今やそのキャラクターや飾らないトークスキルがすっかりお茶の間に浸透したMY FIRST STORYのHiroが、なんと本名・森内寛樹名義でカバーアルバムをリリースした。収録されているのは、女性ボーカルの楽曲10曲。いずれも個性的かつテクニカルなボーカリストたちの楽曲を見事に歌いこなす歌唱力に改めて舌を巻くが、何よりその自然体の歌声に惹き込まれる。いわゆる往年の名曲というよりは、YOASOBIの“夜に駆ける”を筆頭に近年のヒット曲が多く、さらにヨルシカ、カンザキイオリ、supercellといったボカロP出身アーティストの楽曲が多いのも、シンプルにHiroの嗜好なのだろう。宇多田ヒカル“Automatic”や椎名林檎“ギブス”あたりは物心ついた頃から歌っていたのかもしれない。ロックの衝動性とは全く違うベクトルに思えるが、女性ボーカルやポップスというルーツを持っていることが彼の表現力の奥深さの秘訣だと実感する。ソロデビューだとか肩肘張った作品ではなく、ただ生まれながらにして「歌うこと」が「生きること」と同義だった彼の息づかいを堪能できる1枚。(後藤寛子)
鎧を脱いだ、裸の歌声
森内寛樹『Sing;est』
発売中
発売中
ALBUM