学生の時は自転車を漕ぎながらザ・スミスを聴いて涙を流すような(笑)、決して「1軍」ではなかったんですけど、それでもいい、完璧じゃなくてもいい、っていう気分を伝えられたらな、と(島田)
――この新作に『Class : A』というタイトルをつけた理由について聞かせてください。小川 『Class : A』は、英語で「完璧」を意味する言葉なのですが、自分たちとしては、皮肉を込めてこの言葉を使っていて。「完璧」とは逆で、「完璧な人なんていない」、「それでも、誰もが誰かにとって特別な存在なんだ」というメッセージを今作に込めています。ジャケットは金色(ブロンド)をベースとしていて、海外では「完璧」というイメージを想起させる色なのですが、その上にあえて、手書きの「A」を載せていて。
島田 その手書きの「A」は僕が書いたんですけど、「完璧じゃなくてもいい」という想いを込めています。『Class : A』には、スクールカーストでいう「1軍」という意味もあって、僕自身、学生の時は自転車を漕ぎながらザ・スミスを聴いて涙を流すような(笑)、決して「1軍」ではなかったんですけど、それでもいい、完璧じゃなくてもいい、っていう気分を伝えられたらな、と。
――楽観的で無邪気でありながら、同時に、世の中を支配するネガティブな価値観やバイアスを突き破っていくという力強いメッセージを感じます。こうしたコンセプトは、アルバムの他の楽曲にどのように落とし込まれていったのでしょうか?
島田 悟の話を聞いた時に、そのテーマに深く共感して、自分以外のパートを含めて、みんなで話し合いながらアレンジを決めていきました。全員がここまで他のパートについて考え抜くバンドは珍しいかも。
王将 我を出すのではなく、4人で楽曲をよくしていきたいという想いが全員にあって、だからこそ、足し算ではなく引き算のアレンジをすることも多いですね。
――特に“Decade”のようなダイナミクスが重要となる楽曲においては、展開の緩急をつけるために引き算が重要になりますよね。
上羽 リズムパターンについては、最初は悟が「こんな感じで」と打ち込んだデモをもとに考え始めるんですけど、たまに「まじか、それ」みたいな、絶対に自分では思いつかないようなフレーズが入っていることもあって(笑)。ただ、それが結果として最も曲に合うことも多いですね。
小川 その逆もあって、みんなのテイストが入ることで初めて曲としてよくなることのほうが多いですね。俺がひとりでやっても、ボツ曲ばっかりになってると思います。
王将 僕は、このバンドを組む前は、いわゆるギターヒーローが好きで。ただ、単に技術を伝えるのではなく、曲の良さを引き立たせることが大事だと学びました。だからこそ、前に出るところは出つつ、時には、曲のために後ろに引くこともできるようになりましたね。
リスナーが飽きないように、曲ごとにシンセ、鉄琴、サックスなどの新しい楽器を入れて。ビーチ・ボーイズの作品からヒントを得たアプローチですね(小川)
――お話を聞いていて、4人はロックバンドという表現フォーマットの可能性を強く信じているのだと感じました。ひとりでも打ち込みで楽曲を作ることができる時代においても、4人で組むことに意味があると。島田 みんなが、「1+1+1+1=4」ではなくて、時に「4」以上の力が生まれる、というバンドの美学を信じているんだと思います。
――小川さんのルーツであるオアシスも、それぞれがソロ活動するのではなく、あの兄弟が揃うからこそ生まれたケミストリーがありますもんね。
小川 ほんと、絶対にそうですね。
王将 バンドメンバーとしてお互いの気持ちを理解し合うために、全員でパートを変えて課題曲をカバーしたこともありましたね。そうすることで、それぞれの音作りに対する意識が変わったと思います。
――ひとりのギタリスト、ベーシスト、ドラマーとして、というよりも、全員がひとりのミュージシャンとしての成長を目指す、ということですよね。アルバムの後半ではアレンジのバラエティがグッと増していて、音楽性が広がってますね。
小川 アルバムを作る時、最後のほうの曲、聴かれないなって思って。リスナーが飽きないように、それぞれの曲ごとに毎回、シンセ、鉄琴、サックスなどの新しい楽器を入れています。これはビーチ・ボーイズの作品からヒントを得たアプローチですね。
――どの曲もメロディがとても強いですよね。歌もギターのフレーズも非常にメロディアスで、観客が一緒に口ずさむ光景が浮かびます。
小川 今回も、スタジアムで数万人のシンガロングが巻き起こる光景を意識しながらメロディを書いていきました。ギターソロについても、王将にオーダーしながら一曲ずつ形にしていって。結果として、全曲を自信をもってリード曲として出せるほどの作品が完成したと思っています。
――アルバムのラストに収録される“Apartment”について、今作を《I will survive/I will revive…(訳詞:僕は生き残る/僕は蘇る》という言葉で締めくくった理由について教えてください。
小川 この曲の歌詞は決して明るくなくて切ない世界観ですが、それでも、最後には明るい希望のメッセージを乗せたくて。これはコロナ禍で書いた曲で、もちろん、コロナによって辛く悲しい気持ちになることも多いけど、それでも視点を変えれば、ポジティブに捉えることができることもあると思っていて。歴史を振り返ってみても、いつの時代もロックバンドは現実の社会と闘ってきたんですよね。だからこそ、こうした希望のメッセージを掲げることは、ロックバンドである自分たちの役割だと思っています。このアルバムが広まって、このメッセージが、より多くの人に届いたら嬉しいです。