これこそボス流アメリカン・ロック

ブルース・スプリングスティーン『ハイ・ホープス』
ブルース・スプリングスティーン ハイ・ホープス
誰もが突然のリリースにびっくり。過去10年に録り残していた曲やライヴで演奏された曲を新録した、と言われると、どこか残り物整理と受け取られる恐れもあるが、そんなことはまったくない。アルバムのテーマから収録しきれなかった曲や、ライヴでは演奏されていたもののスタジオでより発展させようと温めてきた特別な曲やカヴァー曲など、長年の懸案を渾身の思いでまとめ上げた姿がここにはある。その原動力となったのがレイジのトム・モレロだったとブルースは言う。「トムと彼のギターは俺の詩神になって、このプロジェクトの残りをもう一段高い水準にまで押し上げてくれた」とまでライナーで書いているが、確かにその存在感は輝いている。アルバムの核の一つとなっているのが3曲目の“アメリカン・スキン(41ショッツ)”で、これはギニア人の移民男性が警察官4人に41発もの銃弾を撃ち込まれ死亡した99年の事件をテーマにしたもので00年のツアーから歌われ、警官がブルースのライヴ警備をボイコットしたりと大きな話題となった。ついにその曲をこうして公式化したわけだが、怒りの熱量は抑制された歌の中に今も燃えさかり感動的だ。他にもトム・モレロとデュエットし彼の壮絶なギター・ソロが繰り広げられる“ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード”やスーサイドのカヴァー“ドリーム・ベイビー・ドリーム”など、どの曲も充実のひと言。初回ボーナス盤は13年ロンドンでの『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』の全曲再現ライヴDVD付き。(大鷹俊一)
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