U2が、今年後半にリリース予定の9年ぶりのニューアルバムから、ファーストシングル“Street of Dreams”をリリースした。
MVはこちら。
この映像は日本からは見られないかもしれないが、アメリカのW杯を放送しているFOXでは、準決勝のCMに早くも“Street of Dreams”を起用している。
プレスリリースによると、MVは今年5月にメキシコシティで撮影された。サント・ドミンゴ広場近くでの撮影中、雷雨の影響で発電機が突然停止するハプニングに見舞われたが、地元の家族がメンバー4人を自宅アパートに迎え入れてくれたため、その家のバルコニーで撮影を続行したという。
このシングルをプロデュースしたのは、『How to Dismantle an Atomic Bomb』、『Songs of Experience』などを手がけてきた、バンドの長年のコラボレーター、ジャックナイフ・リー。
リリックビデオも公開されている。
「神よ、僕の叫びを聞いてくれ」と始まり、タイトルをスペイン語にした「La calle, calle de los sueños」=「通り、夢の通り」というフレーズも登場する。
U2が長年歌ってきた「ストリート」をモチーフを受け継ぎながら、祈りのような歌詞と、高揚感のあるメロディ、そして視界が一気に開けていくようなスケール感が印象的な、いかにもU2らしい曲だ。
この曲をフィーチャーし、デヴィッド・ベッカムが出演する短編映画も制作された。すでに公開されているが、W杯決勝戦でも放送される予定だという。
短編の内容は見ての通りだが、住む場所を失った少女が、サッカー選手になる夢を追い続ける物語だ。ベッカムは、彼女にしか見えない「内なる声」または守護神のような存在として現れ、迷いや不安を抱く彼女を導いていく。
バンドは5月にメキシコシティを訪れた際、ストリート・チャイルド・ユナイテッドのサポーターとして「2026 ストリート・チャイルド・ワールドカップ」に参加。決勝戦にも立ち会い、ラリー・マレン・ジュニアがコイントスを行った。
これは、FIFAW杯とは別の大会で、路上生活の経験した、あるいは路上と深いつながりを持つ若者たちに、サッカーを通じて声を上げる場を与える国際的なイベントだ。
サッカーだけでなく、アートや教育プログラム、会議や発表の場もあり、若者たちが法的身分証明、教育、暴動からの保護、ジェンダー平等などを訴える。今回の短編は、そうした大会の理念とも重なる内容にもなっている。
⚫︎今年後半にリリース予定の新作について
今年後半にリリース予定の新作について、ボノは4月、EP『Easter Lily』の発表に際して、バンドのInstagramで次のように近況を報告していた。
「僕らは今スタジオにいて、騒々しくて、雑然としていて、”あり得ないほどなほどカラフルなゼロックス・コビー”のような、ライブで演奏するためのアルバムを制作している。ライブこそ、U2が生きる場所だから。
僕たちは今も、鮮烈なロックンロールを、小さなスクリーンに映し出されるあらゆる酷い出来事に対する”抵抗の行為”だと考えている。
世界中で起きている混乱を目撃している多くの人たちにとって、今は間違いなく”荒野の時代”だ。だからこそ僕たちのバンドは、この時代に応える歌の源泉を見つけるため、自分たちの人生の奥深くへと潜っている」
また、バンドは今年、結成50周年を迎える。
1976年に、ラリー・マレン・ジュニアが、ダブリンのマウント・デンプル・コンプリヘンシブ・スクールの掲示板に「ドラマーがバンド結成のためのミュージシャンを求む」と書いたメモを貼った。
それを見て集まったメンバーが、9月25日にラリーの自宅のキッチンで初めて練習したことが、U2の始まりだった。
そのためファンの間では、結成からちょうど50年となる今年9月25日に、ニュー・アルバムが発売、または正式発表されるのでないかとの期待が高まっている。
⚫︎オバマ・プレジデンシャル・センターのオープニング・セレモニーでパフォーマンス
そのほかU2は、6月18日にシカゴで行われたオバマ・プレジデンシャル・センターのグランド・オープニング・セレモニーにも出演。ボノとエッジが、ジャックナイフ・リーとともに“City of Bliding Lights”をパフォーマンスした。
オバマ元大統領も、次のようにコメントしている
「U2の皆さん、参加してくれてありがとう!“City of Bliding Lights”を聴くたびに、選挙活動していた頃の日々がよみがえります。そして、ステージ上でミッシェルに歌を捧げてくれるという、楽しいサプライズもありました」
曲の最後には、ボノがビートルズの“Michelle”を即興で挿入し、《Michelle,ma bella/Micchelle,our belle》と歌って、ミッシェル・オバマに捧げていた。
この映像の2時間17分頃から、パフォーマンス全編が見られる。
https://www.youtube.com/live/A3NlMbE9X48
⚫︎ボノ&ブルース・スプリングスティーン&パティ・スミス&ロバート・デ・ニーロ
ボノは6月13日に、ニューヨークで行われたトライベッカ映画祭にも登場した。
ブルース・スプリングスティーンが『Harry Belafonte Voices for Social Justice Award 』を受賞したイベントで、ボノが聞き手を務めたのだ。
イベントでは、トライベッカ映画祭の共同創設者であるロバート・デ・ニーロが2人を紹介。インタビュー後のパフォーマンスではパティ・スミスも登場するという、あまりに熱い内容となった。
ボノによるボスへのインタビューは、想像できると思うが、非常に前のめりな内容だった。
その一部は、現在発売中のロッキング・オンのNY通信で紹介している。ボノの質問が非常に長かったため、誌面にはごく一部しか掲載できなかったのだが、掲載できなかった部分にも印象的な発言がいくつもあった。その中でいくつか紹介するとーー。
1)分断された人々が戻ってくるための「扉」はどこにあるのか
「(意見の合わない人の中に)どうすれば良い部分を見出すことができるだろう?
人々がもう一度、隣人として、同じ地域に生きる者として戻っていけるように。そして、アメリカがこれほど分断されたままでいないために。現在の社会正義のムーブメントが通っていくべき扉は、どこにあるんだろう?
あなたの観客の中にもいるはずの人たち、つまり、僕たちリベラルに疎外されてきたと感じている人たちに届くための扉は、どこにあるんだろう?
僕が思うに、彼らは帰ってくる道、何らかの戻る道を探しているんじゃないかと思うんだ」
この問いは、U2の新作を考えるうえでも、ひとつになっているのではないかと思う。
2)U2は常にブルース・スプリングスティーンの後を追ってきた
「僕たちは、いつだって君の生徒でもある。
僕らは基本的に、あなたの後をどこまでも追いかけてきたんだ。ブルースがアリーナで演奏できるなら、U2にもアリーナで演奏できるはずだ。彼がスタジアムで演奏しながら、その観客との親密さを作り出す方法を見つけたなら、僕らにも見つけられるはずだ、なあ、エッジってね。
ブルースが何かをやると、僕らはその後を追いかけて、彼が何を成し遂げたのかを見に行っていた。そして、彼が何かを成し遂げるたびに、僕らはそれを盗んだんだ。
それから、あのオペラ的な響きについてもね。まるで、オペラをやる許可をもらったようなものだった。彼はイタリア系だ。だったら、僕の父はオペラ歌手だったんだから、僕にもできる、と思った」
ブルースが最新ツアーでトランプ大統領への批判を前面に打ち出したことも、「抵抗としてのロックンロール」というU2の新作に何らかの影響を与えただろうか?
3)ブルースがボノに謝る
これは実にボノらしい、お茶目な場面だった。
映画祭のイベントということもあり、インタビューでは、ボスが主題歌を手がけた映画『フィラデルフィア』について尋ねる場面もあったが、全体的には政治や社会問題をめぐるシリアスな内容だった。
しかし最後に、ボノがうまく、ブルースに謝らせたのだ(笑)。
ブルースの曲は、政治的なメッセージや人々のリアルな葛藤を描きながらも、同時でポップであり、ラジオでヒットする力を持っている、という話からーー。
ボノ「あなたはポップ・ソングも書く。そこが本当に素晴らしいと思います。あなたは、自分のヒーローであるウディ・ガスリーの精神を受け継ぎながら、それをポップ・ラジオに持ち込んだ。あなたが偉大なパンク・ソングやプロテスト・ソングだけでなく、素晴らしいポップ・ソングもたくさん書いてきたということは、改めて考えると本当に驚くべきことだと思う。僕は一度、Gapのコマーシャルで使いたくて、あなたに曲を提供してもらおうとしたことがある。Gapが、エイズ対策を支援する(RED)の活動に参加していたから。
それで僕は言ったんだ。“ブルース、この‘Girls in Their Summer Clothes’という曲は、史上最高のポップ・ソングのひとつだよ”。
すると彼は、こう言った。“悪くないだろ?”
それで僕が、“(RED)のために、Gapのコマーシャルで使いたいのですが、検討してくれませんか?”と言うと、彼は、“ノー”と言ったんだ(笑)」
ブルース「あれは大きな間違いだったよ。あのとき、イエスと言うべきだった。ああいう曲ってあるだろう。自分にとっては特別なお気に入りになる曲。でも観客の方は、たとえそれが最高の曲のひとつだとしても、ライブで聴けるかどうかなんて別に気にしていない。あれはまさにそういう曲だった。俺自身はあの曲が大好きなんだ。
くそ、今でも思うよ。あの曲をテレビのコマーシャルで流したら、めちゃくちゃハマったはずだって。やるべきだったんだよ、本当に!そうすれば、人々はあの曲をヒット曲みたいに耳にしたはずだからね。だから、悪かった。謝らないといけない」
U2は、2月にEP『Days of Ash』、4月にEP『Easter Lily』をリリースしている。これから発売の新作には収録されない。