ソロ再始動後、33本に及ぶ全国ツアーにシングル3枚リリース、毎年主催してきた「HALLOWEEN PARTY」も大成功を収め、2018年を濃厚な活動で駆け抜けてきたHYDE。ソロアーティストとしてその圧倒的な存在感をあらためて印象付けるとともに、フェスやイベントへの出演、日本のみならず世界中で話題を集めたYOSHIKI feat. HYDEとしての『Red Swan』 リリースなど、従来のイメージを飛び越える自由さも見せている。そんななか、2019年1発目のリリースとなるのがこのニューシングル『ZIPANG』。タイトルどおり日本の美しい情景を思い起こさせる日本語詞のバラードであり、今度は逆にYOSHIKIをピアニストとして招いたコラボレーションが実現。アグレッシブに突き進んできたソロワークのなかで、異彩を放つ壮大な楽曲となった今作に迫りながら、HYDE自身の「歌うこと」に対する想いの変化についても語ってもらった。
インタビュー=後藤寛子
日本の美しい旋律や言葉を伝えたほうがみんなに喜ばれるんじゃないかなと思って
――昨年はソロ活動が再開して、リリースもあり、全国ツアーにフェス出演、さらに「feat.HYDE」でのリリースとNHK紅白歌合戦への出演もありと、トピックが盛りだくさんでしたけど、そんな2018年を振り返ってみて、今どういう手応えを感じてますか?
「思ったよりもいろんな活動をエンジョイできてますね。ソロという利点を活かして、さらに広がった感じです。自分ひとりの判断で全部いけるし……L’Arc~en~Cielの曲をフェスでやったりもしていて、そういうことはこれまであんまりなかったかなと思うんで。そういう意味でも自由ですね」
――たしかに、柔軟に活動されているなあという印象があります。今回の『ZIPANG』もですが、これまでもシングルになった曲はすべてリリース前にライブで先行してやっていたりもして、そういうところは新しい試みだったんじゃないかなと。
「うん、そうそう。なんかアマチュアバンドみたいな感じでしたね」
――お客さんのリアクションを確認しながら、作品に反映させたりすることもあったんでしょうか。
「そういうのもありますね。シングルにするのはどの曲がいいかなって聞いたりとかもできたし」
――そういえば『FAKE DIVINE』でお話を伺った時、アンケートのランキング上位から選んだって仰ってましたね。
「ふふふ、そうそうそう。ちなみに今回の“ZIPANG”が1位でした」
――そうなんですか! 夏頃からライブのセットリストに入ってましたよね。
「そうなんですよ」
――すでに人気曲だったんですね。これだけがっつりバラードでっていうのは、ソロでは珍しい気がします。
「海外でワンマンをやる時でも、やっぱり中盤にバラードをやるとか、聴かせどころは1回作りたいと思っていて。谷を作りたいんですね。そういう時に、どうせだったら、日本の美しい旋律だったり、言葉だったりを伝えたほうがみんなに喜ばれるんじゃないかなと思って作りました」
――海外でもこの日本語詞で歌おうと?
「いや、もともとは英語詞で作ったので。逆にライブでは英語でずっと歌っていたから、日本と海外で分けて、日本語版を作ろうかということになったんです。で、日本語はちょっと和歌っぽいというか、古い言葉を使うのがいいなあと思ってね。逆にもうギリギリになって日本語に変えた感じ。なので、ワールドワイドでリリースする時は英語にしようかなと思ってます」
――日本のツアーでも英語版でずっとやっていたんですね。
「そう、ツアーでやっていた時は英語版でした。日本語版は最近、12月くらいからやり始めた感じですね」
――じゃあオーディエンスも日本語詞に驚いたというか、新鮮なリアクションがあったんじゃないですか?
「そうそう。日本人はやっぱり意味がわかるほうが好きかもね」
――しかも「和」のイメージの詞って、今までHYDEさんの詞ではあんまりなかったですよね。
「そうですね。あんまりなかった。僕、昔の言葉とかあんまりそういうの詳しくないんで、長けた人に相談しながら作りました。ちょっと自分が思ってる意味と違ったりするから難しくて」
普通の世界の大切さっていう意味でも、感じるものはありましたね
――日本語版を作って、実際に歌ってみた感触はいかがですか? 英語版と比べると。
「英語はもともと、結構前にレコーディングしてたんですよ。それがすごくスムーズでいい感じだったし、ツアーでも英語で歌ってたから、逆に日本語のほうが難しかったですね。日本語はどうしても言葉がカクカクしてたりして……まあそれが日本語のいいところなんですけどね、もちろん。でも、これまでの英語の雰囲気と変わるから、どうしようかなって感じでした。だから開き直ってね、これまでの歌はもう気にしないで、日本語の曲として歌いました」
――英語の曲の時点で、アンケート1位という反応が返ってきてたんですよね。その結果については?
「まあ、みんなバラードが好きなのかなあ?とか思ってました」
――それが満を持してシングルになるのは、ファンのみなさんも嬉しいと思います。そして、さらにトピックとして、YOSHIKIさんとのコラボが再び実現したわけですけど、経緯としては『Red Swan』からの流れですか?
「『Red Swan』の話が先にあって、それが進んでるなかでこの曲ができたんです。ピアノがメインだし、これ、やってもらうには今がチャンスじゃないかな?と思って。ちょっと機嫌のいい時にYOSHIKIさんに言ってみようかなって。めちゃくちゃ忙しい人だから、タイミングを見て言わないと簡単に断られそうだし(笑)。機嫌のいい時に話したら、快くOKしてくれました」
――その時はまだ英語版ですよね。
「そうですね。夏頃だったかな。やっぱり、常々いろんな人とコラボする機会を窺ってるんですけど、YOSHIKIさんにやってもらったらいい仕上がりになるんだろうなあと思ってお願いしてみました」
――全編にわたってほんとに素晴らしいピアノですけど、フレーズとかアレンジはYOSHIKIさんにお任せで?
「いや、根本的にはもともとのデモがあったんで、それがベースにありつつって感じで。こう……さらに値段を上げてくれた感じですかね」
――ははは。
「高い曲にしてくれた(笑)。返ってきたのを聴いた瞬間にもう、『うわあ、かっけー!』ってなりましたよ」
――YOSHIKIさんのピアノのすごさって、あらためてどういうところでしょうか。
「原曲をちゃんと理解してくれてるんですよね。個性で塗り潰すというか、全然思ってるのと違う方向で来たらどうしようって思ってたところもあったんですよ(笑)。でもちゃんと楽曲を理解したうえで、さらに高みを目指してくれたなあと思って。さすがプロだなあと思いましたね」
――たしかに、ピアノが歌にもすごく寄り添って響いてきます。楽曲に関してYOSHIKIさんからのコメントって何かありました?
「『いや〜、この曲いいよ』って……アメリカのプロデューサー、エンジニアも絶賛してたよ、とか言ってくれましたね。まあ、褒め上手な方なんでね(笑)」
――カップリングの“ORDINARY WORLD”はデュラン・デュランのカバーで。こちらもライブのラストに演奏していたり、すでにライブのハイライトにもなっている曲ですよね。この曲をカバーしようと思った理由は?
「もともと、アメリカにいる時とか、カバーは常々いろいろやりましょうっていう雰囲気があるので。次はどういうのにしようかって話しているなかで、バラードを激しくしたらいいんじゃない?ってことになったんです。で、バラードでなんかあったっけなあって思いついたのがこの曲でした。その頃は別に、デュラン・デュランはもう聴いてなかったんですけど、その曲だけ急に抜きん出て世の中に響いてたんで。デュラン・デュラン、まだ健在やねんなあってその時は思いましたけど(笑)」
――でも、昔からルーツとしてあげられていたアーティストですよね。
「そうですね。その時代はずっと通ってきたんで。デュラン・デュランを真似して白いジャケットとか着てましたから(笑)」
――それだけに、歌っていてしっくりきてる感じはあります?
「んー、どうかなあ。でも、いいアレンジだと思うんで。また新しい感じでみんなに響くんじゃないかなと思います。ぜひ、アメリカとかイギリスとか、英語圏の人に聴いてほしいね」
――今聴いてもメロディがいいですし、歌詞も普遍的に響く内容ですよね。
「ライブでも結構やってたんですけど、去年は自然災害が多かったんで、やっぱり普通の世界の大切さというか……そういう意味でも、感じるものはありましたね。歌っていると」
――日本のリスナーにも、歌詞の意味をわかって聴いてほしい曲だと思います。
「そうですね。そのほうがぐっとくるかもね」