幽霊は現実を生きることにした

坂本慎太郎『幻とのつきあい方』
2011年11月18日発売
ALBUM
坂本慎太郎 幻とのつきあい方
ゆらゆら帝国解散から約1年半、坂本慎太郎の1stアルバムが届いた。一聴した印象は、ゆら帝のラストアルバム『空洞です』と似ている。激しさやドラマ性を排除した、曲線的で懐かしい音。夕暮れの空を漂うようなぬるい快楽の中で、赴くままに自由な空想に浸れる。
 
しかしソロになり、震災後の自室で独りこの10曲を書き上げた坂本には、どうやらゆら帝時代とは違う一面が生まれてきているらしい。個を尊重し、人は突き詰めると空っぽだと歌った男が、相変わらず《幽霊の 気分で》ぼんやりしながらも、《自分の心が 自分でもわからない/他人の心が他人と思えない》と境界に混乱するほど他者に共感し、さらにリアルを感じないはずだった “かすかな希望”を求める。震災を機に幻世界を離れ、現実と対峙した彼の人間らしい変化だ。

「このバンドではもうやれることがないから解散する」、確かに、これは独りだからこそできた作品だ。自室で作られた曲たちがライヴで他者と共有された時、また訪れるであろう新たな変化が楽しみ。ジャケの彼を見て、ステージに立つ姿を妄想せずにはいられない。(藤田華子)
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