ザ・バンドが『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』(68年)、『ザ・バンド』(69年)に続き70年に出したサード・アルバムも50周年記念としてマルチ・フォーマットの本スーパーDXボックスや2CD、LPがロビー・ロバートソンの監修のもと、曰く因縁のあったミックスをボブ・クリアマウンテンがマルチ・トラック・マスターからリミックスしてリリースとなる。 とにかく前2枚が名曲、名演揃いであったり、グループ自身も本作以降、混迷し始めるためにどうしても評価的に低くなりがちだったが、1曲目の“W.S.ウォルコット・メディシン・ショー”に始まり、すべてに息づく彼らならではの重く滋味豊かなグルーヴがニュー・ミックスで前面に出て極上の心地よさだ。
しかもお宝音源やライブとサービス満点で、ディスクIでは〈カルガリー・ホテル・ルーム・レコーディング1970〉と題された未発表8トラックが注目で、これは深夜のホテルで行ったセッションの模様。まさにこの時期のザ・バンドならではの濃密な空間が感じられるが、それをさらに膨らませたのがディスクIIの『ライヴ・アット・ロイヤル・アルバート・ホール』で“ザ・シェイプ・アイム・イン”に始まり“ラグ・ママ・ラグ”まで全20曲の完璧なパフォーマンスが堪能できる。リヴォン・ヘルム、リック・ダンコ、リチャード・マニュエルのボーカル陣も好調ならば、この頃のプレイが光るマルチ・プレイヤー、ガース・ハドソンのさまざまな形でのプレイがライブ世界をみごとに拡大しているのがよくわかるものとなっている(“ザ・ジェネリック・メソッド”絶品)。 このグループが実現していた奇跡のライブ力を実感するのにふさわしいディスクも付いてこの時期の実態がさらに浮かび上がってくる。(大鷹俊一)
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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。
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