ポール・トーマス・アンダーソンの新作『ワン・バトル・アフター・アナザー』がアメリカで先に公開されたが、すでに絶賛の嵐で、オスカー候補作となるのは間違いない。個人的にも、ディカプリオはじめ、全キャストが光っているので、全員が俳優賞にノミネートされる可能性すらあると思うくらいだ。
また、アンダーソン作では、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』以降、全作でサントラを手がける、レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドが、今作でもサントラを手がけているので、音楽ファンにとっても楽しみなところ。その作品が今日から日本でも公開となる。必見だ。NYでは公開に先駆け、リンカーンセンターで監督やキャストも集まった先行特別上映が行われた。
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⚫︎物語:
物語は、短く説明するのは難しいけど、革命家だった過去から逃れなれない男ボブ(ディカプリオ)と、その娘ウィラ(新星チェイス・インフィニティ)の逃亡劇を軸に、現代アメリカの分断、暴力、そして希望を描くアクション・スリラー。さらに、どんな時でもその根底にある「家族の絆」を祝福する感動作でもある。ディカプリオは、『ビッグ・リボウスキ』の“ザ・デュード”をインスピレーションに演じたというこの役で、長いキャリアの中でも、新たな境地を開く演技を見せている。ウィラの母親ペルフィディア・ビバリーヒルズを演じるテヤナ・テイラー、アメリカ陸軍将校スティーブン・J・ロックジョーを演じるショーン・ペンも、武術の“センセイ”セルジオ・セント・カルロスを演じるベニチオ・デル・トロらも、強烈な個性を放つ名演を披露。『リコリス・ピザ』で主演した、ハイムのアラナ・ハイムも出演している。ちなみに、PTAの子供たちの顔をしっかりと見たことはないが、マヤ・ルドルフと結婚していることを考えると、物語のヒーローであるウィラと彼の子供たちが重なって見える部分があるのではと思わずにいられなかった。
音楽を担当するジョニー・グリーンウッドは、暴力とロマンスの二重性を、熱と衝動の音楽で体現している。これまでサントラ以上に幅広いサウンドを用い、木琴から壮大でオペラ的なうねりのシンセサイザーと、ジャズ的な躍動感を新たな軸として取り入れている。特にオープニングシーンでの壮大なオーケストラサウンドと、突然響くソロピアノが緊迫感をさらに煽る。
⚫︎ディカプリオのコメント:
NYのリンカーンセンターで行われたサプライズの上映で、ディカプリオは以下のように語っていた。
『ブギーナイツ』の主役を断ってしまったことをキャリアでも最大の後悔だと語っており、これまで長年PTAと仕事できる日を待ち望んでいたのだ。
「世代を代表する監督がこうして花開き、彼のフィルモグラフィーが目の前で展開していくのを見られるのは本当に特別なことなんだ。彼が創り出す世界はとても独自で唯一無二で、観客として——僕自身、ただのファンとして——その世界に包み込まれるんだ。そしてここにいるみんなも同じ気持ちだと思う。彼のフィルモグラフィーの一部になれたことを誇りに思うよ。
でもそれ以上に、ポールが言っていたように、この映画は今の社会を映し出す“避雷針”のような瞬間を切り取っている作品なんだ。分断や極端さといった、いま僕たちが直面している状況を描き出している」
⚫︎ジョニー・グリーンウッドのサントラ:
ジョニー・グリーンウッドのサントラはすでに発売されている。アルバムには18曲の新作が収録され、ロンドン・コンテンポラリー・オーケストラがヒュー・ブラントの指揮で演奏。ジョニーはピアノ、ギター、ベース、パーカッション、オンド・マルトノを担当。
⚫︎ポール・トーマス・アンダーソンが語るジョニー・グリーンウッド:
ジョニーによるサントラについては、ポール・トーマス・アンダーソンはこう語っている。
「ジョニーの音楽はいつだってユニークで特別だ。僕らは、この映画がどこへ向かおうとしているのか、その緊張感がどう形づくられるのか、何を持続させる必要があるのかを、早い段階で垣間見ることができた。そういう形で仕事ができるのは本当に大きな贅沢だし、それはジョニーが僕らより何歩も先を行っているからなんだ。
彼は最初から関わっていて、この脚本もずっと前から持っていたんだ。彼は音楽を書いていたけれど、大事なのはそれを実際に聴けたことだった。
僕らは、デイリーズ(その日撮影した映像)を見ながら、彼が書いた音楽を同時に流すことができた。そうすると、みんながそのトーンを実感し、理解できるようになる。全員が同じ音楽を身体に刻み込んで、同じ旅路を歩んでいる感覚になるんだ。それがまた僕らを突き動かしてくれるし、ワクワクさせてくれる。丘を車が走っているだけのデイリーズを1時間見るなんて退屈なことだけど、そこに衝動的に突き動かされるようなものがあれば別だ。だから彼らはそのプレビューを早い段階で得られたんだ。
それから、ある朝仕事に向かう途中でスティーリー・ダンの“Dirty Work”を聴いて、現場に着いてすぐレオにかけてやったんだ。『これだ、直前で君のテーマ曲を見つけたよ』ってね」
またDazedのインタビューの中で、2006年、レディオヘッドがツアーで演奏した“Spooks”というインストゥルメンタルの曲が、最終的にPTAの『インヒアレント・ヴァイス』のサウンドトラックに収録されたことがあったが、もしPTAとトム・ヨーク、レディオヘッドがグリーンウッドの同じデモを気に入ったらどうなるのか?と聞かれている。
「ジョニーが書いた曲の中には、トムとレディオヘッドの候補になることもある。でも、みんなが納得していて、ふさわしい場所に使えばいいんだ。ジョニー・グリーンウッド・マクドナルドに並んで、先にハンバーガーをもらえるのを待っているようなものなんだ」
https://www.dazeddigital.com/film-tv/article/68720/1/paul-thomas-anderson-microsoft-word-prince-charles-one-battle-after-another
⚫︎その他使われている曲:
ちなみに、スティーリー・ダンの“Dirty Work”は実際に映画の中で使われている。
その他、以下が使われている曲。
トム・ペティの“American Girl”もそのシーンにピッタリだ。
Jon Brion – ‘Bunker Bumper’
The Shirelles – ‘Soldier Boy’
https://open.spotify.com/track/2KmR7qlhFtZe3B9gbUs6I8?si=2bc148c7b28842e8
Steely Dan – ‘Dirty Work’
The Ramsey Lewis Trio – ‘What Are You Doing New Year’s Eve’
Sheck Wes – ‘Mo Bamba’
Travis Scott – ‘Goosebumps’ (ft. Kendrick Lamar)
Walk The Moon – ‘Shut Up And Dance’
El Fantasma – ‘Vengo A Aclarar’ (ft. Banda Los Populares Del Llano)
Survivor – ‘Eye Of The Tiger’
Ella Fitzgerald – ’Hark! The Herald Angels Sing’
Jackson 5 – ‘Ready Or Not Here I Come (Can’t Hide From Love)’
Los Panchos – ‘Perfidia’
Jon Brion – ‘Global Bully’
Tom Petty And The Heartbreakers – ’American Girl’
Gil Scott-Heron – ’The Revolution Will Not Be Televised’Ella Fitzgerald – ’God Rest Ye Merry Gentlemen’
私はNY一大きいIMAXシアターの70MM上映で観た。皆さんも、ぜひ劇場で!