『ROCKIN'ON JAPAN』の新世代先取りプロジェクト「JAPAN'S NEXT」。不定期開催されている同名のライブイベントの拡大版として2015年11月に開催され好評を博した「JAPAN’S NEXT TURBO」が、この豊洲PITに帰ってきた。その名も「JAPAN’S NEXT TURBO 2017」! 強力なラインナップの熱演によってとんでもない1日となったこの日の模様を、駆け足でレポートしていこう。
前回の「JAPAN'S NEXT TURBO」ではオープニングアクトとして出演していため組が、この日は本編1組目のアクトとして帰還。イントロのビートと同時に手拍子が発生した“マイ・パルプフィクション”から約1年間での成長の成果を早くも発揮。5人のサウンドはのびのびと飛び、あっという間にオーディエンスを巻き込んでみせた。菅原達也(Vo・G)は「みんなこれから出るバンドさんのために体力を温存してる感じでしょ」なんて謙遜していたけど、この5人が音を鳴らす間は、みんな彼らだけに夢中だったと思う。このバンドが元々持っていた最高の人懐っこさが、ライブの場でも爆発するようになった。ここからが楽しみだ。
続くヤバイTシャツ屋さんは、「ターボ!」コールとともに“Tank-top of the world”でスタート、“無線LANばり便利”でさらにテンポアップ! 超陽性のサウンドがガンガン放たれる様子は爽快で、聴いているこっちも何だかタガがはずれて一緒に騒ぎたくなる。新曲“ヤバみ”も披露しつつ、倖田來未やmisono、島田紳助のモノマネを含むMCでこの日も笑いを起こしていたが、ライブでの正攻法っぷりというか、このシンプルな昂揚感こそヤバTの魅力だろう。虹色の照明の中でラストに演奏された“あつまれ!パーティーピーポー”では、フロアからもたくさん歌声が上がり、ものすごい多幸感に。2組目にしてクライマックス級の景色を生み出したのだった。
世界各地の土着の音楽をジャパニーズライクに調理したバンドサウンドで「俺たちはどのバンドよりもみなさんをハッピーにさせますから」(牧達弥/Vo・G)という宣言を有言実行したgo!go!vanillas。4人で歌う“デッドマンズチェイス”ではフロアからの声も求め、“カウンターアクション”では会場全員で一斉にジャンプ、とオーディエンスからのアクションを積極的に求め、「俺たち(バンド)はここにいるみなさんがいないとジャパンのネクストにいけないと思います」(牧)と高みを目指していく。“おはようカルチャー”で広がったシンガロングはその最たるもので、だからこそ、このエネルギーがもっと大きなものに生まれ変わる予感もした。
「ネクストというのは周囲の期待。いつだって若手筆頭。ライブハウスから来ました、SUPER BEAVERです」(渋谷龍太/Vo)――4組目はSUPER BEAVER。4人絶唱のアカペラで始まる“うるさい”からグッと掴まれる。聴き手の心の中に踏み込みまくっては「自分自身を誤魔化すな」と訴えるその愛すべき性格は今日も健在。渋谷は「何か楽しいことを目指して走ってる人の方がキラキラしてると思います。そういう人と一緒にいたいしね」と話していたが、オーディエンスの手拍子を伴奏に歌い始めた“美しい日”をはじめ、今この瞬間がまさにそういう場所だったことは言うまでもない。熱き想いの渡しあいのような光景は、あまりに美しかった。
後半戦一発目のTHE ORAL CIGARETTESは1曲目から気合い十分。「お前らの力がもっとほしいんです。くださいくださいください!」と山中拓也(Vo・G)が煽るよりも先に、オーディエンスも飛び跳ね、歌い、頭を振り乱した。「1年前ぐらいだったら『俺らいつまでネクストやねん』って思ってたと思います。でも最近気づいたんです。目標を達成したらまた次の目標ができる。ずっとずっと」と山中も語っていたが、そうして全員まとめて抱きしめるような演奏ができるようになったことこそが成長の証だろう。枯れない野心の矛先を自らに向けながら進む決意を託した“5150”で沸き上がった大合唱は、バンドの未来を明るく照らすようだった。
続く04 Limited Sazabysは、4人が揃って最初の一音をぶっ放せばフロアからいくつもの腕が上がり、1曲目“Horizon”の開始と同時に歓声が上がるオープニング。開けたテンションでライブが進む中、「春が一番ドSな季節だと思います。なぜなら出会いと別れを強制させられるから」と語ったのはGEN(Ba・Vo)だ。だからこそ本物の気持ちは閉じ込めて残したい、というふうにそのMCは続いたが、そういう気持ちが根底にあるからフォーリミの鳴らす「希望」は聴き手の悲しみや痛みに寄り添うものになりえるのだろう。「日本代表、04 Limited Sazabysでした!」という去り際の挨拶に遜色ない、懐の深いステージだった。
長い1日もいよいよ終盤、というタイミングで登場したのは、ジャパネク初出演のMY FIRST STORY。SEに合わせてKid’z(Dr)、Nob(Ba)、Teru(G)が息を合わせてキメを打つ中、それぞれの手数が増えていきセッションになだれ込む――という緊張感溢れる冒頭シーンで場内の空気をガラッと変え、Hiro(Vo)登場。「遊ぼうぜ豊洲PITー!」と絶叫とともに“ALONE”に突入だ。それ以降はもう怒涛。重心の低いサウンドが轟く中、Hiroは血管がブチ切れそうな勢いで叫ぶように歌い、マイクを掲げてフロアを煽る。オーディエンスもまたそれに特大の歌声で返し、渦のようなエネルギーが生まれたのだった。
前回の「JAPAN'S NEXT TURBO」でもトリを務めたKEYTALKがこの日もラストを飾る。1曲目から“MONSTER DANCE”という強力な選曲で疲れ知らずのオーディエンスを巻き込みながら早々に限界突破。リリースしたての最新アルバム『PARADISE』収録曲を多めに演奏しつつ、「昔の曲やってもよろしいですか?」(小野武正/ G・Cho)と“S.H.S.S.”も織りまぜるサービスっぷりだ。MCでは寺中友将(Vo・G)お得意の桜井和寿(Mr.Children)モノマネに始まり、オーラル・山中、フォーリミ・GEN、BLUE ENCOUNT・田邊駿一(Vo・G)のモノマネをメンバーが立て続けに披露。そうやって仲間のことをイジっていく感じは普段と変わらずだが、終盤にあった寺中の「いつか日本を引っ張っていくようなバンドになっていきたいと思います!」という宣言、本編ラストの“Oh!En!Ka!”で鳴らされたいつになくまっすぐなメッセージには胸を熱くさせられた。そしてアンコール“トラベリング”を経て、終了。その後はこの日出演した全8組のメンバーがステージ上に集まり、オーディエンスとともに集合写真を撮ったところでフィナーレを迎えたのだった。(蜂須賀ちなみ)
●セットリスト
・め組
1. マイ・パルプフィクション
2. ジュゴンの背中に乗って
3. 余所見
4. 独りな武士
5. 放課後色
6. 悪魔の証明
7. 500マイルメートル
・ヤバイTシャツ屋さん
1. Tank-top of the world
2. 無線LANばり便利
3. メロコアバンドのアルバムの3曲目ぐらいによく収録されている感じの曲
4. ヤバみ
5. ウェイウェイ大学生
6. スプラッピ スプラッパ
7. 喜志駅周辺なんもない
8. ネコ飼いたい
9. あつまれ!パーティーピーポー
・go!go!vanillas
1.マジック
2.ヒンキーディンキーパーティークルー
3.スーパーワーカー
4.エマ
5.デッドマンズチェイス
6.カウンターアクション
7.おはようカルチャー
・SUPER BEAVER
1. うるさい
2. 秘密
3. 美しい日
4. 青い春
5. 人として
・THE ORAL CIGARETTES
1.狂乱 Hey Kids!!
2.CATCH ME
3.カンタンナコト
4.DIP-BAP
5.Mr.ファントム
6.リコリス
7.5150
・04 Limited Sazabys
1. Horizon
2. monolith
3. fiction
4. escape
5. Warp
6. drops
7. Night on
8. Terminal
9. swim
・MY FIRST STORY
1.ALONE
2.Smash Out!!
3."BOOM"
4.虚言NEUROSE
5.モノクロエフェクター
6.Second Limit
7.不可逆リプレイス
・KEYTALK
1.MONSTER DANCE
2.ASTRO
3.Summer Venus
4.S.H.S.S
5.Love me
6.MATSURI BAYASHI
7.Oh!En!Ka!
(encore)
8.トラベリング