ドラムスの存在証明

ドラムス『ポルタメント』
2011年09月14日発売
ALBUM
ドラムス ポルタメント
わずか1年のインターバルで完成したセカンドである。そのわずか1年が、ドラムスに劇的な変化をもたらしたことが窺える新作でもある。前作と本作の間にはアダムの脱退もあった。アダムはジョナサンの幼馴染で親友だった男だ。先行して公開されたイントロ・ムーヴィーは想像以上にダークで不穏な出来映えだった。そう、予感は既にあったのだ。

この新作は、誤解を恐れずに言うならば「セカンド・アルバムらしいセカンド」である。数年後に振り返ってあの時期はつらかったと、でもあのアルバムを作ったからこそ今の僕らがあると述懐されるタイプの、典型的な一枚になると思う。先行シングル“マネー”にはまだ前作の面影があった。しかしますますモリッシーに似てきたジョナサンの歌声にニヤリとしつつも、この曲にすら既に陰影は生じていた。その陰はアルバム全体を通して聴くとさらに濃さを増していく。面白いのは、ドラムスの代名詞でもある過剰なリヴァーブに今回ははっきりと「行き止まり」が感じられること。どの曲も始まりは『ザ・ドラムス』同様に軽快にスタートするのに、どの曲もその収束に向けて重みと悲壮感を増していくこと。

誰よりも先に「サーフィンに行きたい」と呟き、偶然時代を掴んでしまったドラムスのデビュー・アルバムの胆は、現実感がない彼らの現実の活写、その掴みどころのない軽さにあった。しかし本作の彼らは初めて、彼らが今生きている実在の根拠を探ろうとしている。それはもちろん、けっして楽しいばかりの作業ではない。でもこのアルバムは、彼らにとってどうしても必要な未来への懸け橋でもあるのだ。(粉川しの)
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