──まずは結成の経緯から聞かせてください。あい(G・Vo) 私とまゆ(Dr)、カノ(B・Cho)となずな(G)がそれぞれ同じ高校に通っていたんですけど、進学する専門学校が開催してる高校生限定の「楽器を教えてあげるよ」サークルにたまたまみんなが行っていて。で、その日に先生が「1回バンドやってみたら?」って言ってくれて、初対面で組みました。──第一印象は覚えてます?まゆ めっちゃ覚えてますね。あいとは高校が一緒やったんで、ほんま慣れたもんなんですけど(笑)。カノとなずなとは初対面で、元気っ子が押し寄せてきた感じ(笑)。カノが「あいちゃん、声めっちゃ好きで! めっちゃ嬉しい!」って言ってて、すごく明るい子だなあって。カノ (笑)今でこそ、みんなの個性がいい感じに絡まり合ってるんですけど、当時はキャラクターがパンッとふた組に分かれてはいましたね。「何聴いてるん?」とか言うのもこっちやったしな。まゆ こちらは「あぁ……」みたいに、ちょっと引き気味で(笑)。──みなさんの音楽的なルーツはなんですか?まゆ 私は元々BIGBANGが好きで、BIGBANGのライブを観に行って、音楽やりたいなと思って、軽音楽部に入ったんですよね。で、ハク。を始めてからは、羊文学とかきのこ帝国をよく聴いてました。サークルで出される課題曲に、そういうバンドの曲が多くて「意外とこういうのも好きかもなあ」って思って。きのこ帝国の曲を聴いて、いいなと思ったドラムのフレーズを取り入れたり──“直感way”と“ふたり基地”とかはそうだったと思います。カノ 私はずっとORANGE RANGEを聴いてました。姉が聴いてたので、物心がついた頃から車の中で流れてて。LOSTAGEとかAge Factoryもめっちゃ好きだし、ハク。を始めてしっかり音楽を聴くようになってからは、台湾とかアジアの音楽も聴くようになりました。私、歌詞の意味が気になるタイプなので、洋楽は「よし!」ってならないと聴けないんですよ。でも、台湾の音楽は歌詞が気になるというより音のほうが気になって。たぶんどこかで自分が「こういうことをやりたい」と思ってるから聴いてるんだと思います。──台湾の音楽において、ベースに何か共通する特徴はあったりしますか?カノ 重心が下にあって、(ルート弾きで)ブンッブンッブンッブンッみたいな感じかと思いきや、めっちゃ動くみたいな。アジアなりの振り幅の大きさを持つベースラインが多い感じがします。私は重めなほうが好きなので、レコーディングの時も「こういう音の感じがいい」とか、自分から言うことが多いですね。なずな 私は高校生の時、親が好きだったMrs. GREEN APPLEを好きになって、ライブに行ってて。中学校の時から軽音楽部で、高校ではカノと一緒にバンドを組んでたんですけど、SCANDALとかSHISHAMOとか、ガールズバンドの曲をカバーしてました。今、自分でギターフレーズを作る時は、印象に残る、鼻歌が歌えるフレーズにすることを意識してますね。──あいさんは?あい 歌詞をしっかり読むようになった時に、サカナクションと中村佳穂さん、青葉市子さんにハマりましたね。みんなが使うような言葉だけど、並べ方によってその人の言葉になるみたいな表現の仕方がすごく好きなんです。この3組の曲には「美しさ」が光ってると思うんですけど、ハク。の曲は美しさは控えめで、自分の素直さというかありのまま感が出てるとは思っていて。ぱっと曲を聴いた時に、美しさよりもポップさのほうが少し上回ってるというか──でも、コーラスや歌とリードギターの絡み合いに美しさが少し残ってるのは、その3組を聴いていたからかなとも思います。ハク。の曲は自分のありのまま感が出てる。でも、コーラスや歌とリードギターの絡み合いに美しさが少し残ってるのは、サカナクションや中村佳穂さん、青葉市子さんを聴いていたからかなって(あい)
──あいさんが最初に作られた曲は“ワタシ”とのことですが、心と頭のアンバランスな関係のもどかしさを自分の内側に向かって問いかけながら、最後には《やっぱりそうでしょ/アナタも止まっちゃいられないんでしょ》と聴き手に向けて「あなたはどう?」と問いかけるようなドキッとする視点の変化があって。この時点であいさんらしい作詞が確立されていると思いました。あい でも、最後に投げかけるところの歌詞とかメロディは、今もう1回作ろうってなったら、もっと濃密な曲にできると思っていて──高校生の素直な悩みみたいなのは書かれてるんですけど、自分的には当時は完成した感じではなかったんです。すごく悩みながら書いたから、これでいいのかなって思いながらメンバーに送った記憶があります。“ワタシ”を聴いて、「ほかの人にはベースを弾かせたくない」って思った。歌詞がめっちゃ魅力的で、この人はどっからこの視点が出てくるんやろうって(カノ)
カノ 私は“ワタシ”を聴いて、「あ、この人すごい。ずっとついてこう」「ほかの人にはベースを弾かせたくない」って思った。歌詞がめっちゃ魅力的で、この人はどっからこの視点が出てくるんやろうって。バンドやってて、大丈夫かなあって思う時ももちろんあるけど、この曲を初めて聴いた時の感情を思い出せばやっていけるなあみたいなのを全部詰め込んだ曲を持ってきてくれたと思います。初めてのワンマンでも、“ワタシ”はやってるよな?なずな うん。カノ その時、“ワタシ”を演奏しながら、アップテンポな曲なのに涙出てきそうになって。さっきおっしゃってた最後の投げかけるところで、こっちもその思いを振り返られるし、見つめられるから。──あいさん自身としては、ある程度自信を持って歌詞を書けるようになったのはいつでしょう?あい いつからというより、曲によってですね。“本物”は、当時から書けたなって感じがあったし、“アップルパイ”はちょっと頑張ったなって思うし。──書ける/書けていないの違いは、自分が思ってることをちゃんと歌詞に落とし込めたと思えるかどうかですか?あい 作った時に感じる「書けた」は、自分の頭の中にあることとか──感情が動いて「ここだ」っていう時に出した言葉によって、「書けた」と思えるんです。たとえば“頭の中の宇宙”は、めっちゃ考えて歌詞を出したんですけど、「何言ってるかわからんやろうな、でもいいや」って思ってリリースして。その時点では自分としてはまだ完成してなくて、ライブで何度もやっていくうちに納得してくる、馴染んでくる。「ああ、確かにこういうことを歌いたかったんやわ」っていうことに気づいて、「書けた」ってなる瞬間があるんです。歌詞を書いた瞬間の「できた」と、ライブを経た「できた」のふたつがありますね。
──サウンド面でいうと、初期はストレートなギターサウンドが中心でしたけど、河野圭さんがプロデューサーとして加わってからポストロック的なテクニカルなアプローチの楽曲が増えていったような印象があります。あい 河野さんの制作スタジオに行って、ふたりでパソコンの前に座って曲作りをすることがあるんですけど、初めの頃「あいちゃん、こういう引き出しもあるんだけど、1回聴いてみる?」って言ってくれることがあって。で、それを聴いてみると、自分が言葉で伝えられなかったことを音にしてくれて、「ああ、私はこれが言いたかったんだ」みたいなことにもたくさん気づくようになりました。その気づいたことを頑張ってみんなに伝えていくタームがありましたね。──そうやって増やした引き出しにあるアレンジに、メンバーのみなさんがちゃんと応えられるスキルがあるのもすごいなと思います。まゆ いや、日々練習するしかないです(笑)。あいが言ってくれたアレンジがやっぱりかっこいいから、これができるようになったらめっちゃいいなと思って練習して、レコーディングまでになんとかギリいけるかな……みたいな(笑)。ただひたすら個人練に入ってました。なずな 私が頑張らないと弾けないレベルのフレーズを与えてもらえるので毎回食らいついてます。ちょっとずつその壁を大きくしてくれてるので、階段を上るみたいにレベルアップできるように頑張ってますね。カノ 私は、河野さんとやり始めた頃は弾けないことが多くて、ほんとに泣きながらやってて。元々ルート弾きがいいと思ってたから「こんなに動かへん!」と思って、別の道にそれて諦めようとしてたけど、最近は1曲1曲完成していくごとに「これが曲のエッセンスになってるなら、絶対にそうしたほうがかっこいい」と思うようになりました。逆に、あいちゃんや河野さんから出てこないフレーズを「こういう感じもありじゃないですか?」って自分から言った時、曲のイメージに合っていれば否定されることもなくて。できないことに対して「できない」じゃなくて、「これがかっこいいんだ」って納得できるようになってきてから、「これ取りこぼしたらダサいな」っていう小っちゃいプライドが生まれて、練習も頑張れるようになったなと思います……たぶん(笑)。