【インタビュー】祝・め組10周年、ファン投票が反映されたベストアルバムを機に今こそ聴くべき5の名曲を語る

【インタビュー】祝・め組10周年、ファン投票が反映されたベストアルバムを機に今こそ聴くべき5の名曲を語る
今年7月に、めでたく結成10周年を迎えるめ組。6月4日には、ファンの楽曲投票が反映されたベストアルバム『SUPER ME-GUMI COLLECTION』がリリースされる。泣き笑いと音楽的な遊び心、珠玉のメロディとエモいストーリーテリングが織り成す全18曲は、その質量ゆえに強烈な聴き応えをもたらすはずだ。そこで今回は、キャリアを彩ってきた名曲たちを5曲ピックアップし、菅原達也(Vo・G)に語ってもらう企画インタビューをお届けしたい。おのずと山あり谷ありのキャリアを振り返る内容であり、まため組ファンとの強い信頼関係の形を確認することにもなる。この機会にめ組というバンドのユニークさと初めて出会い、その勢いでベストアルバムに触れていただいても当然OKだ。あなたとの共犯関係を結ぶめ組のキャリアは、ここから10年、20年と続くのである。なお2025年5月30日発売のROCKIN’ ON JAPAN7月号には、このインタビューの完全版を掲載している。新曲“AIのうた”についても語られる内容になっているので、そちらもぜひチェックしていただきたい。

インタビュー=小池宏和 撮影=小財美香子


投票してもらった曲は全部そうなんですけど、自分の中で手応えがある曲ほど票に反映されているので、納得してるし、本望ですね

①ぼくらの匙加減


──まずは“ぼくらの匙加減”で、セカンドアルバム『僕だってちゃんとしたかった人達へ』(2017)収録曲。楽曲投票で1位だったんだけど、2020年の投票企画でも1位で、根強い人気を誇る曲ですね。菅原さんとしては、この曲の人気の高さをどんなふうに受け止めていますか。

個人的な気持ちだけ言えば、“ぼくらの匙加減”が名刺代わりの曲というか、内容はすごく自分を曝け出したものになっているし、格好つけずに綴った曲なので、恥ずかしいんですけど、メロディとかそういった作家的な部分ではうまくいった曲なので、そこに注目してほしい気持ちがありますね(笑)。あとは、お客さんからすると、そういう曝け出した曲のほうが感情移入しやすいのかなということも、敢えて俯瞰すると思います。恥ずかしいというのは、今だからこそ恥ずかしいんですよね。作っていた当時は完全にこの感情だったんですけど、昔の写真のアルバムとかプリクラを見ているような、そういう気恥ずかしさがあるんです。

──なるほどね。相手が大切な人だからこそ、やらんでいいことをやって反応を伺ってしまう菅原さんの人柄が感じられる曲で、音楽的にもそういうことをやり続けているじゃないですか。わざとメロディを捻ってみたり、回りくどい歌詞にしてみたり。そういう菅原さんのコアなテーマが、“ぼくらの匙加減”という1曲には集約されていると思うんです。だから、この曲を聴くと菅原さんがどういう人なのかわかる。あ、ちょっと面倒くさい人だな、でも面白いな、という部分まで伝わるというか。

ああ、そうかもしれないですね。いちばんわかりやすく、それが出ている。その分析の通りだと思いますね。あとは、大切な人ほど共犯になりたがるよね、って言われたことがあって、自分でもなんでだろうと思うんですけど。でも、そのことを聞いたときに、なんか俺はその正体を知りたくないな、って思っちゃって(笑)。作曲にも影響が出ちゃいそうだから、あまり深く掘り下げないようにしているんです。

【インタビュー】祝・め組10周年、ファン投票が反映されたベストアルバムを機に今こそ聴くべき5の名曲を語る

──共犯がテーマの曲も多いもんね。め組は最初からそうじゃない?

そうですね。《「あなたとなら/人生だめにしたい」》(“マイ・パルプフィクション”)とか、《ズタボロなみてくれで/今夜銀行を襲おうよ》(“タソガレモード”)とか、歌ってるわ。“ぼくらの匙加減”ができたときのことはよく覚えていて、歌詞に綴ったような事柄が実際にあったから、やっぱりショックだったんですよ。この気持ちが共感されなかったら、もう意味がわかんねえな、って思って。だから、楽曲投票で1位になるくらい理解を得られたのはよかったです。投票してもらった曲は全部そうなんですけど、自分の中で手応えがある曲ほど票に反映されているので、納得してるし、本望ですね。

──この曲をちゃんと理解して、投票で1位に送り込むって、すごい絆だよね。

ね(笑)。おかしな話ですよ。“ぼくらの匙加減”って、意味わかんないもん。ちゃんと頷きながら聴いてくれてるってことですよね。確かに、多すぎたり足りなかったりさせてるわ。相当、振り回してるからなあ。

1+1=2じゃなくて、曖昧なところ、グレーなところに真意があるんじゃないかという。俺はそう信じてるんです

②Amenity


──はい。じゃあ次のお題は、リリースの時系列順に“Amenity”です。ミニアルバム『Amenity Wear』(2018)収録曲で、楽曲投票は7位。当時を振り返ると、まあ大変な時期でしたよね。リズムセクションふたりが抜けて、よく立ち止まらなかったなと思いました。倒れないために走ってた感じ。

ああ、まさにそうでした。電話でバンドを辞める/辞めないの話をしながら、“Amenity”の楽曲制作をしていた記憶がありますね。もっとメンバーの話に集中するべきだったんですけど、こっちも大事だったんですよねきっと。倒れないために。だから、そのときの気持ちが如実に歌詞に出ています。なんか、歌詞にしろ曲にしろ、あまり直視したくないんですよね。

──ははは! そのときのしんどい気持ちが染みついてるんだ。

ええ。だから、《あなたの心の真ん中/盗みにきたぜ》なんていう歌詞は、胸を張って言っているように聴こえるかもしれないですけど、自分を奮い立たせるために虚勢を張っているようなところがあるんです。なぜこの曲が、楽曲投票でトップ10に入っているのか、不思議ですね。あまり強弱のないサウンドですけど、がむしゃら感みたいなものが伝わるのかな。歯の浮くようなメッセージだなって思うんですけど、あえてそういうことを言うんだよってことを、表現している気がするんですよね。

──でもそこには、振り幅があるじゃない? ナンセンスなことを言ってみたり、シュールなことを言ってみたりする中で、こういうかっこいいメッセージもあるっていう。全部が全部かっこつけてたら、ウザいもんね。その辺りのバランスの取り方はうまいと思う。

投票の上位に入った曲、“YOLO”とかもそうですけど、やっぱりこういったメッセージが好きなのかな、って思うんですよね。

──ポジティブなメッセージでね。まあ、そりゃそうだろうなと思うよ。

そうなんですよね。そこはしょっちゅう反省するんですけど(笑)。《伝えたいこと/わざと逆さまにして/零しちゃうような/心、可愛くない人でいてね》っていう、リスナーとの共犯関係を築き上げるようなことを相変わらずここでもやっているので、よかったなって思います。

──うん。菅原さんは、自分の面倒くささを承知のうえでそれを書いてるし、相手にもそれを求めてるんだよね。

あ、そうなんですよ。1+1=2じゃなくて、曖昧なところ、グレーなところに真意があるんじゃないかという。俺はそう信じてるんです。なんでも白黒つけやがってということを、いろんなところで思いますね。グレーなところの侘び寂びがいい。時間もかかるし、面倒くさいんですけど。

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次のページめ組はなんでもできてしまうバンドなので、贅沢にもそこに退屈さを感じたりしていたんです
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