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スクエアプッシャー『フィード・ミー・ウィアード・シングス』
発売中
ALBUM
スクエアプッシャー フィード・ミー・ウィアード・シングス

スクエアプッシャーのデビュー作が、25周年を記念しリマスター再発される。スクエアプッシャーことトム・ジェンキンソン本人が監修した今回の音源はオリジナルのDATからリマスターされており、音の生々しさがかなり向上している印象だ。使用機材の情報を含む本人による曲解説やセルフ・ライナー・ノーツ、また盟友リチャード・D・ジェイムスによるめっぽう面白い寄稿文なども封入されており、ファン必携のアイテムと言える。

また一方で、昨年の最新作『ビー・アップ・ア・ハロー』が原点回帰感の強い力作であったため、そこから彼の過去のディスコグラフィに興味を持った層にもぜひおすすめしたい。多作家である彼の代表作を選ぶとすれば、まず2004年の『ウルトラヴィジター』、そして2012年の『ユーファビュルム』が挙げられるはず。

ただ、これらのアルバムは、時代の半歩先を行き、未来を切り拓いた作品であったが故、どうしても当時の空気感と強く結びついてしまっている。今の耳で現行のマナーとギャップを感じる部分がないわけではない。

しかし、本作。当時21歳だった彼がチープな機材を用いベッドルームで独り作り上げ、大量のデモ・テープの中からリチャードと共に選曲したこの作品の収録曲には、驚くべきことに未だ風化した要素が見当たらない。多様な音楽ジャンルを横断しながら、自身によるバカテクのベース・プレイを交え、高速かつ快楽性の極めて高い独自のビートを編む手腕は既にここで完成されているし、加えて、この後に彼が試み、収穫してきた数多の実験の種すら、ここには含まれている。

原点にして、まさしく彼の根幹が刻み込まれているのである。それゆえ、ここから順番に作品を追っていくことがこれから始めるスクエアプッシャー体験としてはベスト。楽しい音楽の旅が待っている。(長瀬昇)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
ご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。

スクエアプッシャー フィード・ミー・ウィアード・シングス - 『rockin'on』2021年7月号『rockin'on』2021年7月号

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