うまみだけ、雑味なしってビールのキャッチフレーズがあったが、マンチェスターから登場したザ・1975のデビュー作はまさにそんな感じで、これほど喉ごしすっきりに味わえるアルバムもそうそうない。どの曲もヒットになれるほどスマートでウェルメイドで、アルバム自体も輝かしい80年代のMTVを彷彿とさせる完成度を誇っている。マシューの色気たっぷりのヴォーカルも、メンバー全員のルックスの良さも含めて、本国イギリスで本作が初登場1位をかっさらったのは誰もが納得できるだろう。そういう意味でも〝産業ロック?という忌々しい言葉がどうしても脳裏をよぎってしまうわけだが、それを忌々しく感じさせないのが彼らの凄さ。たとえば〝セックス?のPVで彼らは様々なアーティストのポスターが貼られた部屋で演奏しているのだが、ざっと見るとトーキング・ヘッズ、シガー・ロス、ブラーにマライア・キャリー、ホイットニー・ヒューストンにマイケル・ジャクソンがある。もはやそこにポリシーもクソもないわけだが、躊躇のないその雑多性こそが彼らのアイデンティティであり強み。もはやタブーはなし。恐るべし新世代。(内田亮)