通の時間を大切に作っていった結果、ちょっとコンセプチュアルな世界としてまとまった感じです。
kenta 「こういう音にしたい」というイメージができたら、そこになるべく近づけていく作業だったので、今回は音色をだいぶ優先して作りましたね。